Special Issue
週刊BCN 特別連載企画<第14回> DISのエキスパートに聞く 日本のIT利活用の実態は
2024/11/28 09:00
週刊BCN 2024年11月25日vol.2038掲載
富山エリア
サッシ企業などでスマートファクトリー化 行政サービスや観光客向けも積極的
拠点エリア 北陸エリア拠点データ 富山支店
住所:富山県富山市宝町1-3-10(明治安田生命富山ビル6F)
電話番号:076-444-1260
富山県は、古くから北海道と大阪を結ぶ海上交通である「北前船」の寄港地として栄えました。富山市内を走る路面電車は、札幌市のモデルになったといわれています。2015年に北陸新幹線が開通し、首都圏からのアクセスは最短約2時間と抜群です。立山連峰を中心とした北アルプスを貫く山岳観光の「立山黒部アルペンルート」の出発地、また3000メートル級の難易度の高い登山ツアー、富山湾で取れる新鮮な魚を使った寿司を中心とした豊富な海鮮グルメなど、さまざまな魅力があり、国内外からの多くの観光客でにぎわっています。
富山市では、観光客の増加を受け大型ホテルの建設ラッシュなど、新規開発が続いています。22年春にはJR富山駅前に大型複合施設がオープン。25年秋には総曲輪エリアにも同様の複合施設が予定され、地域は活気づいています。
中心都市である富山市では、特に富山駅周辺で地元自治体が「スモールコンパクトシティー」の推進を掲げており、デジタルサイネージなど、行政サービスや観光客向けのIT化が早くから進んでいます。今後は、さらに「カーボンニュートラルシティー」を目指すとしており、産学官連携でITを活用した地方創生を進めています。
産業の中心は製造業で、伝統的に金属製品の製造が盛んです。業績好調な企業が多く、IT投資の意欲がとても高いです。県内の金属加工を行う中小企業が、製造ラインにIoTセンサーを導入し、稼働状態をモニタリングして生産効率を20%向上させているほか、代表的なサッシ企業もスマートファクトリー化を実現しています。
地方共通の課題として、富山県も人口減少が見込まれ、若年層の流出に悩んでいます。ITの活用で雇用を生み出せれば、明るいトピックも出てくるのではないでしょうか。基幹産業である製造業を継続して盛り上げていくこと、それによって雇用を維持していくことにITが貢献できると考えています。また、年配者の暮らしを支えるITサービスが浸透していってほしいと願っています。
京都エリア
製造業大手から中小企業に波及 新規事業に向けた投資も柔軟に
拠点エリア 関西エリア拠点データ 京都支店
住所:京都府京都市中京区烏丸通二条下る秋野々町513(京都第一生命泉屋ビル2F)
電話番号:075-253-0170
京都府は日本列島のほぼ中心に位置し、平安時代に都が移されて以降、日本の政治、経済、文化の中心として発展してきました。南北に伸びた地形の中央に位置する丹波山地を境に、北は日本海に面し、南側は盆地が広がります。北部では舞鶴湾や栗田湾といった良好な漁場があり、アカアマダイやズワイガニの産地として有名です。南部は茶の生産が盛んで、特に「宇治茶」はブランド茶の一つとして全国に知られています。京都市や宇治市は多数の歴史的建造物を有し、大勢の観光客が訪れ、近年はインバウンド人気も非常に高まっています。
製造業が強いのも特徴の一つです。電子部品や精密モーター、ゲームなどハイテクな分野でグローバルトップクラスの企業がそろっています。そのため、IT活用も製造業を中心とした大企業が先行しているようです。例えば、大手電子部品メーカーでは、スマートファクトリー化を推進しており、ロボット、IoT、AIなどの新たな技術を活用し、生産性や品質の向上などに取り組んでいると聞きます。
大企業を模範とし、デジタル化を目指す動きが中小企業にも波及している雰囲気もあります。現時点ではPCの最新機種へのリプレースやクラウドを使ったバックアップの冗長化など、身近なところからスタートしていますが、肌感覚では、新しいビジネスを始めるためのIT投資を柔軟に検討する企業も増えてきた印象があります。京都市と京都府中小企業団体中央会が2020年度からデジタル化やDXを進める企業を対象とした支援事業を展開し、これまでに600を超える企業や団体を手助けするなど、公的なバックアップも力強いです。
近年では観光領域でもDXに取り組む事業者が増え、増え続ける観光客だけでなく、市民の利便性向上にも役立っています。大学などの高等教育機関が多い地域であることから、学生らによるITスタートアップの起業も活発です。幅広い取り組みを通じてエリア全体の活性化につながることを期待しています。
愛媛エリア
養殖業で先進的な取り組みが進む 女性に焦点を当てたプロジェクトも
拠点エリア 四国エリア拠点データ 松山支店
住所:愛媛県松山市三番町7-1-21(ジブラルタ生命松山ビル7F)
電話番号:089-947-6379
愛媛県は、四国地方の北西部に位置し、歴史と自然が融合した魅力的な地域です。名所については、日本最古の温泉とされる道後温泉があるほか、現存12天守の松山城が挙げられ、宇和島城や今治城の歴史的価値も注目されています。名物に関しては、ミカンや今治タオル、じゃこ天が全国的に有名です。
産業は多様で、地域ごとに特色があります。東予地域は、製紙・紙加工業(四国中央市)や非鉄金属・化学工業(新居浜市)、造船業(今治市)が盛んです。中予地域は、商業・観光業(松山市)や化学工業が中心となり、南予地域は、農業・漁業(八幡浜市、宇和島市)や水産加工業が発展しています。
IT活用では、マダイをはじめとする魚の養殖業で先進的な動きがあります。愛媛県は魚類養殖の生産量は全国1位となっていますが、後継者不足などの課題を抱えています。そのため、愛媛県が中心となってデジタル技術の実装を目指しており、給餌や漁獲量の推定にAIを用いたり、海上のWi-Fiエリアを拡大したりといった取り組みが進められています。
また、デジタル分野で活躍する女性の育成と多様な働き方の実現を目的とする愛媛県とコンソーシアムによる「愛媛でじたる女子プロジェクト」も特徴的な例となっています。同プロジェクトでは、eラーニングを通じてニーズの高いIT関連スキルの習得機会を提供しているほか、修了生同士のコミュニティーの形成やキャリアアップをサポートしています。
自治体は積極的にITの導入や人材育成などを支援していますが、若年層の県外流出による人手不足は依然として大きな課題となっています。四国最大の市場を抱える愛媛県が今後も発展していくためには、ITによって企業の経営を効率化したり、技術を持った人を定着させたりすることが重要になるでしょう。愛媛県には大きなポテンシャルがあるので、ほかの地域にはない魅力を国内外にさらに発信していくことが必要だと考えています。
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