Special Issue
TOP対談 「奉行クラウド」と「kintone」が一体化 日本企業のFit to Standard実現を後押し
2025/03/20 09:00
週刊BCN 2025年03月17日vol.2051掲載
業務の変革が本格化 中小企業の潜在ニーズは大きい
前回、23年4月にお2人に対談いただいた際は、「IT導入は進んだが、多くの場合DXの目的であるビジネスの革新には至っていない」というお話でした。この2年で変化を感じますか。和田 2年前はクラウド利用が拡大した時期で、いつでもどこでも業務ができる環境が整いました。それ以降、クラウドの普及によってデータの在り方が大きく変わりました。データ同士が新しいつながりを生み、トランスフォーメーションが起き始めています。

和田成史社長
青野 従来は企業が個々にサーバーを立て、そこにパッケージソフトを入れて業務をしていました。もし、それが業務に合わないと、システムの内部に手を入れてカスタマイズするしかないという技術的な制約がありました。それがクラウドへ移行したことで、サービス間のつなぎ合わせが容易になりました。業務と合わなければ、別サービスとの組み合わせで対応できる。これにより業務の全体最適化が可能になったことが最も大きく、本質的な変化だと思います。

青野慶久社長
クラウドの普及が、運用や使い勝手の改善だけでなく、ビジネスの革新も後押しするということでしょうか。
青野 クラウドとオンプレミスは単なるサーバーの置き場所の違いではなく、データがインターネットの世界に置かれることで、つながりやすくなったことが変化の本質です。今まで一つのシステムに閉じていたデータが、インターネット側では容易に移動できるようになった。その感覚が、ようやくお客様にも浸透し始めています。
和田 クラウドの世界でサービス同士がつながることで、データのつながりも広がる。これによりデータを利活用できるシーンが広がることによって自動化が進みました。
首都圏の大手企業に比べると、地方や中堅・中小企業ではDXが遅れていると指摘されることもあります。
青野 未来を考えると、DXは中堅・中小企業のほうが素早く進むと思います。少子化で人の採用がままならず、人材不足に大きな危機感を持っている方の声をよく耳にします。デジタル化による効率化が必須で、潜在的ニーズは大企業より大きい。ただ、ノウハウがないので支援が必要です。そこでクラウドなら、企業規模や地域の差が障壁になることがありません。社内に人材がいなくてもリモートでサポートが受けられる。だから、IT化の遅れをキャッチアップし、さらに追い越すチャンスと捉えてほしいと思います。
和田 ビジネスの仕組みが構造的に変わり始めており、今や場所に縛られず、どこでもビジネスができます。当社のパートナーでもある会計事務所の世界で合併が増えているのは、現地に足を運ばずにWeb会議で完結できるケースが増え、全国に向けて仕事ができるようになったためです。当社の導入支援も9割はリモート対応ですし、担当者もより多くのお客様を広域で担当できる。子育て世代も在宅でサポート業務ができるので、出産・育児をしながら効率的に時間が使える。クラウドを通じてDXを進めることで、中堅・中小企業にとっても大きなビジネスチャンスが生まれます。
「二つのスタンダード」を両立する 新しいカスタマイズの世界
基幹業務の領域では、DXの機運が高まって以来、クラウドERPの適用が進んでいます。クラウドのメリットを享受するにはシステムの標準機能に業務を合わせる「Fit To Standard」が望ましいとされますが、日本企業はカスタマイズを求める傾向が強いと言われてきました。どのように感じられますか。和田 カスタマイズするにしても業務領域によって、合う合わないがあると思います。
特に、財務会計・人事労務の範囲では、毎年のように制度改正が入るので、カスタマイズをしてしまうと制度改正対応に多くのコストが発生してしまいます。こういった領域については、なるべくカスタマイズを押さえ、Fit to Standardの運用を実現するのが良いと思います。
逆に販売管理など、業種や企業によって独自ルールがある業務領域では、企業競争力を落とさないためにもカスタマイズを行うのも一つの手段になります。
青野 カスタマイズが必要かどうかは企業ごとに事情が違い、バランスが必要な部分です。カスタマイズを避けたために生産性が大きく落ちては元も子もありません。ただ、オンプレミスの時代は、本格的に手を入れようとするとソースコードを書き換える必要があり、そうでなければデータを手作業で取り出して表計算ソフトで加工するなどの手間がかかり、大変なことになっていました。それがクラウド化で、データを統合し、ツールを組み合わせることによってローコードで同様のことが可能になりました。しかも、ガバナンスも効かせられる。新しいカスタマイズの世界が実現しています。
24年10月に奉行クラウドとkintoneの「標準連携機能」の提供を開始されました。21年1月の連携ツールのリリース以来、技術的には両サービスは既に連携可能な形となっていましたが、従来の連携と今回の違いや目指す姿を教えください。
和田 21年1月のkintone連携用ツールも、奉行クラウドとつなげることはできますが、お客様毎の個別対応が必要になりました。一方、今回の標準連携機能は、奉行クラウドとkintoneを利用しているお客様であれば簡単にサービスをつなぎ、誰でもデータやマスターの連携が可能になります。

