米国に本社を置くロードバランサ(負荷分散装置)の有力メーカーで、日本でのビジネスを急速に伸ばしているA10ネットワークス。小枝逸人社長は、業種ごとにハイタッチ営業を行う販売体制づくりを推進しており、事業のさらなる拡大に取り組んでいる。メーカー間の競争が激しさを増すロードバランサ市場で、小枝社長は「売上金額でシェアNo.1」を目指している。
業種ごとのハイタッチ営業部隊をつくる
──御社はこのところ、ロードバランサ市場での存在感を高めておられる。調査会社の富士キメラ総研によれば、日本のロードバランサ市場でA10ネットワークスの2011年度の売上金額シェアは、2位の29%と見込まれています。2010年度比で9ポイント増と、好調のようですね。
小枝 今年に入って、業績が非常に順調に伸びています。実数は公開していないので申し上げられませんが、2012年1~3月の3か月で稼いだ売り上げの金額は、一昨年度(2010年12月期)の売り上げの1年分に相当するほどです。
当社は、モバイル通信キャリア、クラウドサービス事業者、大手企業(エンタープライズ)の三つを主なターゲットとして、ロードバランサを販売しています。通信キャリアは、スマートフォンなど新型モバイル端末の普及に伴ってネットワークインフラの強化を推進しており、ロードバランサをはじめとするネットワーク機器の増設に取り組んでいます。また、サービスプロバイダや大手企業は、画像やSNS(ソーシャルネットワーク)情報など、大量化しているデータのトラフィックを処理するために、ネットワークインフラを刷新し、その一環としてロードバランサを導入します。このような市場環境の変化を追い風として、高性能ながら価格を抑えた当社の製品がよく売れています。
さらに、ビッグデータ時代の到来によって、ロードバランサを使うユーザー企業のすそ野が広がるとみています。今後は、大手の企業だけではなく、中堅・中小規模の企業も大量データのトラフィック処理に取り組む必要性が出てくるので、ロードバランサの新しい市場が生まれてきます。当社はその新しい市場をいち早く開拓することを目指し、今年2月に、中規模の企業やプロバイダに向けたミッドレンジモデルを投入しました。これからも、ローエンド/ミッドレンジの製品ラインアップを拡充する考えです。
──事業を拡大するために製品力を強化していくということですね。それ以外に、どのような動きをとっていこうと考えておられますか。
小枝 当社の売上構成では、キャリア/サービス事業者とエンタープライズがそれぞれ50%ずつを占めます。新規顧客の開拓を狙い、今年はとくにエンタープライズの領域を伸ばしたいと考えています。
私どもは現在、インダストリー(業種)ごとに提案活動を行うハイタッチ営業部隊をつくっているところです。金融をはじめ、製造や流通、官公庁などに力を入れて、新規顧客の開拓を目指しています。インダストリーごとのハイタッチ営業の組織づくりは、当社の販売代理店に向けた支援策の一つです。当社が提案を行って案件を獲得したり、販売代理店に引き合い情報を提供するかたちで、販売活動をサポートしたいと考えています。インダストリーごとのハイタッチ営業部隊は、現在、組織づくりの真っ最中で、この4月から徐々に提案活動を開始するスケジュールで動いています。
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