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SB C&Sの成長戦略 販売パートナー様とともに日本のIT競争力を向上させる

2024/12/05 09:00

週刊BCN 2024年12月02日vol.2039 第2部掲載

 SB C&Sは、「事業領域の拡大」「ビジネスモデルの進化」「リカーリングモデルの拡大」の三つ成長戦略を柱に、ICT事業、コンシューマ事業、サービス開発事業を展開、13期連続の増益を達成するなど成長を続けている。Value Added Distributor(付加価値提供型ディストリビューター)として、最新のテクノロジーをいち早く使いやすいかたちで届け続けることで、企業のDX推進やAI活用を支援し、日本のIT競争力の向上を目指している。今後、全国約1万3000社のパートナー企業とともにどのような成長曲線を描いていくのか、ICT事業の戦略や取り組みを草川和哉・代表取締役社長兼CEOと永谷博規・取締役専務執行役員兼ICT事業本部長に聞いた。
 
 

“プラスワン”のアプローチ

 SB C&Sグループの2024年3月期の取扱高は7000億円を突破し、今期もビジネスが好調に推移し、営業利益も高い成長率を維持している。成長をけん引するのが法人向けのICT事業だ。年間の見積件数は年間100万件超、見積総額も約6兆円に拡大しているという。
 
草川和哉 代表取締役社長兼CEO

 ソフトバンクのグループ企業として高い成長を期待される同社は「常に成長戦略」、そして「常に構造改革」を掲げている。草川社長は、この取り組みを最大化させる三つの成長戦略に“プラスワン”のアプローチとして「AIによる進化」を挙げる。この部分では、同社の企業文化である「実践」が強みを発揮する。以前からトランザクションの効率化に焦点を当て、AIを組み込むことで成果を出してきたが、さらに強化を図るため、4月に全社の業務フロー改革とAI活用を推進する「スマートオペレーション推進本部」を社長直下に新設立した。

 草川社長は「AIにより当社の生産性を大きく伸ばし、販売パートナー様に対するサービスレベルを向上していく」と力を込める。新しいソリューションの場合、どういった効果があるのか、データ保全やセキュリティーは大丈夫なのかといったことにエンドユーザーは興味を抱く。その中で、実践で得たノウハウや知見を自らの言葉で販売パートナーや、その先のエンドユーザーに伝えられるのは同社の大きな特徴となっている。

ハイブリッドでAI活用を支援

 法人向けのICT事業は、同社の目利きのプロが世界中のメーカーの商材を見つけ、使いやすい仕組みやかたちにして、販売パートナーを通じて全国のエンドユーザーに届けている。永谷取締役は「現在の仕入れ先は4000社以上に拡大した。単に製品を仕入れて卸すだけではなく、Value Added Distributorとして、ときにはメーカーのような立ち位置でも活動するなど、独自の付加価値を提供している」と強調する。さらに、AIやクラウド、セキュリティーなど各領域をプラットフォーム事業に進化させることで、販売パートナーがこれまで以上に売りやすく、エンドユーザーが利用しやすいかたちに進化させている。
 
永谷博規 取締役 専務執行役員兼ICT事業本部長

 注力領域として、取り組みを強化しているのがAIビジネスだ。生成AIの登場以降、AIの活用を目指す企業や組織が増加し、利用形態もオンプレミスとクラウドのハイブリッド化が進んでいる。オンプレミスでのAI利用に関する製品では、昨年からGPUサーバーの供給に力を入れており大きな実績が生まれている。

 草川社長は「現時点でのGPU搭載サーバーの引き合いは、クラウドサービス事業者やデータセンター事業者、あるいは研究機関におけるAI基盤の構築用途が大半を占めている。今後は一般企業における需要も拡大していくだろう」と分析する。

 AIビジネスを拡大させるため、GPUに加えて、仮想化ハイパーバイザーやネットワーク、ストレージ、クラウドサービス、ファシリティー、セキュリティーといった周辺ソリューションを包括的に提供する「AIアラウンド戦略」を推進する。専任チームのエンジニアリソースも拡大し、販売パートナー様に対する充実した技術支援にも注力しており、「製品から技術まで全てをワンストップで提供できる体制を整えている」と自信を見せる。

 クラウドAI利用の需要に対しては、米Microsoft(マイクロソフト)の「Azure OpenAI Service」の販売に力を入れる。永谷取締役は「当社のビジネスにおいて、最も重要なパートナーシップの一つ」とし、両社が強固なアライアンス関係であることを強調。SB C&S社内には、多くのマイクロソフト製品のプロフェッショナルが在籍しており、Azure OpenAI Serviceに関する全国ロードショーなどの施策を行うことで、同製品を扱うパートナーも大幅に拡大しているという。

重要度が増すセキュリティーを強化

 もう一つの注力領域がセキュリティーだ。ランサムウェアをはじめとするサイバー攻撃が多くの企業や組織に甚大な被害をもたらしている。さらに生成AIを活用した攻撃も出てくるなど、巧妙化を続けるサイバー攻撃へのセキュリティー対策強化は、事業成長の観点から経営課題として取り組まなければならない状況にある。

 企業のセキュリティー強化のため、同社は、目利き力を生かし、グローバルトレンドのセキュリティーソリューションの取り扱いを拡大させている。セキュリティーの場合、製品が多岐に渡っていたり、新しいソリューションが常に生まれたりするため、提案に難しさに感じる販売パートナーも少なくない。それに対応しようと、同社は「セキュリティ製品ソムリエ」と呼ばれる専門チームを設けて、取り扱うセキュリティー製品を組み合わせたソリューション提供や、製品比較をはじめとした情報提供などを通じて販売パートナーをサポートしている。

 このほかにも、リカーリング商材の利益の約2割を占め「経営を安定させる重要なファクター」(永谷取締役)となっている通信事業の強化も図り、「流通事業×通信事業」としてソフトバンクのグループ企業の強みを発揮していく考えだ。

 永谷取締役は「われわれはメーカーではなく、基本的には、お客様に直接販売する立ち位置でもない。コアになるのは人やサービス、そして、信頼関係で成り立っているビジネスだ」と語る。同社は事業ビジョン「繋ぐ~テクノロジーのチカラで、ワクワクする未来へ~」を掲げている。メーカーと販売パートナー、エンドユーザーをつなぎ、最新のトレンドをいち早く届けることで、企業のAI活用やDXの推進を支援し、日本全体のIT競争力の向上を目指す。
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外部リンク

SB C&S=https://cas.softbank.jp/