さらに業務担当者が一体化したサービスとして処理ができるように、奉行クラウドのメニューとしてkintone連携を組み込み、奉行クラウドからkintoneへのデータ連携を実現しております。
青野 従来の連携はつくり込みが必要でしたが、標準連携機能はつくり込みが不要で、ユーザーは奉行クラウドとkintoneの環境を一つのアプリとして利用できます。例えると、これまで船で渡っていた川に橋が架かり陸続きになったという感じです。
リリース時点では、「取引先申請」「予実管理」「売上管理」などの領域で標準連携機能の提供を発表されました。すでにサイボウズの社内ではこれらの機能を使われているとお聞きしていますが、実例をお聞かせいただけますか。
青野 一例に取引先管理があります。現場がkintoneで登録、申請した新規の取引先情報を、従来は経理部門が手作業で奉行クラウドに入力し直していました。連携により取引先マスターへの登録が自動化し、作業負荷が無くなりました。
和田 標準連携機能による連携は、セキュリティーをしっかり担保できる点も大きな強みです。管理部門が権限を設定して統合管理しているので、権限のない従業員は使用できません。個別に開発するAPI連携と違って穴を心配せず、各部門が安心して使用できます。
パートナー重視の両社だからこそベストな提携が実現
IT業界では多くのアプリケーションベンダーがクラウドERPの導入によるDX推進を提案しています。奉行クラウドとkintoneの連携の優位性はどこにありますか。和田 kintoneも奉行クラウドも共に完成し、実証された基盤です。「何でもできる」と謳うベンダーもいますが、実際にはつくり込みが必要で、コストもリスクもそこにあるというケースが見られます。我々の連携機能は開発なしで使用でき、かつセキュアです。信頼性が高く、生産性も高い機能を提供しているので、まずは、早く使用してその効果を実感していただきたいと思います。
青野 当社だけでは、DXに取り組む全てのお客様に寄り添うことはできず、パートナーの方々の力が必要です。しかし、パートナーと共にDXを実現していくという思想を持つベンダーはほとんどありません。パートナーを増やし、エコシステムをつくる中で当社のコンポーネントを使ってもらえる相手と組まないと、当社の理想は達成できない。OBCさんはパートナー重視のビジネスを徹底しており、当社もその取り組みを参考にしてきました。今では、両社のパートナーが重なり、今回そこに橋が架かることで世界観が完成に向かおうとしています。その世界観により多くのパートナーの方々も気付いていただきたいです。
和田 両社のビジネスモデルが一致しているので連携が実現しました。私たちが組むことで非常に優れたソリューションが生まれ、パートナーの方々がそれをお客様にお届けして、お客様のDXの強力な推進力になる。まさに三位一体のビジネスが実現します。
両社のパートナーに向けたメッセージをお願いします。
和田 クラウドになっても、パートナー重視のビジネスモデルは変わりません。kintoneとの連携は、より広がりのあるサービスをパートナーの方々を通じてお客様に提供するものであり、生産性を高め、IT業界を活性化する原動力になると大いに期待しています。
青野 パートナーの方々の次の成長につながるよう、しっかりサポートをしていきます。ぜひ、この陸続きになった環境を活用して商圏の拡大に役立ててほしいと思います。

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