情報技術開発(tdi)は自身の改革の第2フェーズに突入する。独立系SIerのなかでトップグループ入りの目標を掲げ、独自商材を切り口とした提案型のビジネスへと軸足を移す。第1フェーズでは受託・派遣型のビジネスからの脱却を果たした。第2フェーズではコンサルティングから運用に至るまで、ワンストップでサービスを提供する体制づくりを急ぐ。今年4月1日付でトップに就き、新たな改革の陣頭指揮を執る安永登社長に経営戦略を聞いた。
安藤章司●取材/文 ミワタダシ●写真
受託・派遣型から請負型へ
──グループ再編やM&A(企業の合併・買収)を積極的に推し進めておれらます。これまでどちらかといえば地味なSIerという印象があったのですが、社内で何が起こっているのでしょうか。
安永 確かに、地味な印象があったのは事実です。仕事のスタイルも、受け身というか、顧客から「こんなシステムできる?」と聞かれてから、「じゃあ、このくらいの価格で、この納期で…」と答える開発中心のSIerだったことは否定しません。契約形態も受託開発や客先常駐的な派遣ビジネスがメイン──。これでは、この先、SI業界で大きく伸びるのは難しいと判断して、ここ数年、大改革を推し進めてきたのです。
──どのような改革ですか。
安永 まずは、契約形態の見直しです。従来の受託・派遣型から、完全な請負型へ軸足を移すことで、顧客の経営課題をしっかり解決する。受託・派遣では、開発案件ありきで、経営課題を十分に解決するまでには至らない。顧客からみれば言うとおり動くし、便利な存在かもしれません。ですが、こうした立ち位置では、自ら主体的な行動がとりにくいですし、課題解決に向けた積極的な提案も難しい。システム開発の工程で見ると、開発が具体化した段階でないと当社の出番はありません。開発フェーズからの商談ですと、どうしても「じゃあ、いくらでできる?」という値段ばかりに関心が言ってしまいますから、粗利率の高いビジネス展開がしにくいんですね。
──課題解決力の強化は、大手SIerでは当たり前のことだと思います。安永さんが長年勤めてこられた日本IBMもそういうビジネススタイルですよね。
安永 世の中そういうものだろうと言ってしまえばそれまでですが、残念ながらかつてのtdiではそれができていなかった。前社長の竹田(征郎・現代表取締役会長)がトップに就いた5年前から改革を推し進め、2007年頃から本格的に変わってきました。06年度中間期(06年4─9月期)では、売り上げに占める請負契約の比率が37%だったのですが、07年度中間期では68%、08年度中間期でも65%と、ここ2年は改革の成果が実際の数字として現れてきています。
本体の改革と同時に、グループ戦略も大幅に強化しています。例えば、今年2月にコンサルティング会社のベストアンドブライテスト(現TDIコンサルティング・ソリューションズ)のグループ化による上流工程の強化を発表していますし、それ以前ではソフト開発のアクトシティやMISをグループ化。グループ再編では九州支社をTDIビジネスシステムズとして独立させました。他にもコンサルティングなどを手がける豆蔵OSホールディングスと資本・業務提携も実施しています。IBMと同じとまでは言いませんが、スピード感を持って近づいていると自負しています。
──これだけ大きく変革すると、社内は荒れるというか、ついてこれない人が続出しているのではないですか。
安永 わたしが移籍した07年は、改革の3年目で、大きく舵を切っている最中だったのですね。請負化に向けて連日のように顧客との契約交渉があり、正直、みなへとへとの状態でした。ただ、当社のよい点もたくさんあるわけで、ソフトの開発力やプロジェクトの品質管理、成果物をしっかり出すという中身は、実にしっかりしている。当たり前のことですが、これができる会社は、そうたくさんはない。顧客も安心して仕事を任せられるし、当社のビジネスも伸ばせた。今、M&A戦略も展開できるのも、こうした積み重ねがあり、実質、無借金経営で、手持ちのキャッシュをもっていたからこそです。
顧客の経営課題の解決が本分。今は不況で課題は多いはず、自身の価値を高めるチャンスだ。
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