デルは、今年度(2015年1月期)下期の期首である8月から、新体制でパートナービジネスを推し進めている。これまで「強化する」と何度か口にし、いくつかの施策を打ってきたものの、成功したとはいい難いデルのチャネル事業。閉塞感を打ち破るために、郡信一郎社長が打ち出した戦略は、過去とは違う大胆なものだった。これまでとは異なる戦略の中身と、今それを進める理由は何なのか。背景には、本社の上場廃止が大きく関係していた。
IT市場の60%は間接販売。ここを強化しないという選択肢はない
──デルの社長に就かれて、先月で丸3年を迎えられました。今回のインタビューは、この8月にスタートした間接販売事業(パートナービジネス)の強化体制について聞くために時間をいただきましたが、本題に入る前に、まずはこの3年のデルジャパンを、どのように評価しているかを聞かせてください。 郡 この3年は、デルがグローバルでソリューションプロバイダに変革を遂げようとチャレンジしてきた期間。向上の余地はまだありますが、お客様をサポートする領域を「広く深く」することができ、幅広い私たちのソリューションを多くのお客様に提供できたと思っています。
また、これはとくに昨年から力を入れていることですが、明確なシェアターゲットを定めて、それを達成しています。例えば、クライアント(端末)。昨年はグローバルトップ3社のなかで最も成長し、前年に比べてシェアを2ポイント上げることができました。以前から推進している「利益を追い求める経営」を進めているのと同時に、ボリュームを増やすこともできている。一定の成果を感じています。
──前社長のジム・メリット氏に比べて、「シェアを追う」姿勢を郡社長からは強く感じていました。今年度下期、この8月からパートナービジネスを強化する戦略を推し進めるために、新組織を立ち上げました。ボリュームをさらに追い求めていくんですね。 郡 日本のIT市場は、約60%がディストリビュータ・SIerなどのITベンダーを経由したパートナービジネスが占めているとみています。残りの40%程度が、お客様にメーカーが直接届ける直販ということ。デルは、この40%の販売経路で強い。
直販も頑張りますが、パートナービジネスに深く関与しないのは、大きなビジネスチャンスを逃すということです。お客様のことを考えれば、直接メーカーから製品・サービスを購入するよりも、すでに深くおつきあいしているITベンダーから届けてもらったほうがスムーズに導入できることがあります。多くのIT製品・サービスを組み合わせてソリューションをつくり、お客様に届けることが求められているという観点からも、パートナーの力はさらに重要です。だから、パートナービジネスの強化を掲げ、下期から新しい施策を打つことを決断したんです。
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