Special Issue
週刊BCN 特別連載企画<第13回> DISのエキスパートに聞く 日本のIT利活用の実態は
2024/10/31 09:00
週刊BCN 2024年10月28日vol.2035掲載
神奈川エリア
自動車中心にデジタルを積極活用 公共・文教でも取り組み進む
拠点エリア 関東エリア拠点データ 横浜第1・第2支店
住所:神奈川県横浜市神奈川区金港町1-4(横浜イーストスクエア4F)
電話番号:045-440-5615(横浜第1支店)
:045-440-5637(横浜第2支店)
神奈川県は関東南部に位置し、面積は2416.32平方キロメートルで、全国の都道府県で43番目の大きさとなる一方、人口は全国2位の約923万人と、コンパクトなエリアに人口が密集している点が特徴です。観光や商業の中心地として栄える横浜市や、京浜工業地帯を擁する川崎市といった都市部のほか、寺社や歴史的な建造物を多く抱える鎌倉市、海水浴やマリンスポーツで有名な湘南地区、豊かな森林が広がる相模原市、相模湾の幸で知られる小田原市など、各地域が独自の個性を有しています。
産業については、製造業が県内総生産のおよそ2割を占めており、自動車産業では、横浜に大手の本社が立地するほか、川崎周辺では化学製品、合成樹脂、機能性材料、非鉄金属など幅広い領域でグローバルに活躍する企業が集積しています。IT企業やスタートアップ企業も集まっており、情報通信業も盛んです。
IT活用については、やはり製造業が先進的に取り入れている印象です。特に自動車ではAIやIoT技術を積極的に導入し、生産効率や品質の向上を目指しています。また、自動運転技術の研究開発に注力し、デジタルツインやクラウドベースのデータ解析を活用することで最適な運行ルートの確保や安全性向上を図っています。
公共、文教系では自治体や大学が積極的にIT活用の取り組みを進めています。自治体のパートナーにおいては、教育委員会に対してITデバイスやインフラを整備するだけでなく、3Dメタバースを活用した教育支援を展開する動きなどもあります。
ただ、デジタル人材の不足は、ほかの地域と同様に課題となっており、2024年度には神奈川県と県内市町が、民間のオンライン学習サービスを共同で調達し、職員の育成に着手するなど、対策が広がっています。官民問わず人材面での取り組みは待ったなしの状況であり、私たちも協力できる部分で、貢献したいです。
静岡エリア
大手製造業で投資が活発化 クラウドサービスの利用が拡大
拠点エリア 中部エリア拠点データ 静岡支店
住所:静岡県静岡市駿河区南町18-1 サウスポット静岡16F
電話番号:054-202-0325
静岡県の中部・東部エリアは、富士山や温泉が有名な伊豆半島といった観光地が豊富で、駿河湾や相模湾で捕れる海産物、みかんなど多数の特産品があります。東海道新幹線の停車駅が多く、東京都など大都市へのアクセスが容易なのも魅力です。
産業は製造業が盛んな地域であり、自動車部品の製造や組み立て、電子機器や精密機械などの工場が地域経済を支えています。大手製造業は、DXの取り組みに注力しており、社屋や工場を中心にITインフラ基盤の刷新、生成AIの利活用、産業用ロボットの導入・開発に活発に投資しています。一方、中小の製造業は、昔からの慣習から抜け出せず、IT活用が進まないという声が少なくないのが現状です。
豊かな自然を生かした観光も重要な産業です。しかし、新型コロナウイルスの影響を強く受けたことで、まだ完全に元に戻ったとはいえない状況のため、観光業界でのIT投資はこれからといった印象を受けています。
民間企業では、SaaSを中心にクラウドサービスの利用が拡大しています。生成AIに興味を持つ企業が増えていますが、本格的な利活用まで取り組めているケースは多くありません。慎重に見極める傾向が強い県民性なのか、事例が出てくると、利用する企業は増えていくのではないかと思います。
積極的にDXを推進する自治体が出てきています。例えば、御殿場市では、いち早くリモートワーク環境を整備し、さらに住民サービスの充実を目指したIT活用に取り組んでいます。富士宮市や沼津市などでも同様の動きが見られます。地域企業への支援では、静岡県のデジタル戦略局を中心に「ICTエキスパート派遣事業」を行っており、ITの利活用や助成金に関するアドバイスを行っています。
県内に本社を構える有力なIT企業が複数あることもあり、地元で就職する人が多い傾向が見受けられますが、全体的にはIT人材が不足しています。県内の大学では、データサイエンティストなどの人材育成が図られているので、こういった取り組みがより広がることを期待します。
大分エリア
地元のIT企業によるユニークな動き 自治体は伴走型のモデル創出に取り組む
拠点エリア 九州エリア拠点データ 大分支店
住所:大分県大分市東春日町17-20 大分第2ソフィアプラザビル5F
電話番号:097-538-9230
大分県は、湧出量日本一を誇る別府温泉や、高級旅館が立ち並ぶ湯布院温泉を中心に、各地に温泉郷を抱える全国有数の温泉観光県です。ほかにもさまざまな魅力があり、例えば、「関サバ」「関アジ」といった海産物に加え、「とり天」「中津&宇佐唐揚げ」といった鶏肉料理が有名です。
産業は、特に製造業の割合が大きく、鉄鋼や石油、化学、半導体、電気、自動車、精密機器など、幅広い分野の産業がバランスよく集積しています。製造品等出荷額と1人当たり県民所得は、福岡県に次いで九州2位となっています。また、耕地面積の約70%が中山間地域に位置する地形的条件を生かし、米、野菜、果樹、園芸作物の生産や肉用牛の飼育が盛んです。
IT活用は、全体としてはこれからといったところですが、地元のIT企業が、銀行とタッグを組んで中小企業のDXを推進したり、グローバル規模のメーカーと一緒に拠点を開設したりとユニークな動きが見られます。大分県ならではの事例としては、過疎地域の学校の通学バスを対象に、クラウドサービスを活用して運行状況を見える化した取り組みが挙げられます。
民間企業だけでなく、自治体もDXに向けて注力しています。大分県は、DX推進戦略を策定し、暮らし、産業、行政、推進基盤の観点で具体的な方向性を示しています。伴走型のモデル創出を目指しているのも特徴で、大分県内の事業者とパートナー事業者との共創でDXを推進しようとしています。
大分県では、高校から大学に進学する際、若者が県外に流出し、戻ってこないことによる人手不足が大きな課題となっていますが、企業や自治体は手をこまねいているわけではありません。U・Iターンを狙う地元の企業は、新社屋を建設するなどして人材を迎える体制を整えています。大分県の支援を受けたITスタートアップが着実に生まれている状況もあるので、こうした流れが活発化することで、地域の活力向上につながるのではないかとみています。
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