シマンテックは今年、パートナープログラムや営業体制の強化を通じて、SMB、そして売上高1000億円以上の大企業に対してのアプローチを強めている。チャネルビジネスが成熟期を迎えているなか、従来どおりの製品単体売りから、パートナーとのエコシステムも踏まえ、ソリューションセリングの実現に力を入れる。
水平分業型に可能性を見出す
──昨年、サン・マイクロシステムズの社長に就任直後の10月にオラクルによるサンの買収が決まり、今年5月にはシマンテックの社長に就任された。この1年間はめまぐるしかったのでは?
河村 そうですね。サン・マイクロシステムズの社長として、買収が決まっているなかで仕事を全うしなければいけませんでしたし、悩みました。当時、割と大規模なリストラがあって、社員は落ち込んでいましたし、顧客離れ、パートナー離れも起こっていたのです。それをどう防いで、見込み案件を増やして立て直せるか。大変なチャレンジでしたが、やりがいがありましたね。そんななかで次の勤務先を決めるというのは、正直なところ罪悪感がありました。ですが、昔からトランスフォーメーションというか、企業改革、変革が好きだった。シマンテックジャパンを一緒に成長させないかといわれ、とにかく待つから考えてくれと熱烈なアプローチを受けました。そこまで言ってもらえるならと、社長職を引き受けました。
──シマンテックのどんなところに可能性を感じましたか。
河村 この会社の社長に就く前は、いまさらセキュリティ、ストレージでもないだろうと、実は思っていた(笑)。以前在籍していたオラクルやサンでは、アプリケーションからチップ、サービスまで、すべてを自前で揃える垂直統合型モデルを推し進めていたわけです。特定のソフトウェア、特定のハードウェアを売っている会社は、いずれ消滅すると社員に言っていたくらいですから。
ところが、実際にはユーザー企業が一社ですべてを揃えるようなケースはなかなかありません。そうなるとさまざまなチョイスが必要になります。
当社はあくまでもセキュリティ、ストレージ、バックアップの三つのソリューションを強化するために企業買収や自社開発を進めています。ただ、そのまま提供するとなると、ユーザー企業はいろいろなセキュリティのコンポーネントを買わなければならない。そこで、スイート製品として提供すれば、一つの製品で社内のセキュリティを統合的に守ることができる。
クラウドコンピューティングをはじめ、iPad、スマートフォンのようなネットに接続できるモバイル端末も増えています。ネット社会はさまざまな問題を包含しながら進化しています。企業の中で急激にデータ量が増えると、その情報を守るためにセキュリティをいかに担保し、ストレージでどう管理するか、バックアップするかは非常に大事なポイントになります。まさにその三つの企業ニーズを満たすのがシマンテックの製品です。これからネット社会のキープレーヤーになるべく製品群を拡充しています。セキュリティ、ストレージとか、バックアップのソリューションとか、水平分業型でヘテロジニアス(異機種混在環境)にどんなプラットフォームにも対応できる製品をもっていることが強みになります。
日本でもっと効果的に売るためには何が必要なのか。
頭を使ってアイデアを生かすことがカギになります。
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