Special Issue
AIファーストなコミュニケーションプラットフォームの戦略、画期的な新機能とビジネスを協創するパートナープログラムをZoomのキーマンが語る
2025/01/10 09:00
チャネルファーストのビジネスへ
Zoomは社名を「Zoom Video Communications, Inc.」から「Zoom Communications, Inc.」に変更し、代名詞であるビデオ会議をコミュニケーションプラットフォーマーへと進化を遂げた。現在はコミュニケーション コラボレーション全般を支援し、2024年10月には生成AIアシスタント「Zoom AI Companion 2.0」をソリューション全般に実装したZoom Workplaceを提供して、ZoomはAI時代の働き方を支援する“AIファーストのワークプラットフォーム”へと進化している。それに伴い、パートナープログラムの見直しも始まっている。従来のプログラムは再販モデルであり仕組みもZoom主導で作ってきたが、製品の進化に伴って新たにパートナーの声を吸い上げるボトムアップ型の枠組みを取り入れ、日本からの意見も数多く取り入れられている。
その改革のキーマンが、2024年8月から現職を担うニック氏である。ニック氏は、「パートナーからのフィードバックが何より重要だ。私は現場で時間をかけて皆様の声に耳を傾け、各国の市場のユニークさを理解してチャネルファーストな販売プログラムを作る。日本市場にとって良いものを作るために皆様の声を頂戴したい」と語る。
Zoomは以前からパートナーの声に耳を傾け、2年前に実施したサーベイの結果をもとに改善に取り組み、承認された登録件数(DR)は増え承認にかかる時間も短縮。パートナーの利益率も上がり、日本のパートナー満足度は2年前から23%増加して5点中4.11を記録しているとのこと。ただしニック氏はそれらの成果について十分ではないとの認識で、「さらなる改善を進めていく」と話す。
パートナープログラムに「サービス」を追加予定
まず、パートナープログラムの最適化も2025年5月以降行っていくことを検討している。現在のZoomは複数のポートフォリオを備えたプラットフォーム製品となっており、拡張性も備えている。そしてその際に、生成AIをはじめとする追加機能を無償で使えるというアプローチがユーザーから評価されている。ただ一方で、かつてのミーティングのように直感的に利用することは難しくなり、製品としては専門性が求められる形になっている。そこで新しいパートナープログラムに移行し、新たに「サービス」カテゴリーが追加される。内容は「マネージド」「プロフェッショナル」「カスタマーサクセス」「テクニカル」「サポート」などで、Zoom Phone設定などの認定プログラムも用意する予定だ。サービスで利益を上げられる形を作ることで、「Zoom導入支援を自社のサービスとして展開可能で、インフラに投資をすることで競合他社と差別化できビジネスチャンスが生まれ、単なる再販と比べてビジネスの収益性も上がる」とニック氏はいう。
さらに発注についても、Zoom側がAPIを提供し、メール等で依頼しなくても自社で行えるようにする。
さらに、パートナーの声を受けて協業営業体制も強化し、ダッシュボードを整備して、営業パイプラインを統合管理できるようにしている。
「私たちは日本向けに有用なプラットフォーム製品を提供し、それを販売するためにパートナーをさらに強力にサポートしていく。パートナーの声を聞き共感して、成長するためのビジネスモデルを我々が作り、パートナーの収益性を高めていく。Zoomでは、他社のように米国向けに作ったものを同じように世界で使わせるようなことはしない」(ニック氏)
2020年パンデミック以降も成長を続けるZoom
Partner Connect Japanでは、まずZVC JAPAN 代表取締役会長兼社長の下垣典弘氏が登壇し、「Zoomは現在国民の大多数が使っているプラットフォームになった」と国内での普及状況を説明した。その一方で、需要が一巡したと思われがちであることに対して、「Zoomは日本で成長を続けている。パンデミックを経た2021年以降も毎年ビジネスが伸長し、2024年には約2倍に成長している」と紹介。さらに「もし皆様のZoomビジネスがそうでない場合、我々の動きとご一緒できていない部分があるのではないか。今日のセッションでその答えを見つけてほしい」と会場の参加者に訴えかけた。また下垣会長兼社長は、東京・丸の内の新しいZVC JAPAN東京オフィスに、現在パートナーおよび顧客向けの体験空間となる「Zoom Experience Hub」を用意しているところで、2025年2月に開設する計画であると明かした。
「AI Companion 2.0」が製品戦略の中核に
続いてのセッションには、Zoomの最高製品責任者 スミタ・ハシーム氏が登場し、最新デモを交えてZoomプラットフォームの最新情報について解説した。スミタ氏は、前年からのアップデートとして、3,000件の新機能を追加したと説明。プロダクトとしては主幹サービス全体をリブランディングし2024年3月に「Zoom Workplace」として発表、続いて同年8月にドキュメント作成ツール「Zoom Docs」を発表してきたが、何より大きなインパクトをもたらしているのが同年10月に発表された生成AIアシスタントの「Zoom AI Companion 2.0」であると、改めてその全貌を明らかにした。
「AI Companion 2.0」はZoomの各アプリケーションに組み込まれるパーソナルアシスタント機能で、状況に応じてメールの自動作成、マルチタスク支援、チャット/メール/ビデオ会議内容のリアルタイム要約、緊急なタスクの振り分け、アイデア出しなどを行い、個々の業務をサポートする。
