ITホールディングス(ITHD)は、主要事業会社トップによる集団指導体制を確立する。今年6月にトップに就いた前西規夫社長のリーダーシップの下、事業会社トップの合議体を通じてグループ経営をより密にしていくのが狙いだ。情報サービスビジネスは、グローバル化やサービス化が一段と進み、ビジネスモデルそのものが大きく変わろうとしている。前西社長は「事業会社と一丸となって変革に臨んだ『あのときがITHDグループ転換点だった』というように、後になって評価される仕事がしたい」と、変化を先取りする改革に強い意欲を示す。
彼らには創設者としての重みがある
──前西社長が国内外およそ2万人のスタッフを率いるグループのトップに就任されて3か月になります。これからどのように舵を取っていこうと考えておられますか。前西 正直、当社国内外51社のグループ会社は、どれもみな個性的な会社ばかりなので、そのトップとしてどう率いていくのかは悩んだというか、「ほんとうにできるのか?」と自問自答しました。ITホールディングス(ITHD)を創設したのは、岡本(岡本晋前社長)と中尾(中尾哲雄元会長)ですので、ある意味、二人とも創設者としての重み、カリスマ性があります。ただ、いつまでも岡本・中尾が決めて実行するという体制を続けるわけにはいきません。岡本は70歳になったのを機に、後任社長として私を指名したわけです。
そこで私は、TISやインテック、AJS、クオリカなど主要事業会社のトップに、ITHDの取締役に就いてもらうことにしました。私が岡本・中尾の代わりになるのではなく、事業会社のトップがそれぞれ意見を出しながらグループの経営方針を決めていく体制です。いわば執行部的な存在として、ITHDと事業会社が一体となって、グループの総合力を発揮していこうと考えています。
──具体的には何が変わるのでしょうか。 前西 ITHDは、2008年4月の創設以来、グループ会社の独自性を重視して、それぞれの特色を生かすことを経営の基本方針としてきました。複数の峰からなる八ヶ岳になぞらえて「八ヶ岳経営」を実践していた頃です。個別最適型でそれぞれの強みを伸ばして新規顧客を開拓するという面では効果が大きかったのですが、構造的にどうしてもオーバーヘッドロスのほうが大きくなってしまって利益が出にくい。リーマン・ショックの直撃を受けてからは、利益確保のために事業会社の再編に取り組まざるを得ず、これが11年4月の旧TISと旧ソラン、旧ユーフィットの3社合併などにつながりました。こうした再編によって、グループ全体の損益分岐点は下がっています。
──グループの再編が効果を現したということですが、これから先の方針については……。 前西 トップライン(グループ売上高)をどう伸ばしていくのかが問われています。グループが一丸となって取り組む「as One Company」や、新規領域に挑戦する「進取果敢」を基本方針として、トップラインを上げられるように力を注ぎます。グループ再編を通じて損益分岐点は下がっていますので、売り上げが伸びれば、利益は自然と高まります。従来の個社最適型ではなく、グループ全体最適型で、守るべきところは守り、攻めるべきところは果敢に攻める姿勢を明確にします。
また、「バックオフィスの共通化」「サービス化、グローバル化」も強力に推進していきます。例えば、DC基盤とBPO(ビジネスプロセス・アウトソーシング)は、もっと共有化できると思っています。
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