クラウド型経費精算サービスを提供するコンカーは今年、大手企業が中心だったビジネス展開を中堅・中小市場にまで広げる方針を掲げる。昨年9月には「e-文書法」の規制緩和が行われ、スマートフォンを活用した領収書の電子化が進むとみられる。「しかし、それは紙を電子化するということ。将来はその紙をもなくしたい」と語る三村真宗社長。今、コンカーのビジネスに追い風が吹いている。
SMB市場に向けて本腰を入れる
──三村社長は、コンカー日本法人が立ち上がって間もない頃から指揮をとられています。これまでの約5年間を振り返っていただけますか。
もともと私はSAPにおりましたが、経費精算の分野というのは、SAPにとってはかなり“端”のモジュールなんですね。当時はあまり大きなビジネスにもなっていませんでしたし、プロモーションも注力されていませんでした。
ただ、この仕事をお引き受けするにあたって、海外の導入状況をみたときに、Fortune 500の60%以上の企業がConcurを使っているとわかりました。米国で発生していることは、数年遅れて日本でも起こります。経費精算は、まだ日本でマーケットが成立していないだけで、これから大きな市場になるだろうと思い、お引き受けしました。
この5年で、日本の時価総額トップ100企業のおよそ4社に一社がConcurのユーザーとなっています。予想通り、日本にもマーケットがあり、しかもサービスの競争力もありますので、ビジネスとしては順調に拡大しています。
──御社の実績をみていると、大手企業を中心に導入が進んでいる印象ですが、今年からは新たに中堅・中小企業(SMB)に向けてのビジネス展開にも力を入れていくとうかがっています。
その通りです。海外ではSMBも大きなビジネスになっていまして、米、英、オーストラリアといった英語圏で展開しています。とくに米国ではSMBのほうが事業規模としては大きくなっているほどです。ですから、私どものサービスは本質的には大手に強いというわけではなくて、むしろSMBにも利用しやすいという特徴があります。
ただ、われわれの経営的、戦略的な優先順位の観点から、どうしてもリソースの制約がありましたので、まずは大手にフォーカスしてシェアをとり、その後で段階的にSMBにも展開していこうという戦略で取り組んできました。とくに昨年はSMBへの“準備の年”に充てまして、今年からは本格的にSMB向けビジネスを展開していきます。
経費精算の全自動化へ
──SMBを攻めるための準備として、どういうことをされたのでしょうか。
これには三つの側面があります。一つが製品で、SMB向けに経費精算サービス「Concur Expense」の「スタンダードエディション」という廉価版を出荷しました。大企業向けのものは初期設定料がかかるのですが、スタンダードエディションは、導入費用が無料です。ウィザードに回答していくと、設定が終了するというものになっています。
二つめがマーケティング。従来は各大手企業のCFOや、経理部長さんに対してピンポイントでアプローチするような施策をとっていましたが、今はデジタルマーケティングを活用して、ウェブで最初のリードをつくるようなスタイルを追加しています。エンタープライズ向けにピンポイントもやりつつ、SMB向けに、面でのアプローチを始めました。
三つめは、体制強化。SMB向けの営業として、現在6人体制で取り組んでいます。
あと、四つめをいうならば、SMBに強いパートナーさんの開拓を始めました。まだ具体的な名前は公表できませんが。SMB向けのERPを売っているような企業ですと、そのなかに経費精算のモジュールがないケースが多いので、Concurをバンドルしてご提案いただこうといったようなアイデアを含めて、今、準備を進めています。
──SMBを攻めるうえでの課題というのはある程度クリアされたのでしょうか。
その意味では、まだ製品がすべて出揃ってはいないんです。基本機能は出しましたが、出揃うのは今年の第1四半期の予定です。
──昨年9月には「e-文書法」の規制緩和が行われました。御社のビジネスにとっても好影響をもたらすと思います。
今回のe-文書法の規制緩和によって、顧客企業におけるテーマとしての優先度は上がってきています。あと、全社でコスト削減や働き方改革といったことがトップから下りてくるのだけれども、なかなか具体策がなくて困っているという企業が多いです。そこで、「経費のような間接費の分野でやりようがあるだろう」という思いをもっておられる方には、この規制緩和とあいまって、関心が高まっています。
──経費精算業務の効率化を、働き方改革の最初の取っ掛かりにしようという企業も多いと。
働き方改革といっても、なかなか具体策がないんですよね。ITを使って、改革をしている企業は意外と少ない。一番非効率的な日々の業務というと、経費精算がそれにあたると思います。ですので、その具体的な処方箋として、われわれは非常に注目を浴びています。かつ、あの糊付けしている瞬間の空しさ(笑)。これをなくせるということで、非常に関心をもっていただいていますね。
われわれは「経費精算の全自動化」を目指しています。経費精算って、面倒臭いじゃないですか。でも、数年後には「経費精算って昔は面倒だったんだよ」って若い人に言っているような時代になると思いますね。
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