家電量販店のラオックスは、日本と中国の両方でビジネスを伸ばす。中国大手量販店の蘇寧電器と資本業務提携した同社は、中国での販売チャネルを得ると同時に、国内での体制立て直しに全力を挙げる。今期は10期ぶりの黒字化、そして向こう3年をめどに年商700億円までの回復を目指す。
前倒しで新規出店進める
──トップに就任以来、この8月で1年になります。ラオックス再建の進捗はいかがですか。
羅 東京の新宿と臨海地区に売り場面積1000m2規模の店を新規で2店舗、この4月にオープンしました。今期から本格スタートした3か年の中期経営計画で、新規出店を準備していましたが、恰好の不動産物件に恵まれたこともあり、予定を前倒ししての出店です。今は国内で7店舗の体制で運営しています。
──今期は黒字化の見込みですね。
羅 そうです。残念ながら当社は9期連続で赤字を出してしまいましたので、今期は黒字化をぜひ成し遂げたい。決算期については、当社筆頭株主の中国・蘇寧電器に合わせる形で、これまでの3月期から12月期へ変更する予定です。したがって、今期は9か月の決算。すでに発表している11年3月期までの12か月の決算では、営業利益ベースで2億円の黒字を見込んでいます。
──蘇寧電器との資本業務提携による効果はすでに現れているのですか。ラオックスが広大な中国市場へ日本の商品を供給する日本側の購買窓口になるのではと、期待する声も一部にあります。
羅 いえいえ、ラオックスは基本的に日本の顧客をメインターゲットとする量販店であることに変わりありませんよ。日系の大手家電メーカーは、すでに中国の現地法人を通じて、蘇寧電器などの量販店と直接商売を始めています。ここに割って入るのは考えにくい。
ただ、蘇寧電器の店舗内に売り場を設けるインショップ方式で、中国にはない、日本ならではの“商材”を販売するビジネスは展開します。今の経営計画の期間中にインショップで100店舗、これとは別に楽器専門店の中国への出店を10店舗程度、計画しています。
──日本ならではの商材とは、具体的にどんなものですか?
羅 IT商材に限ったものではなく、例えば、圧力釜やポット、セラミック製のハサミなど、生活用品などが有力ですね。この5~6月にかけては、こうした日本式の生活用品を蘇寧電器の中国国内11地区30店舗で販売するキャンペーンを打ちました。当社では“ジャパニーズ・ライフスタイル”商材と位置づけています。日中間で貿易仲介を手がける子会社「ラオックス上海」も立ち上げます。今回の蘇寧電器におけるキャンペーンも、当社が日本から輸出したものが主軸です。
──「ジャパニーズ・ライフスタイル」のイメージが掴みにくいのですが。
羅 日本にいるとあまり実感できないのですが、中国からみた日本のイメージは、エコロジーで繊細…なんですね。キッチン回りの商品、日用雑貨など、日本らしいきめ細かな工夫が施されている商品は、中国の人々は大好きです。
ただ、キッチン回りや日用雑貨系のメーカーは、中堅・中小規模の企業が多く、広大な中国で独力での販路開拓はハードルが少々高い。そこで、当社が貿易の仲介役となり、中国での流通をお手伝いさせていただく。日本で売っているものでも、実際は中国でつくっているケースもありますから、中国の工場でつくったものをそのまま店頭に並べたりと、柔軟に対応する方針です。
ラオックスは日本の顧客を
メインターゲットとした量販店であることに変わりありません。
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