Special Issue
Zoom パートナー向けハイブリッドイベントを開催 生成AIで進化したUCaaS基盤でビジネスは新たなフェーズへ
2024/11/26 09:00
進化したZoom AI Companionが明らかに
Zoomtopiaは世界で開催されるZoom Video Communications(Zoom)の年次イベントだ。日本では「Zoomtopia Japan Virtual 2024」「Zoomtopia Partner Connect 2024 - Japan Virtual」がオンラインで開催された。今年のZoomtopiaで最も注目されたトピックは、Zoomプラットフォームに対する生成AIの適用である。従来の製品群を「Zoom Workplace」へとリブランディングし、統合コラボレーション基盤として機能拡張を続ける中で、それぞれのサービスに生成AIアシスタント「Zoom AI Companion」が搭載され、有償ライセンスの範囲内で使用できるようになったのだ。
冒頭のキーノートでエリック・ユアン創業者兼CEOは「Zoomは進化して、AIファーストのワークプラットフォームになった」と述べつつ、同社が実現する働き方の未来像を語った。
「朝、Zoom Workplaceを開くとカレンダーに10個会議が設定されていて、たくさんのメールやチャットが届き、返信もしなければならないとする。その際にZoom AI Companionがパーソナルアシスタントとなって内容を分析し、『参加する必要がある会議は2つで、重要な意思決定のブレストは1件』と提示し、同様にメールやチャットの内容も要約、返信文も提案してくれるようになる」
このような未来を実現するための新機能として、ZoomtopiaではZoom AI Companionの進化版「Zoom AI Companion 2.0」が発表された。Zoom AI Companion 2.0では生成AI機能をZoom Workplaceのサイドパネルで利用できるようになり、ユーザーがZoom Workplace内で閲覧したコンテンツや過去の会話から文脈を理解し、利用者を支援するための回答や提案を行うのだ。その際のデータソースとして、マイクロソフトやGoogleのビジネスアプリやWebの情報も活用できるようになっている。
パートナープログラムもアップデート
ZoomのサービスがAIファーストなコラボレーションプラットフォームへと進化したことに伴い、グローバルでパートナープログラムもアップデートされた。ZVC JAPAN パートナービジネス本部 北原祐司執行役員 本部長は「Zoom Phoneに加え、Zoom Contact Center、Workvivoといった新しい製品の販売とトレーニングがスタートし、パートナーの支援がより必要な製品に進化している」と説明する。グローバルでは「パートナーアドバイザリーカウンセル」という、パートナーから直接意見を聞く機会を設けており、今年は日本からも5社が参加している。また商材の増加によって、新たに別種のプロダクトファミリーであれば1カスタマーに対し複数のパートナーが製品を提案できるようになった。パートナーレベルも3段階に分けられ、レベルが上がるほどより多くのベネフィットが得られる設計になっている。
コラボレーションと働き方改革の新時代をアイ・ティ・アールが解説
午後のセッションでは「日本市場におけるZoomの未来:コラボレーションと働き方改革の新時代」と題し、アイ・ティ・アール 舘野真人プリンシパル・アナリストが登壇。北原本部長を聞き手として、UCaaS(ユニファイド・コミュニケーション・アズ・ア・サービス)の動向と今後の働き方について考察しつつ、Zoomが提供できる価値や具体的なサービスに言及した。舘野アナリストはホワイトワーカーの働き方について「現在はオフィス回帰が進んでいるが、今もフルリモートワーカーは一定数存在し、今後定着していくだろう。オフィスでもフリーアドレス化が進み、コラボレーション状況も変わってきている」と説明する。そして「これからはオンラインとリアルが混然一体となった働き方に移行するため、個人の意思で自宅か会社かを選び、社内でも集中スペースや会議室など場所を選択できるハイブリッドワークに向かっていく」と分析した。
その際に企業では、従業員同士のコラボレーションについて考える必要がある。舘野アナリストは重要ポイントとして、(1)デジタルコミュニケーション基盤のアップデート、(2)オフィス環境の最適化、(3)従業員エンゲージメント向上、の3点を挙げる。そして、一方のワーカー側には、ツールへの対応よりもマインドの変化が求められ、特にマネージャーの意識改革が必要だという。
「そもそも日本のマネージャーには、コラボレーションしたくない人が多い。例えば、コラボレーションを行うとマネージャーは何百通届くメールの中から重要な情報を拾い、自ら解釈して部下に指示を出す必要が出てくる。しかし従来は部下に情報を要約させてきたため、マネージャーは自ら精査することに慣れていない。とは言え時代は変化しており、コラボレーションを組織的に定着させる必要がある」(舘野アナリスト)
UCaaS+AIアシストがもたらす新時代の働き方
