独立系SIer大手のDTSは今期(2011年3月期)、V字回復を目指す。金融業顧客のIT投資が前期比2割増加する手応えがあり、これにM&A効果が加わることで100億円規模の増収を念頭に置く。有力商材の企画・提案力の向上、クラウドなどストックビジネスの強化を通じて、長期的には年商1000億円、営業利益10%への成長につなげる。
100億円規模の増収期待
──2期連続減収減益と、業績面では厳しい局面が続いています。
西田 順調に業績を伸ばしてきた当社にとって、昨年度(2010年3月期)までの2年間は大きな試練でした。世界同時不況でIT投資に急ブレーキがかかり、とくに昨年度は大きく落ち込んだ。ただ、今期(11年3月期)は、金融業の顧客を中心にIT投資が増える見込みで、業績は再び回復に向かうという手応えを感じています。
──どのくらい回復しそうですか。
西田 最も回復が期待される金融業の顧客からは、昨年度比で2割ほど受注が増えそうです。産業・流通はほぼ横ばいを堅持したい。当社は、昨年末にハイパフォーマンスコンピューティングに強いデジタルテクノロジーをグループに迎え入れたことなどから、今期は通期で70億円ほどの増収効果が期待できます。金融分野は売り上げベースで20億円程度の増収の感触があり、トータルでざっくり100億円ほどの増加を見込んでいます。保守的にみて、今期の連結売上高のイメージはおよそ620億円。過去最高の売り上げを記録した08年3月期の水準に戻せる可能性があります。
──この厳しい時期にトップに就任された抱負をお聞かせください。
西田 昨年6月から副社長として、当社の強み、弱みをみてきました。これまでみえていなかったこと、聞こえていなかったことが、業績が大きく落ち込む修羅場になると、いろいろと分かってきました。例えば、顧客のITシステムにしっかりと食い込んでいるので、不況になっても引き続き仕事がもらえると思っていたのに、あっさりと切られてしまったケースもありました。また、ちょっと距離があるかなと思っていた顧客が、困ったときこそDTSにお願いするしかないと、逆に多く注文をくれたりと、実態がより明らかになった。
弱みを徹底的に鍛え直し、強みである顧客の基幹業務システムへの食い込みをさらに強化。景気が多少悪くなっても、これがすぐに当社の業績に響かないよう基礎を固めます。
──売り上げの伸びばかりを意識しないということですか。
西田 いえ、正確にいえば違います。実力以上に売り上げを伸ばすと、少し逆風が吹いただけで、すぐに倒れてしまう。そうではなくて、売り上げを伸ばすとともに、プロジェクト管理やソフト開発の生産性向上など、基礎部分もしっかり積み上げていくことが大切ということです。
──基礎固めの方策をもう少し具体的に教えてください。
西田 ソフトウェア開発の成熟度モデルのCMMIレベル5を、2011年3月をめどに達成します。金融や産業担当といった部門別ではなく、全社でのレベル5の達成を目指したものです。国内大手SIerでも全社規模で達成しているケースはまだ少なく、ハードルは高いですが、今後の成長を考えると避けては通れません。
ビジネス面では、収益の柱を増やしていきたい。当社は金融に強いSIerですが、その中身を仔細にみてみると、バンキングシステムや信託、生保系では実績が多数あるものの、クレジットや損保系は、まだ少ない。例えば、今後、クレジットや損保で実績を増やすことで、今の金融三本柱から五本柱に増やせる。
産業・流通は、残念ながら苦戦している分野ではあるものの、見方を変えれば、当社が伸びる余地は依然として大きいと、前向きに捉えることができます。
自律的成長を堅持する。受け身ではダメだ。
企画・提案力の増強で年商1000億円を目指す。
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