タイムレコーダーを出発点に、これまで長年にわたって企業の働き方を支援してきたアマノ。2017年は、国内全体で大きなキーワードになった働き方改革を追い風に、上期の連結決算で12年ぶりの最高益を記録した。企業の意識の変化やビジネスの状況について、津田博之社長に聞いた。
働き方改革は経営戦略の重要課題
──社長に就任して半年が経ちました。振り返ってみていかがですか。
時間が経つのがものすごく早かったですね。そして、今までに経験していないことが多かったという印象です。とくに社員や取引先の前で話す機会が非常に多くなりました。間違いは許されないので、話す内容にはかなり気をつかっていますし、まだ人前で話すのは緊張しますね。ただ、年間のスケジュールの流れがだいたいみえてきたので、少しずつ社長の仕事に慣れてきました。
──アマノの強みを教えてください。
当社は、タイムレコーダーを創業事業として1931年にスタートしました。企業の就業管理を支援してきた長い歴史は、他社にはない強みだと自負しています。最近では、就業管理と給与、人事、セキュリティを包括的に管理し、長時間労働の抑制やワークライフバランスの実現、バックオフィスの管理業務の効率化を支援するITソリューションを提供しています。
──政府が主導する働き方改革は、業績に影響していますか。
働き方改革が追い風になっているのは事実ですね。業績は今のところまずまずの状況で、17年10月に発表した上期(17年4月~9月)の連結決算では、営業利益、経常利益、当期利益はともに12年ぶりに最高となりました。通期でも、しっかり伸ばしていかないといけないと思っています。
──ビジネスの状況には変化がありましたか。
当社のソリューションに対しては、非常に多くの引き合いをいただいています。働き方改革を進めるうえで、各企業が現状把握をしっかりしたいというのが大きなポイントになっています。また、文部科学省が17年9月に「学校における働き方改革に係る緊急提言」を発表し、今までまったくタイムレコーダーを使っていなかった教職員の利用についての話も、各地の教育委員会から多くいただいています。
──企業の考え方に変化は生まれているとお考えですか。
現在、企業にとって働き方改革は経営戦略として取り組むべき重要な課題になっており、各企業の意識は大きく変わっていると実感しています。企業の間では、就業管理をしっかりしないと、採用で人が集まらないという危機感があります。また、残業を認めないとブラック企業だといわれてしまい、社員が途中で辞めてしまうことにもつながります。今はインターネットで企業の評判についての情報が簡単に得られる時代になりました。企業としては、悪い情報が載らないように、早めに手を打ちたいという考えがあります。
われわれも「アマノ流働き方改革」と銘打った取り組みを進めています。まず従業員については、仕事の優先順位を考えてスケジュール管理を徹底し、定時内に仕事を終えることを目指しています。マネージャーに関しては、メンバーの仕事の内容をしっかり把握することなどを通じてマネージメント力の向上を図っています。
中小への導入に注力、AIの活用も検討
──就業管理について、顧客からはどのようなニーズがありますか。
お客様からは、従業員に対して長時間労働に関するアラートを出したり、勤務終了後に一定の休息期間を設け、次の始業時刻を繰り下げる「勤務間インターバル」をアナウンスする機能についての要望が多いですね。管理者や人事担当者側では、事前に設定した月次の勤務時間を超えそうなら、事前に通知を出す機能や、退勤とパソコンのログアウト時間の差が大きい場合のリストアップ機能についての要望をいただいています。また最近では、タイムレコーダーへの打刻だけではなく、給与や人事も管理できる柔軟性の高いシステムが求められるようになっていると実感しています。
──現在はどのようなソリューションに注力していますか。
当社のソリューションのなかでは、16年4月に市場に投入した人事労務管理パッケージ「TimePro-NX」の販売に力を入れています。就業・給与ソリューションへの人事情報の登録や検索の機能を標準搭載していることが特徴です。就業管理と給与管理に人事情報を有効活用できる設計になっており、お客様から高い評価を得ています。今後も、お客様の要望を取り入れながらバージョンアップしていくつもりです。
──今後の市場の動向についてはどのように分析していますか。
働き方改革によって、企業を取り巻く環境は大きく変わっています。今は大企業で当社のソリューションを導入していただくケースが多い状況ですが、中小企業からのお話も増えています。労働関連法の改正が検討されるなど、制度面での動きもありますので、これからは中小企業の市場も大きくなっていくとみています。今後も企業の働き方を支援する面で、当社にとってのビジネスチャンスは大いにあると考えています。
──最新技術の活用についてはどのようにお考えですか。
長期的には、人工知能(AI)の技術を活用したシステムの開発に取り組んでいこうと考えています。タイムレコーダーへの打刻忘れや不整合を自動的に修正するようなイメージですね。人事と給与の分野では、社員が所有する資格や在籍年数などを分析して組織をシミュレーションするような機能を検討しています。最終的に、人間がやっている業務そのものを、AIに置き換えることが可能になっていくかもしれません。
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