2009年5月、徳永信二氏は10年間在籍したボーランドを離れ、ノベルのトップに就いた。「今後の有望分野で競争力のあるソリューションをもつベンダー」であることが転身した理由で、ノベルが用意するクラウド関連製品に強い可能性を感じている。まずは、仮想化関連ツール群の拡販にリソースを徹底集中させる戦略を打ち出し、パートナーとの協業体制構築に奔走している。39歳の若きリーダーは、クラウド分野でイニシアティブを握ろうと、一気呵成に攻め込むつもりだ。
クラウドは確実に成長する
──丸10年間在籍したボーランドを離れ、新天地としてノベルを選びました。まずはその理由を教えてください。ノベルの何に魅かれたのですか。
徳永 ボーランドはアプリケーション開発ツールにフォーカスしたITベンダーで、私はこのエリアで10年間キャリアを積みました。いろいろな経験をさせてもらいましたが、もし違うステージで仕事する機会があれば、その時は他の領域、とくにITのインフラ周りで仕事がしたいと思っていました。
以前は、インフラといえばOSかネットワークぐらいしかありませんでした。ですが、今は仮想化技術を中心に、ミドルウェア分野がかなり元気ですよね。ノベルは、この領域で多様な製品をもっています。とくにクラウド環境に適したソリューションを豊富に揃えている。仮想化にセキュリティ、アイデンティティ(個人認証・管理)などがその代表例。今後成長が確実な分野で、明確なビジョンと答えがある。それが魅力でした。
──逆に、徳永社長はノベルのビジネスにどう貢献できるとお考えですか。
徳永 一つ挙げるとすれば、私の人脈。これはノベルのビジネスに有効なはずです。ボーランド時代、私はSIerや大手コンピュータメーカーのSI事業部門の方々とおつき合いする機会が多く、おかげさまで友好的な関係を築くことができた人がたくさんいます。ノベルは今、SIerの方々との協業体制を構築し、チャネルビジネスを強化している最中。ボーランドでお世話になった方々に対し、私の人脈を通じてアプローチできます。
──ノベルは、2~3年前からSIerやIHV(独立系ハードウェア企業)との関係づくりを大切にし、チャネルビジネスを強化している。従来は手薄な印象があったパートナーとの協業を、改めて重視するのはなぜですか。
徳永 クラウドの存在が大きな理由ですね。ノベルは2009年11月、「インテリジェントワークロードマネジメント(IWM)」という新ビジョンを発表しました。これは、簡単にいえば、超大規模データセンター(DC)とクラウド環境を、効率的に構築・管理するための解を示したものです。ノベルは、数年前から研究開発も企業買収も「IWM」の実現を念頭に置いて手がけています。クラウド環境を支えるソリューションベンダーへと大きく舵を切っていると考えていただいてかまいません。
ただ、この新ビジョンを立案している過程で、ノベルだけですべてを手がけることはできないとも気づきました。ノベルはあくまでもクラウドを支えるソフトウェアの提供に特化して、ハードやサービスは他社にお任せする戦略を固めたのです。そうなると、IHVやSIerの力が必要になる。だから、今パートナーとの協業をとても大切にしているのです。
──クラウドに対するITベンダーの見解をどのようにみておられますか。IT企業の一部には、SIビジネスからの脱却に二の足を踏む例もみられます。
徳永 数年前までは、クラウドを懐疑的にみているITベンダーもいましたが、2009年を振り返ると、クラウドに消極的な企業は私の知る限り存在しません。SIビジネスで大手の企業でも「いつ誰がメジャーになるか分からない」と話していて、「クラウドビジネスに移行しなければならない」という危機感すら感じます。みなさん、しっかりとクラウド時代を見据えた経営戦略をおもちです。だからこそ、ノベルは「IWM」を打ち出したのです。
クラウドへの移行に疑う余地はない。
2010年は大きな転換期で、勝負の年。
クラウドを支えるソリューションベンダーとして一気呵成に攻め込む
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