ビジネスアナリティクスのリーディングカンパニーであるSAS Instituteは、創業以来、37年連続で増収を続けている。そのなかでも、ビッグデータ分析のニーズなどを背景にして急成長しているのが、日本を含む北アジア地域の市場だ。日本法人であるSAS Institute Japanの吉田仁志社長は、企業の経営層におけるアナリティクスへの意識の高まりをひしひしと感じている。最新の市場動向と、同社の日本市場における戦略を聞いた。
高まる経営層の関心
──2012年は、SAS Instituteグローバルで過去最高の28.7億ドルを売り上げ、日本を含む北アジア地区はトップの伸び率を達成されました。 吉田 2012年は東日本大震災の翌年だったこともあって、日本の市場が活発に動きました。グローバルの売り上げのうち、日本が占める割合は6%強ですが、新規の売上高が3割以上を占める結果になりました。ガートナーなどの調査結果をみてもそうですが、分析、アナリティクスという分野そのものが非常に脚光を浴びていて、われわれがずっと提唱してきた、BI(ビジネスインテリジェンス)、BA(ビジネスアナリティクス)の企業経営における有効性が認知されてきたという印象です。実際に日々顧客と接している営業部隊も、それは実感しているようです。
──ビッグデータ元年ともいわれた2012年ですが、ビッグデータの活用という視点でも、アナリティクスに市場の注目が集まっていますね。 吉田 ビッグデータに関しては、ようやくビジネスが始まったという感があります。実際にユーザーからは、ソーシャルメディアの分析ソリューションである「Social Media Analytics」(SMA)の引き合いはよくありました。また、SASはグローバルでいろいろなスタディをやっていて、国連と共同で行ったプロジェクトでは、米国とアイルランドのソーシャルメディア上のユーザーの会話にみられる感情の起伏から、失業率急増の兆候や影響を発見しました。これは非常にタイムリーなかたちで注目を浴びました。
ただし、ビッグデータのアナリティクスという意味では、2013年が元年になるのではないかと考えています。ようやく、ビッグデータから価値をどう創出するかが大事だという考え方が浸透してきたと思います。
当社は年に1回、フォーラムを開いているのですが、今年は「SASフォーラム」ではなく、「アナリティクス2013」と銘打ったところ、非常に注目を浴びました。申し込みのボリュームも増えたし、スピードも速かった。特筆できるのは、より経営者に近い立場の参加者が多かったことです。組織の意思決定にかかわる層で、アナリティクスへの関心が高まっていることの現れだといえるでしょう。
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