「AI Companionは、これまでのやりとりの履歴を見て個々の従業員が効率的に働けるように支援する。仕事のデータをミーティングから抽出し、チャットの文章から情報収集することもできるし、マイクロソフトやGoogleといったサードパーティのアプリともリンクして、内容を検索して必要な情報を持ってきてくれる。ChatGPTともつながり、Zoomのインターフェースで使うこともできる。AI Companionは、Zoomの製品戦略の中核にある」とスミタ氏は強調する。
AIの性能に関しては、「他社の生成AIと比較して文字起こしのミス発生率を36%、会議の要約のエラーが15%減らすことができた。日本語サポートに関しても、単語エラー率が改善し続けていて4.6%から2.9%に下がっている」と説明。使用するモデルはZoom独自モデルと外部のモデルを統合し多様性を持たせており、「Zoom AI Studio」によってAI Companionの微調整やナレッジベースの追加ができ、カスタム化やパーソナル化も可能となっている。
その結果、「AI Companion 2.0を5年間使った場合、毎年1万2000ドルの付加価値が得られる。1日2時間以上会議に費やしている人は、週に業務時間を6時間削減できる」と、スミタ氏はいう。
Zoom AI Companionで従来製品群の機能も強化
他の製品群にもAI Companion 2.0によって機能が強化されている。クラウド電話サービスの「Zoom Phone」では、ボイスメールからタスクを抽出し、優先順位をつけて確認できるほか、会話の要約を得ることもできるようになっている。チャットボットの「Zoom Virtual Agent」では、AI Companionによって1回のやりとりで問題を解決できるように強化された。コンタクトセンター製品の「Zoom Contact Center」では、コールの内容を要約し、CRMから顧客情報を表示してエージェントに対して次のステップに何をすべきかを示唆するほか、AIが会話の文脈を理解してスムーズに会話を続けられるように応答案を提供するなどの機能を実現し、「エージェントと顧客双方の高い満足度につなげていくことができる」(スミタ氏)という。
営業向けのオンライン商談を強化する会話インテリジェンスソフトウェアの「Zoom Revenue Accelerator」では、AIによるライブ文字起こしや顧客の声のトーン分析によって重要なシーンを可視化し、マネージャーが重要な情報に基づいた意思決定ができるほか、通話の自動採点機能で営業担当者は改善点を把握し、収益性を上げていけるという。
「AIはトランスフォーメーションの触媒になる。ZoomはAIをプラットフォームの中心に組み込んで日々の業務を効率化し、社内やお客様に対して良い成果をもたらすようにする。その際に、Zoom AI Companionが変革の中心になる」(スミタ氏)
新製品と支援プログラムでパートナーの利益率を改善
質疑応答の際に、Zoomのテクノロジー、ソリューションエンジニアリング部門責任者ショーン・ロリン氏は、「Zoomではこれまでカスタマードリブンの形で技術革新を進めてきた。日本語の精度についても改善が進んでいる。自動的な音声認識と音声翻訳まで技能拡張を進め、AI翻訳にも取り組んでいる」と述べた。クロージングには、ZVC JAPAN パートナービジネス本部 執行役員本部長の北原祐司氏が登場。当日の内容を総括して、来場したパートナーに対して改めて協力を訴えた。
「Zoomの製品が豊富になったが、製品を生かしていくためにはどうしてもパートナーの力が必要。パートナープログラムも変わっていて、どんどんZoomビジネスがしやすくなる環境、仕組みができてくる。皆様の製品をZoomに乗せて販売しやすくする仕組みも作るので、利益率も改善される。我々もしっかり支援をしてパートナーの皆様のビジネスを伸ばせるようにするので、皆様も我々の価値を正しく伝えられるようになってほしい」(北原執行役員本部長)
個人部門を新設したパートナーアワード
さらに、本イベント内において、今年度顕著な成果をあげたパートナーを表彰する「Zoom Japan Partner Awards」が発表された。「Most Valuable Partner Award」をNECネッツエスアイ、「Distributor Partner Award」をSB C&S、「Top Reseller Partner Award」を双日テックイノベーションとソフトバンクがそれぞれ受賞。マーケティング活動に特筆すべき成果をあげたパートナーを表彰する「Zoom Marketing Impact Partner Award」は、双日テックイノベーションとブイキューブ、成長率が高かった会社を表彰する「Rising Star Partner Award」は、NTTデータと船井総合研究所が受賞した。次世代AIを活用したビジネスの成長と、成功に向けた戦略を探る
このイベントを通じて、AIファーストなZoomが、これまでの進化を継続しつつ、今後もさらなる発展を遂げていくことが強く印象付けられた。なおZVC JAPANでは、1月23日にはオンラインイベント「働き方改革サミット-日本」を開催する予定だ。AIが企業の競争力強化にどのように役立つか、AIの現状と未来の方向性、AIを採用するための戦略、そして今後の展開に向けての準備について考察できる格好の機会となる。
申し込みはこちら:https://zm.me/4fOAc41
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