NECネッツエスアイ64年の社歴において、初めてプロパーでトップに就いた牛島祐之社長。これまで同社がビジネスを展開してきた公共系や通信キャリアという事業領域において停滞感が漂うなかで、新規事業の舵取りを託された格好だ。同社の強みがネットワーク技術にあることをよく知る牛島社長が、注力分野の一つとして挙げるのが「働き方改革」。地方創生や少子高齢化対策という追い風を得て、独自のソリューションを展開する。
夢をもてる仕事をしよう!
──社長就任から約2か月が経ちますが、まずは簡単に振り返っていただけますか。
直近3年間は、キューアンドエーに骨を埋める覚悟で同社の経営に没頭してきましたので、和田さん(雅夫現会長)にNECネッツエスアイの社長になれと言われたときは、正直、気持ちの転換がうまくできず、戸惑いました。キューアンドエーの事業領域を広げて、ビジネスの一層の拡大に手応えを感じていて、まさにこれからというときでしたからね。とはいえ、この2か月で何とか頭を切り替えて、仲間たちに「夢をもてる仕事をしていこう」と語りかけてきました。
他社にはない、他社ではできない当社ならではの強みを生かして、顧客から高い評価を得られるような仕事です。
──具体的にはどのような仕事のスタイルをイメージすればよいでしょう。
まず、NECネッツエスアイの強みといえば、ネットワークの領域です。宇宙探査衛星から地上デジタル放送設備の構築、海底ケーブルを使った海底地震観測システムに至るまで、文字通り宇宙から海底まで有線・無線を問わず数多くのネットワーク構築の案件を手がけてきました。この領域における当社の強みは相当なものになるでしょう。これからもこの強みを生かしていかなければなりません。
例えば、働き方改革関連の当社独自の商材として「EmpoweredOffice(エンパワードオフィス)」があります。離れたオフィスとネットワークで結び、臨場感ある映像を介してあたかも一つのオフィスかのように演出したり、どこにいても仕事ができるようモバイル環境も含めたITインフラを整備したりすることで、昨今の働き方改革を支援します。これもネットワークに強い当社の強みを随所に生かして、ITを活用したコラボレーションを実現させています。
──「EmpoweredOffice」って、直訳すれば、オフィスの力を引き出す、オフィスの能力を開発するといった意味合いですよね。近年では従来のオフィス中心の働き方を見直す方向にありますから、その名称のままでいいのでしょうか。
ご指摘の通りですが、10年ほど前にEmpoweredOfficeを始めたときは、オフィスの生産性を高めることに着目した商材だったのです。実は、この商材をつくるにあたっては私も中心的な役割を果たした一人で、今でもとても思い入れがあります。オフィスの生産性を高めるには、本社や支社支店が孤立していてはダメで、ネットワークで結んで仮想的に一つの空間にしなきゃならない。この延長線上でネットワークを個々人までつなげれば、在宅で仕事をしたい人、地方で仕事をしたい人のニーズにも応えられる。始まりはオフィスでしたが、この10年で個々人の働き方に密着した商材へと育っているのです。
ネットワーク技術をフル活用
──確かに働き方改革はITを柔軟に活用しなければ実現できませんし、とりわけネットワーク構築の技術が求められますね。
そうですね。EmpoweredOfficeを立ち上げた当初は、自分たちのオフィスをまずは改革しないと顧客に向けての説得力が得られないということで、ずいぶんと働き方を見直しました。各地の拠点を映像でつないで会議ができるようにしたり、事業継続の観点から、どこかの拠点が災害などで機能不全になったときに、他の拠点で代替できるようにしたりと、当社の強みであるネットワーク技術をフル活用して取り組んでいくうちに顧客からの引き合いが徐々に増えてきました。
直近では、少子高齢化で就労人口が減っていることを踏まえ、育児や介護のために在宅で仕事をしたい、あるいは、地元で働きたいというニーズにしっかり応えていくことが求められています。これまでは、都心のオフィスで働けない人をバッサリと切り捨ててきたケースもあったでしょうけれど、これからは通用しなくなる可能性が高い。こうした背景もあって、ネットワークと生産性を高めるコラボレーションの技術を組み合わせたEmpoweredOfficeへの引き合いは非常に強く、ビジネスも力強く伸びています。
──確かに、都心のオフィスで働くことができる人だけが集まっていては、ダイバーシティの潮流にもそぐわないですし、少子高齢化が進むなかで人材を確保できなくなりそうです。
在宅など、オフィスの外で仕事をするには、ネットワークやセキュリティ環境を整備しなければなりませんし、オフィスで勤務するとしても定時で仕事が終わるように定型業務はできる限り自動化していく必要があるでしょうね。折しも、近年ではRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)やAI(人工知能)といったすぐれたITツールが一段と充実していますので、よりスムーズに働き方を変えられるはずです。当社としても自ら経験して得た知見を踏まえて、ユーザー企業の働き方改革を支援していく方針です。
[次のページ]注力3事業で再び成長フェーズへ