エス・エス・ジェイは、他社に先駆けて2011年2月、統合基幹業務システム「SuperStream-NX」のSaaS版の提供を開始した。クラウドERPをいち早く揃えることで、優位な立場を築こうとしている。グローバル化の進展というトレンドにも対応し、“唯一無二”の製品ラインアップで生き残る考えだ。
2011年、攻めに転じたユーザー企業
――東日本大震災やユーロ危機、タイの洪水、円高などを受けて、先行きの見通しを立てにくくなっています。2011年、御社のビジネスはどのような状況に置かれていましたか。
大江 震災の影響に関していえば、多くの企業がいろいろなことを見直したり、慎重になったりしました。一番恐れていたのがIT投資が落ち込むことでしたが、振り返ってみると、需要自体は心配していたほどの落ち込みはなかったというのが実感です。
そうはいっても、震災に始まり、原発事故、円高、ユーロ危機と重なりましたので、多くの企業にはIT投資に関する意思決定を先延ばしにする傾向があったと思います。予定していた売り上げが先に延びた案件がいくつかありましたから。結果として、当社の売り上げは、2010年からほぼ横ばいでした。
――最近は、統合基幹業務システム(ERP)導入のトリガーとなる要素に何らかの変化がみられますか。
大江 当社は、財務会計と人事・給与のパッケージを揃えています。これらの分野は、どちらかというとバックヤードの業務を効率化するという側面が強くあります。ですが、2011年に入ってユーザー企業の姿勢が若干変わってきたように思います。つまり、守りの効率追求から攻めの経営への適用という流れです。
キーワードの一つは、グローバルです。グローバルでのグループ管理ができていない企業は決して少なくない。当社のユーザー企業の30%は海外に進出しており、単に連結決算ができるだけでは不十分です。グローバルでの製品群や地域別の分析がシステムに求められるようになっています。提供の仕組みという面では、クラウド/SaaSが挙げられます。
――御社は、「SuperStream-NX(NX)」のオプションとして「グループ経営管理」を揃え、グローバルやグループ経営を軸に製品強化を進めてこられました。
大江 2009年の暮れにNXを出して以来、マーケティング活動を展開し、機能モジュールの追加も行ってきました。1月末に、英語対応版をリリースしました。近いうちに、固定資産管理や多通貨にも対応する予定です。
――NXのSaaS対応版は、2011年2月に提供を開始されました。受注の状況はいかがでしょう。
大江 SaaSビジネスを本格的に手がけているERPベンダーは、あまりないと認識しています。2010年から2011年にかけて、SaaSはブームとして盛り上がりましたが、ビジネスとしてはまだ黎明期。震災の影響もあって、普及のスピードが遅れました。
ただし、トレンドとしては定着しましたね。世の中の流れは、クラウドに向かっているのは確実です。こうしたなかで、当社のSaaS対応版は一部サービスインした段階です。爆発的に伸びるのは2012年という気がしています。
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