今期(2016年3月期)過去最高の連結売上高200億円の達成を見込む豆蔵ホールディングス(豆蔵HD)の次なる戦略は、中核となるソフトウェアと組み込みや制御をはじめとするエンジニアリングを、より一体的に展開するというものだ。自動車向け車載ソフトウェアや製造業、半導体関連向けエンジニアリングサービスの連携を一段と強めるとともに、自社が版権や知財をもつ商材を増やしていくことで、グローバル市場での存在感の向上にも取り組んでいく。創業社長の荻原紀男氏に話を聞いた。
ソフトウェアは付加価値の中核に
──車載向けベーシックソフトウェア(OS)をSCSKなどと組んで商品化するなど、組み込みや制御系のシステム開発に力を入れておられますね。 日本の産業全般を見渡したとき、ソフトウェアの部分がアキレス腱になっていると思うのです。要はソフトウェア部分の競争力が欧米、とくにアメリカに比べて圧倒的に低い。そうであるなら、ソフトウェアの部分にビジネスチャンスがあるはずですが、日本の場合、ソフトウェア単体ではやはり限界があって、制御やエンジニアリングと一体的に展開していくのが有効と判断しました。その流れの一環で、車載向けOSでオープンアーキテクチャの「AUTOSAR(オートザー)」をSCSKなど5社と組んで開発することに至っています。
──AUTOSAR OSは、欧州発のオープンアーキテクチャで、ドイツなどのソフトウェア開発ベンダーが先行していると聞きますが、勝ち目はあるのでしょうか。 自動車を含むあらゆる工業製品の付加価値の中核にソフトウェアがある。世界を見渡しても、重厚長大の重電メーカーですら、今やIoT(Internet of Things)やサイバーフィジカルシステム(CPS)の中核にソフトウェアを位置づけている。自動車産業は日本の基幹産業であり、そのソフトウェアの基盤となるOSを海外ベンダーに依存するのはいかがなものかという意見は根強くある。販売面については、まだ話せない部分が多いのですが、日本の自動車産業のみなさんにも、この点に関しては、十分に理解していただいていると手応えを感じています。
──御社は自動車など輸送機械産業に強いエンジニアリングサービスのジークホールディングスを2015年3月に迎え入れたことで、今期(2016年3月期)連結売上高は過去最高の200億円に達する見通しです。 ジークホールディングスグループは、名古屋と東京に主要な事業拠点を置いて、開発設計のエンジニアリング支援などを手がける会社で、実は2010年頃から私が取締役の一人として関わっていました。当初はビジネス的な連携は少なかったのですが、冒頭の製造業におけるソフトウェアの重要性が日増しに高まり、エンジニアリングとソフトウェアを一体的に提案してほしいというニーズが強まってきたのですね。そこで当社連結グループに加わってもらい、より一体的にサービスを提供していく体制を整備することにしました。
ただ、エンジニアリングは、技術者の客先常駐の割合が高く、AUTOSARのように自分たちで知財をもって提案することが少ない印象ですので、今後は豆蔵HDグループ内での連携を一段と深めて、知財ベースのビジネス割合を増やしていきたいですね。
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