セゾン情報システムズの独自商材であるファイル転送ミドルウェア「HULFT」は、国内市場で圧倒的な強さをみせるとともに、海外市場でも高いシェアを獲得している。2016年4月に就任した内田和弘社長は、11年の入社以来、同製品のビジネスを牽引してきた。HULFTに代表される同社の“つなぐ”技術を核に、市場におけるオンリーワンの価値を追求しようとしている。
事業間のシナジーの大きさを再認識
──社長に就任されてから1年が経過しようとしています。
あっという間でしたね。当社のトップになるというのは私にとってまったくの想定外でした。
──しかし、もともとセゾン情報システムズの成長を支えている自社製品「HULFT」の事業部を率いておられたわけですから、不自然ではないようにも思えますが……。
HULFTは、ファイル転送/データ連携ツールで国内シェアナンバーワン(キメラ総研調べ)、グローバル市場でも4位(IDC調べ)なのですが、ちょうど私がHULFT事業部長になった13年4月に、グローバルに大きく舵を切りました。世界一になれる可能性がある唯一の国産ソフトウェアだということを確信していたからです。それから3年が経ち、成長に大きな手応えを感じていましたし、北米での本格展開を目指して、カリフォルニアにHULFT,Inc.を設立するタイミングでもありました。できればもう2年、少なくとも1年はHULFT事業に専念したい、社長になることでHULFTの事業成長を止めてはいけないという思いがあったんです。
──しかし、結果的には社長を引き受けられた。
いまになってみると、このポジションを引き受けてよかったと思っています。当社が大きな強みをもっているのは、HULFTやグループ会社のアプレッソが開発するデータ連携ソフト「DataSpider」などに代表される、システムやデータを“つなぐ”部分だと思っていますが、そのほかのコア事業として、SIを含めた特定業種向けソリューション提案を手がけているカードシステム事業、流通・ITソリューション事業があります。これらの事業と“つなぐ”ビジネスのシナジーが想像以上に大きいということをあらためて認識し、それを実際の新しいビジネス展開につなげることができるようになってきたんです。
──もう少し詳しく教えてください。
流通・ITソリューション事業部では、セルフBIツールの「Tableau」や、出張・経費管理アプリケーションのSaaSである「Concur」を活用したソリューション提案もしています。Tableauの真価を発揮するには、会社のなかのさまざまなサブシステムからデータを集めてこなければなりませんし、Concurにしても、社内の人事システムや会計システムとの連動が必要です。これらの商材と、当社が絶対的な強みをもつ“つなぐ”製品を組み合わせることが、セゾン情報システムズとしてのソリューション提案に大きな価値を付加することになるということなんです。
また、流通・小売りの業態からすると、決済は必ず要りますから、カードシステムとの連携も当然出てきます。ここでも“つなぐ”技術が生きます。社長に就任して以降、私自身が社内のつなぎ役になって、当社が蓄積してきた技術力や業種ノウハウなどを連携させる役割を果たしてきたという自負がありますし、セゾン情報システムズならではの価値を提供する事業部横断型のプロジェクトがどんどん出てきています。
──どんなプロジェクトが出てきているのでしょうか。
ミッションクリティカル領域で実績のあるHULFTのクオリティをそのままに、IoTソリューションにおける信頼性の高いデータ連携を実現する「HULFT IoT」を昨年9月にリリースし、同12月には、これとブロックチェーンを組み合わせ、GMOインターネット、GMOグローバルサインと共同で、「本人のみ受け取り可能な宅配ボックス」の実証実験を行いました。これは、社内の全事業部が連携して取り組んでいます。いままでになかった事例です。
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