こういったポイントを踏まえた上で舘野アナリストは、「(1)デジタルコミュニケーション基盤のアップデート」に関しては非同期型コミュニケーションの活用がカギになると言う。「今はまだ、大量のビデオ会議に拘束されて生産性が下がっている状態だ。単に同意を取るだけの目的で30分の時間がとられてしまう状況なので、それを是正するには、メールやチャットといった即時の返答が不要な非同期型コミュニケーションツールをいかに使いこなすかが重要になる」(舘野アナリスト)
これの有効な解決策は、コミュニケーション時にチャットとWebを使い分けるルールの策定だ。例えばある企業では、チャットで4往復したらそれ以降はWeb会議に移行するというルールを定めている。それを踏まえて舘野アナリストは「プロダクトだけでなく、コミュニケーションスタイルを含めて提案すべき。そのほうがユーザー企業には価値を感じてもらえる」とイベント参加者に提言した。
そこでクローズアップされるのがUCaaSだが、その導入にはまだ課題がある。第一に、複数のサービスを購入して自社環境を構築することが難しい。そして「単にワンウインドウで使えるようにするだけではなく、ビデオ会話の中身やメールの内容、スケジュールのコンテクストを裏側でAIが読み込み、ほかの方法で行ったコミュニケーションが別のシーンに連携する世界観を実現していかなくてはならない」(舘野アナリスト)という、UCaaSの本質的部分をいかに実現するかという課題がある。
それはまさに、キーノートでユアンCEOが語った次世代の働き方と同義だ。Zoomのサービスでは、ビデオ会議からチャット、電話、ドキュメント、社内SNSといったコラボレーションワークからタスク管理までの機能がそろい、すでにワンウインドウ化と機能連携が実現されている。さらにそれらの情報がつながり、今回進化したAIアシスタントによって横串で分析し最適解を回答する仕組みが備わったため、本質的なUCaaSが実現できるようになった。
ABWとワークプレイス管理でオフィス環境を最適化
「(2)オフィス環境の最適化」に関しては、働く場所を目的に応じて10種類のタイプに分ける「ABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)」が提示された。ABWを採用すれば、オフィスを効率的に使えるようになり、さらに「自分は今何をしているか」を常に社員へ意識させ、労働生産性の向上を見込める。その際に重要なのがワークプレイス管理だ。環境を整備しても、従業員が使いたい時に使えないと意味がない。必要な機能としては、予約、来客者の受付、設備や会議室の稼働率管理、電力管理などが挙げられる。それらの機能はすでに提供されているが、「今まではコロナ対応に寄りすぎていた。本来はコラボレーションによって組織のレベルを高めていくためのものであり、IT業界もそこをアピールするべき」と舘野アナリストは提言する。
そこに関してZoomでは、オフィスに仲間がいる時間をAI Companionが把握して、オフィスに行くべき日を提案したり最適なミーティングルームを勧めたりして、メンバー間調整やコラボレーションを容易にする機能を提供している。
「(3)従業員エンゲージメント向上」については、「活動の目的」「価値観」「ビジネスの概況」を共有することが重要だ。「組織が何のために仕事をしているかを理解させ、望ましい行動をしている社員をしっかり評価する必要がある。周辺の事象を共有することでコラボレーションの土台ができ、業務スキルも上がりエンゲージメントにつながる」と舘野アナリストは説明する。
また中途採用やリモートワーカーの採用が増える中、早期戦力化という意味合いも含めて「オンボーディング」や「社員教育」、さらには従業員の興味関心・経験を吸い上げる視点も重要である。
舘野アナリストが思い描くコミュニケーションの未来像は「伝えずとも伝わっている世界」だという。「今は指示と報告がコミュニケーションの9割を占めているが、今後は仕事の結果だけでなく、プロセスや進め方も共有されるようになる。それが進むと、思考のレベルから共有していく世界観になるだろう」(舘野アナリスト)
必要なものはすべてZoomの中にある
舘野アナリストの話を受けて北原本部長は「必要とされるそれぞれのサービスは、すでにZoomの中に入っている」とアピールする。さらに、「これからお客様にZoomを提案する際には、UCaaS全般の中でお客様がどの位置の・どのようなことを実現したいのかを考えることが重要になる」と話を紐づけた。最後に北原本部長は「コラボレーション市場規模は世界で45兆円あり、日本市場はこれからさらに成長する」と説明し、「Zoomはプラットフォーム化しているので、今後はAPIを通じて使用していただくことになる。その上でコミュニケーションを改善するためのコンサル的な要素と、それに基づくカスタマイズが入る形となるため、今まで以上にパートナーの支援が欠かせない。各社と協業を進めながら、さまざまなお客様に我々のサービスを提供していきたい」と参加者に訴えた。
また、今後も販売パートナーとのエンゲージを高める活動を継続して予定しており、Zoomtopia Japan Virtual 2024で発表された、働き方改革を推進させるZoomの最新テクノロジーやお客様事例は、現在オンデマンドで視聴が可能となっている。
Zoomtopia Japan Virtual アーカイブ視聴はこちら
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