NECプラットフォームズは、サーバーやネットワーク機器など、NECグループで民生用ハードウェアの製造を担う中核会社として、再スタートを切った。同社の発足にあたっては、NECインフロンティアおよびNECインフロンティア東北、NECアクセステクニカ、NECコンピュータテクノの製造会社4社が統合し、NECエンベデッドプロダクツのテープストレージ部門も移管している。つまり、NECグループの主要な製造部門を一手に担うのが、NECプラットフォームズというわけだ。しかし、保坂岳深社長は、単なるハードウェアの製造が自社の成長に結びつくとは考えていない。
製品単体では競争力を保てない
──御社は、ハードウェアを製造し、NECというメーカーの矜持を担うポジションにあるわけですが、事業の展望はいかがでしょうか。 保坂 当社は今年7月1日付で製造会社4社が合併して発足し、NECグループの航空宇宙や防衛などを除く民生用ハードウェア全般の製造を担当しています。サーバーやストレージ、ルータ、車載機器、PBX(構内電話)、POSレジなどをそれぞれの会社で製造していましたが、厳しい国際競争のなかで製品単体の競争力を高めていくのは、もはや限界だと判断しました。製造子会社の統合効果によってオーバーヘッドロスを減らすとともに、コンピュータメーカーであるNECの総合力を生かせるように構造改革を進めている最中です。
──サーバーやルータなど、個々の製品で競争力を発揮できないなかで、どのようにグループ全体としての総合力を生かすのですか。 保坂 製品単体で競争力を維持できていないというのは、メーカーとして実に残念です。ただ、環境の変化もあります。例えば、クラウドコンピューティングの大きな流れのなかで、サーバーやネットワーク機器は、データセンター(DC)に急速に集約されています。DCはブラックボックス化され、サービスだけがユーザーに提供される仕組みなわけで、こうなると製品単体でどうこうできる問題ではなくなっているのです。
現に、仕事机のまわりからNEC製品が減っていますし、街に出ても「NEC」のロゴを目にするのが難しくなりました。DCの中に入ってしまうので仕方がないし、その意味ではパソコンの中に入って外からは見えない製品をつくり続けているインテルさんのご苦労が、改めてわかったような気持ちになりますよ。大きな声で「NEC・インサイド」と叫びたくなる衝動に駆られます(笑)。
──つまり、クラウドを軸に製品展開をするということですか。 保坂 それも一つの軸ではありますが、NECグループはソフトウェアやサービス、システム構築(SI)といった幅広い商材を扱っています。しかし、世界市場を考えると、ソフトウェア単体、サービス単体、SI単体の勝負は難しい。これらにハードウェアを組み合わせて、アプライアンス(特定用途向け製品)化すれば、他社にはない商材をつくることができます。顧客のビジネスを成功に導くITの仕組みを工場で組み立てて、一つのパッケージとして出荷する。極端な話、顧客は電源を入れるだけで、すぐビジネスで活用できるというモデルです。
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