ニュータニックス・ジャパンは、サーバーやストレージを統合したハイパーコンバージドインフラでビジネスを急速に伸ばしている。クラウドなみのすぐれた拡張性をもち、コンパクトなアプライアンス(専用機器)にまとめることで維持運用費の大幅な低減を可能にしている。いずれも、従来型のオンプレミス(客先設置)型システムでは困難だった。IT業界歴37年、インテルやデルの要職を歴任してきた町田栄作社長は、「新しい時代のダウンサイジングであり、Re:プラットフォームである」と、ITインフラの変革を巻き起こしていく考えだ。
ITインフラの維持費を大幅に削減
──長くインテルやデルの要職にあった町田さんが、ハイパーコンバージドインフラのニュータニックス・ジャパンの指揮を執って半年近くになります。まずは、ハイパーコンバージドインフラとは何かをわかりやすく教えてください。
かなり荒削りな例えですが、ある種のダウンサイジングです。私はこの業界に入って37年、メインフレーム/オフコンからクライアント/サーバー(クラサバ)ときて、今はクラウドになる過程をみてきました。巨大なメインフレームが小さなパソコンになり、とうとう何ももたなくてもコンピューティングリソースが利用できるクラウド時代になったわけですが、一方、企業で使うサーバーやストレージは、すごく肥大化しているんですよ。これをコンパクトにまとめようというのが、ハイパーコンバージドの基本的な考えです。
──最近のサーバーは、CPUの性能があがって、ずいぶんコンパクトになった印象ですが、違うのですか。
クラサバ以降のオープン環境によってベンダー同士の水平分業が進みましたよね。多くのベンダーが参入できる競争原理によって製品の選択肢が増え、価格はぐっと安くなるメリットを享受してきたわけですが、そうはいうものの、マルチベンダーが行き過ぎるとサーバーはA社製、ストレージはB社製、ネットワーク機器はC社製といった具合で、各社の製品を管理する工数が増えているのです。
他にも、ユーザーがさまざまなシーンでコンピューティングを活用する今、基幹系と情報系、オンプレミス(客先設置)とクラウド、IoT制御、ビッグデータやAIを動かすハイパフォーマンスコンピューティングなど、さまざまな特性をもったサーバー群を管理しなければならない。ある調査では、1995年から2015年までの20年間でサーバー関連の支出は約3倍に増えているのですが、維持運用にかかる費用は実に8倍も増えているのです。
つまり、マルチベンダー化が進み、サイロ化したサーバー群が乱立することで、維持運用費が猛烈な勢いで増えている。これをハイパーコンバージドインフラで解決しようというのがニュータニックスの狙いです。
──IT投資に占める維持運用費の割合が高いのは、日本にありがちだと言われて久しいですが、世界的に見ても維持運用費は増える傾向にあるのですね。
少なくともITインフラ領域では、そうですね。ユーザーだったらオンプレミスやプライベートクラウド、ITベンダーだったらサービス基盤で、前述の理由によって維持運用費は膨らんでいるのです。当社のハイパーコンバージドインフラを使えば、これをぐんと圧縮できます。
クラウド同様の便利さを手元に置く
──具体的にどのような仕組みで維持運用費を圧縮するのですか。
実機をみてもらうとわかりやすいのですが、これまでサーバーラック一杯に詰め込んであったサーバーやストレージなどの機器が、わずか数ラックで済みます。ある事例ではラックスペースを9割削減でき、その分の消費電力も削減。維持にかかる工数と電気代を節約しています。
誤解を恐れずにいえば、クラウドアーキテクチャに特化したアプライアンス(専用機器)で、リソースが足りなくなったら、その都度、アプライアンスを増やしていく。そして、耐用年数が来た機材は、システムを止めることなく抜き取ったり、新しいアプライアンスに交換するなど、非常にリソースの増減に対する自由度が高い。もちろん、ただ、コンパクトになっただけではありませんよ。クラウドのように自由にコンピューティングリソースを拡張(スケールアウト)できるのも大きな特徴なのです。
──つまり、御社はアプライアンスベンダーなのですか?
それはちょっと違いますね。ニュータニックスは100%ソフトウェアの会社です。とはいえ、物理マシンがないといけないケースがありますので、デルやレノボといったサーバーベンダーにOEMしたりしています。私はデルに勤めていたときに2年ほどニュータニックスを扱っていたため、それがニュータニックスの創業者らをよく知るきっかけになりました。
──ニュータニックスの日本法人のトップの仕事を引き受けるきっかけにもなったわけですね。
60歳になるにあたってデルを退職した後、お声がけをいただいたのがきっかけですかね。この仕事を引き受けるにあたり、アメリカの本社に出向いて経営陣らと話し込んだときは、それはもう熱いものを感じました。先述の通りクラサバからクラウドへシフトしてきましたが、実はコンピューティングの終着点はクラウドではなかった。もっと先があることを強く感じさせてくれたのがニュータニックスなんです。
クラウドを否定するわけではありませんよ。むしろクラウドは便利です。若い人たちにとってはあたりまえになっていますが、カード1枚で誰でも簡単に、その場でサーバーリソースが手に入り、それをどんどん拡張できるなんて夢のよう。でも、そうしたすばらしいクラウドの特性を、オンプレミスやプライベートクラウドでも使えたら、もっといいですよね。動かすシステムの特性に応じて、オンプレミスとクラウドをもっと自由に、ハイブリッドに使えるようになればさらによくなります。
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