“人を活かす”を原点として、人材派遣事業を中心にビジネスを展開するパソナグループ。パソナテックは、そのなかでITとエンジニアリングの分野を担っている。人材派遣事業は、稼働実績が売り上げとなることから、収益モデルとしては手堅い。パソナテックの登録エンジニアは、約4万6000人。圧倒的だ。ところがパソナテックは、企画提案の上流工程、システム開発、運用までを請け負う事業も手がけている。人材派遣事業のフロントランナーがなぜ。「派遣だけではない」の真意を確かめた。
派遣事業がすべてではない
──パソナグループというと、やはり人材派遣のイメージが強いと思います。ところが、システム開発にも取り組んでおられる。その背景をお聞かせください。 まず、パソナグループには「社会の問題点を解決する」という企業理念があります。その原点にあるのが、“人を活かす”。パソナグループでは“人財”という漢字を使っていますが、その人財が活きるソリューションに取り組んできているわけで、派遣事業にこだわっているわけではないのです。
多くの企業は今、人財を採用できない、労働人口が減少するという問題に直面しています。一方で、派遣法の改正や労働法の改正によって、企業における人財の扱い方も変化しています。
パソナグループとしては、派遣事業の「インソーシング」やシステム開発、運用などを請け負う「アウトソーシング」に取り組んだり、地域の人財や海外の人財を活用するモデルを提供したりするなど、トータルで“人を活かす”ことに取り組んでいます。そのためには、ICTをどう活用するかがテーマになります。当社としては、コアになる社員をしっかりと育てて、システム開発における上流の仕事も獲得できるように取り組んでいます。
──派遣事業は、売り上げの何割ですか。 約7割です。一般登録型のエンジニアがいれば、コア技術を学ぶために社員を戦略的に顧客企業に派遣することもあります。そういったものも含めると、7割くらいが派遣事業。やはり、世の中のエンジニア不足の解消や、エンジニアが活躍するフィールドをつくるという意味では、当社はとても期待されるポジションにありますから。
──派遣事業のイメージは、決して間違いではないということですよね。 間違いではないですが、当社の企業スタンスは、エンジニアのための会社ということです。派遣がすべてではありません。
──上流の案件を請け負って、システムを構築して、運用まで担う。それは派遣とはずいぶん違う感じがするのですが。 顧客ニーズには、3パターンあります。一つは内製化を進めるために社員を採用するということ。そこは人材紹介会社の領域。もう一つは、何らかの案件で対応できる人財を調達するということ。ここは派遣につながります。三つめは、業務そのものをアウトソーシングするという流れ。そこも当社で担うというわけです。
今は、大きなシステムを何年もかけて構築するというよりも、スピード感をもって、自分たちの事業にあわせてシステムを開発したり、運用したりしていく流れじゃないですか。そこに対して、しっかり提案していかなければなりません。

──ただ、派遣ビジネスが順調なのに、なぜ、システム開発を手がけるのだろうかと。“人を活かす”が原点とはいえ、それでは多くのSIerと同じになってしまって、パソナテックの強みが出ないのではないですか。 当社では「HUMANWARE change the world」というビジョンを掲げていますが、やはり、世界や未来を変えていくエンジニアを支援していく会社でありたいですね。大事なのは時代の変化を捉えることで、それには派遣という働き方だけではカバーできないわけです。そこで、最先端の分野や顧客ニーズがどこにあるのかなど、さまざまな観点でチャレンジしていこうという考えです。
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