ネット通販(EC)会社のストリームは、事業の規模拡大を強力に推進する。ベスト電器やソフトクリエイトのネット通販事業を相次いで傘下に収め、売り上げを大幅に伸ばした。規模のメリットを生かした間接コストの削減や購買力の増強により、「成長に向かう好循環が形づくられつつある」(劉海涛社長)と、売り上げ拡大に強い意欲を示す。
会員400万人規模に増大
──ネット通販サイト事業の「イーベスト」や「特価コム」などを相次いで傘下に収めておられます。その狙いは?
劉 規模の拡大です。インターネットを活用した通販は、小売業の一形態であることに変わりありません。そうである以上、規模の追求は当然のこと。2009年2月にベスト電器のイーベスト、同じ年の4月にソフトクリエイトの特価コムの事業を譲り受けたことなどがプラスとなり、10年1月期の連結売上高は前年度比15.5%増の336億円に伸びました。
当社が「ECカレント」のサイト名でネット通販に参入した02年1月期の年商は約23億円でしたので、8年ほどで14倍余りに急成長できたことになります。
──成長の可能性が大きいとみて、大手小売業の大半が何らかの形でネット通販に参入しています。とくにITや家電系の中小ネット通販事業は、価格競争の荒波に揉まれ、厳しい事業運営を強いられているとも聞きますが、御社はいかがでしょうか。
劉 当社はネット通販を専業としている販売店ですので、もちろん大手とも競合します。競争は激しいですが、“引きこもり消費”などの消費行動の変化も後押し要因となって、ネット通販そのものの市場は堅調に拡大しているんです。事実、当社の傘下に入る前のイーベスト、特価コムともに売り上げは伸びています。ただ、その伸び幅が、当初期待していたよりは大きくなかった。
大手に勝つには集客・販売力の集約が必要だと判断して、今回のM&Aに踏み切ったわけです。09年1月期の当社ネット通販サービスの会員数は約145万人ですが、2サイトが加わったことで、10年1月期には一気に395万人まで増加。直近では400万人を超えています。個別に事業を手がけるよりも、統合したほうが規模のメリットを得やすい。
──今は、ECカレントとイーベスト、特価コムの3サイトを運営しているわけですが、それぞれどう相違点を打ち出していきますか。
劉 成り立ちの違いから、それぞれの特色は自然に出ています。例えば、ECカレントは安さが売り。イーベストは家電に強く、特価コムはクレジットカードなどの決済系のサービスが充実しているなどが挙げられます。
ただ、将来的には、異なる通販サイトを個別に運営するよりも、統合したほうがよいと思っています。まだ330億円ちょっとの年商ですので、リソースを集中し、スピードアップを図るべき、というのがその理由です。ただ、これは会社として決めたわけではなく、あくまでも私の将来構想の一つに過ぎません。
──統合するとして、何にリソースを集中すべきなのでしょうか。
劉 「ブランド力」と「ビジネスの仕組み」です。規模拡大のメリットの一つに購買力や間接コストの削減などが挙げられますが、これは結果であって、まず先にどうビジネスを大きくするのかという命題があります。そこで当社は、これまでネット通販を低コスト、かつ効率的に回転させるための仕組み“ECプラットフォーム”づくりに取り組んできました。
顧客から受注したデータは、コンピュータで処理し、オンラインで決済会社や仕入先、物流・配送会社に送ります。極力、人の手を介さず、自動化することでコストを削減。ネット通販ビジネスで業績を伸ばし、株式上場は、この当社独自のECプラットフォーム構築による省力化が原動力といっても過言ではありません。
小売業は相反する経営指標をバランスさせるビジネス。
いかに好循環をつくるかが、成長のカギとなる。
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