「最後は人が行く」。PCなど情報機器のサポート事業を手がけるキューアンドエーは、コールセンターに加えて全国1000人のスタッフによる訪問対応を提供できる、テクニカルサポートのスペシャリストだ。2013年にNECネッツエスアイの連結会社となって丸2年が経過した同社に、この春、新社長として就任した牛島祐之氏は、現場力をどのように生かして事業を発展させていくのか。
ボトムアップの文化を根付かせたい
──牛島社長はNECネッツエスアイで30年間、企業や公共系を対象とする営業畑を歩んで来られました。一方、キューアンドエーはコンシューマにサポートを提供する企業です。ビジネスのスタイルや業界の文化に違いを感じられる部分も多いのではないでしょうか。 キューアンドエーに来る直前は一番お堅い官公庁向けを担当していたこともあって、B2B2CやB2Cのビジネスは、B2Bのそれとはスピードが全然違うことを実感しました。仕込みから構築まで数か月から年単位にわたる世界とは異なり、コンシューマからは反応がすぐに返ってくるので、判断も素早くしなければいけない。そこをおもしろくも感じています。
──NECネッツエスアイがキューアンドエーを傘下に収めるという話は、ちょっと異色の組み合わせだったようにも思えるのですが、この提携の意味合いをあらためて教えていただけますか。 例えば、高齢の方がいきなりスマートフォンを購入しても、すべての機能のうちの何%を使いこなせるでしょうか。もしかしたら電話機能しか使わない方もおられるかもしれない。しかし、そこにわれわれのような「サポート」が入ることによって、6割、7割の機能を使いこなしていただけるようにもなる。同様に、NECネッツエスアイはITシステムを売る会社ですが、システムだけを提供しても100%のパフォーマンスを出すことはできないと思います。システムにサポートを加えることで、本当にお客様にとって役立つサービスが実現できる。そのための協業と考えていただくとわかりやすいかと思います。
ただ、両社のシナジーをつくっていくことは、もちろん私の役目の一つですが、まずはキューアンドエー自身がさらに“とがって”、世の中で光り輝く会社にならなければ、いい連携効果は出せない。「連携ありき」でスタートすると、キューアンドエーがつまらない会社になって、せっかくもっている価値も失われてしまう。だから、今はあまりまだあえてシナジーは考えないようにしています。
──前社長の金川裕一会長から継承する部分、逆にこれから「牛島色」を出していきたい部分については、それぞれどのようにお考えですか。 私なりに絶対に守り、継承していきたいと考えるのは、企業理念として掲げる「感動共有企業」を目指すというところです。お客様の事前の期待を超えるサービスを提供し、そして感動をお客様と共有する。それだけ喜ばれるサービスでなければ、この業界では生き残れないと思っています。
一方で新たに、現場の人材がもっているさまざまな才能を組織の価値として提供していく、ボトムアップの文化を根づかせたいと思っています。MBAを取得しているような人間がいるかと思えば、経験をもとに行動で結果を出す職人気質の人間もいるというように、本当に多彩な人材がいる会社なので、それをどう生かしていくかが大事だと考えています。
──コールセンター業界のなかで自社はどのような特徴をもつ企業だと分析しておられますか。 業界大手と比べると規模ではまったく違うポジションにありますが、技術的な内容への対応に特化しているので、その分野では強みを大いに発揮できていると考えています。そして他社との決定的な違いは、コールセンターとオンサイトサポートの両方を一つの企業として提供できることにあります。コールセンターで解決できない問題に対しても、「電話で解決できなければ最後は人が行きます」という体制があるのは大きな強みです。
[次のページ]