日立システムズは、グローバルビジネスの拡大に意欲を示す。まずは中国・ASEANをはじめとする成長国市場を中心に事業を拡大させ、2015年には海外売上高比率を10%へ高める目標を掲げる。旧日立電子サービスと旧日立情報システムズが経営統合して新たにスタートした同社の目指すべき姿は、高橋直也社長がいうところの「すべてを任せてもらえるグローバルサービスカンパニー」である。
海外でシェアを獲ることの大切さ
――新生・日立システムズにとって、2012年は実質、本格的なビジネスの立ち上げの年となりそうです。どんな会社にしたいとお考えですか。
高橋 ひと言でいえば、“すべてを任せてもらえるグローバルサービスカンパニー”です。2011年10月1日付で、旧日立電子サービスと旧日立情報システムズが合併して新たにスタートした当社ですが、準備段階から、私は意識的に“グローバル”というメッセージを発してきました。すでに日立製作所や兄弟会社の日立ソリューションズと歩調を合わせながら、まずは中国・ASEANでのビジネス基盤を整え始めています。このタイミングで海外ビジネスを大きく伸ばしたい。
――グローバルをひときわ重視しておられる印象を受けますが、背景には何があるのでしょう。
高橋 国内市場の成熟とアジア成長国市場の拡大、これに円高が加わっていることで、産業の海外シフト、グローバル化は進んでいます。ところが、旧2社ともに海外売上高比率は残念ながらとても低かった。裏を返せば、グローバル化で勝ち残ろうとしているユーザー企業の要望に、十分応えられていなかった側面があったことは否めない。このままでは、巡り巡って国内の既存顧客の信頼を得られなくなってしまいます。
私自身、日立製作所時代に長らくストレージ事業を担当してきました。ストレージ関連のハードやソフト、LSIなどをずいぶんつくりましたが、現在、有利にビジネスを進めることができている要因として、世界でまとまったシェアを確保していることが大きい。海外ユーザーは世界でシェアをキープしているストレージだからこそ信頼してくれている面もありますし、日本国内で事業を展開するユーザーにも同様の理由でご購入していただいているケースが少なくありません。もし、これが国内しかシェアのないストレージだったとしたら、おそらく違う結果になっていたことでしょう。
――つまり、グローバルが伸びなければ、日立システムズの事業そのものが伸びない、と。
高橋 これからの時代は、そうならざるを得ない。ストレージビジネスの例がそうであるように、当社の主力事業である情報サービスでも、海外でのシェアがビジネスを大きく左右することは確実です。ユーザー企業の間では、海外でもしっかりサポートできる力量をもったSIerをビジネスパートナーとして選ぶ傾向が強まるでしょうし、われわれベンダー側もユーザーの要望に応えていく必要があります。
――今回の経営統合で、日立製作所や日立ソリューションズとの関係はどう変わりますか。
高橋 日立製作所の情報・通信システム社は電力や鉄道、メガバンクといった社会インフラに相当する大規模システムを担い、日立ソリューションズは大規模なソフトウェア開発で絶対的な強みをもっています。日立製作所が獲ってくる超大型案件に関わる大規模ソフト開発は、やはり日立ソリューションズが日立製作所といっしょに担うべき領域です。これに対して、当社はサービス拠点の多さを生かしたワンストップサービス、全国10か所余りのデータセンター(DC)運営のノウハウ、中堅・中小企業や自治体向けのSIビジネスなどに強みをもつことが最大の特徴です。
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