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シュナイダーエレクトリック 40年間にわたる技術革新がトップレベルシェアを支える

2024/10/03 09:00

週刊BCN 2024年09月30日vol.2031掲載

 APCは40年にわたり電力供給やITインフラの領域で事業を展開しており、特にシングルフェイズUPSにおいては国内外で長年トップレベルの市場シェアを維持している。その圧倒的な強みを支えているのが絶え間ない技術革新の歴史だ。シュナイダーエレクトリックのセキュアパワー事業部で、シングルフェイズUPSをはじめとした製品カテゴリーの責任者を務める、ジャン・バプティステ・プラグネ氏とパラヴィ・カルカダ・スリニヴァサ氏に、APCブランドのUPSの軌跡と、革新を続けていく哲学、そして日本におけるパートナープログラムについて聞いた。
 
右から セキュアーパワー事業部
トランザクショナル&エッジ製品カテゴリー
バイスプレジデント
ジャン・バプティステ・プラグネ氏

セキュアーパワー事業部
ホーム&ビジネスネットワーク(HBN)製品カテゴリー
バイスプレジデント
パラヴィ・カルカダ・スリニヴァサ氏


シュナイダーエレクトリックのビジネスの約2割を占めるデータセンタービジネス

 1984年、APCは初めてシングルフェイズのUPSを発売した。以降も同社はITインフラ業界で革新を起こし続け、シュナイダーエレクトリックグループに加わった後も同名のブランドとして展開されている。
 

 シュナイダーエレクトリックは自動化、デジタル化、電化(電気の活用による効率化)で高い専門性を有し、近年では製造業のスマート化やインフラのレジリエント向上などに注力している。その中でもITインフラ(データセンター)ビジネスは同社のビジネスの約2割を占め、APCは戦略的ブランドの一つだ。

 直近では米NVIDIA(エヌビディア)と協力し、AIの運用に最適化したデータセンターリファレンスアーキテクチャーを発表した。AIの導入を支えるITインフラ環境へフォーカスしていくとともに、そのAIを活用してクラウドデータセンターからオンプレミスにわたるハイブリッドITの運用効率化を提供していく考えだ。

 シュナイダーエレクトリックが掲げるパーパス「Life Is On」についてプラグネ氏は「全ての人がエネルギーと資源を最大限に活用できるようにすること、また進歩と持続可能性への橋渡しとなること、そうしたインパクトをつくり出していくことが、われわれのミッションだ。特に効率性と持続可能性において信頼されるパートナーとして活動していきたい」と、その意図を説明する。
 

40年の間にさまざまな業界初を達成し、歴史を塗り替えてきた

 「製品の信頼性はもちろんのこと、持続可能性にも非常に注力している」とスリニヴァサ氏は説明する。持続可能性にフォーカスした製品であることを示すグリーンプレミアムラベルがほとんどの製品についているのがその証左だ。また国際的な省エネルギー型電気製品へ付与されるエナジースターにも早期から適合している。
 

 APCの変遷は革新の歴史でもある。80年代に電力技術者がAPCを設立してUPSの提供を始め、世界に大きなインパクトを与えた。その後もAPCは改良を続け、業界初となる製品を次々と発表してきている。

 例えば90年代には世界初のユーザーによる交換が可能なバッテリー製品を発表している。続いてバッテリーの消耗を可視化するなどインテリジェントなバッテリー管理ができるソフトウェアを開発し、Webからの管理が可能なUPSを世界に先駆けて発表した。

 エナジースターの認証を受けたのは2000年代のことである。実はこれも、UPSとしての認証取得は世界第1号だ。新しい素材の活用にも積極的で、10年代にはリチウムイオンバッテリーのUPSへの搭載を世界で初めて達成した。

 そういった歴史の中で一貫しているのが、効率化やデジタル化のための技術革新だ。そしてそれは持続可能性の実現にもつながっている。持続可能な社会でないとビジネスの継続は難しいことは明らかで、ITインフラもエネルギー消費の一端を担っている以上、効率化は必須の課題だからだ。こうした効率化の努力の結実として挙げられるのが、00年代からのエナジースター認証である。

 もう一つのデジタル化については、先述したようなバッテリー管理のためのソフトウェアやWebからの管理などが該当するだろう。現在それはサイバーセキュリティーのリスクに対応する製品の開発へと発展している。

製品の設計段階から持続可能性を考慮し、サプライチェーンにも責任を持つ

 「40年という長い時間の中では、ITインフラの環境やユーザーが必要とするものは変化し、私たちが行うべきことも変わってきた。持続可能性、効率化、電化、それのどれもが刻々と進歩を続けているため、私たちはその先を行く製品を提供していかなくてはならない」とスリニヴァサ氏は話す。

 例えば、UPSで第一に求められることはノイズがない電力のコンスタントかつ安定的な供給だが、近年ではそれに加え電力密度も重要視されている。その背景にあるのは近年進むAI活用と、それによるサーバーの消費電力増加だ。この要求に対し同社では、従来と比べて筐体サイズを半分に抑え、電力容量は2.5倍以上に増加した、リチウムイオンバッテリー搭載の高密度な製品によって応えている。

 持続可能性についての取り組みとしては、どの原料が製品のどこに使われてどのようにリサイクルが可能かを、製品の設計や開発の段階から考慮していることが挙げられる。また、サプライチェーン全体にわたる持続可能性について責任を持って取り組んでいるのも同社の特徴だ。サプライヤーやパートナーも含め、あらゆる場面で温暖化ガスの排出量削減を目指している。

 これら持続可能性の取り組みへ有効に働いてくるのがリチウムイオンバッテリーだ。鉛バッテリーより長持ちするため、経済的であるだけでなく、交換回数が減ることで廃棄部品削減にもつながる。「リチウムイオンバッテリーは環境負荷が鉛バッテリーよりも小さいが、私たちはこれで満足はしない。さらなる持続可能性の実現を考え、次なるバッテリーの開発に投資している。リチウムイオンバッテリーを超えるものを生み出すのは非常に困難なことではあるが、私たちはあらゆる努力を惜しまない」とスリニヴァサ氏は力強く話す。

パートナープログラムやトレーニングの提供、アワードの開催で持続可能性を追求

 同社はパートナーとの関係構築にも重きを置いている。「持続可能性は私たちのカルチャーであり、哲学であり、ミッションだ。パートナーエコシステムを通じてパートナーが持続可能性を実現できるようにサポートしていく」とプラグネ氏は話す。

 具体的な施策をいくつか挙げていこう。まず1点目はパートナープログラム「mySchneider」だ。パートナー限定のWebサイトでは最新の製品情報、そして持続可能を実現するためのテクニックやテクノロジーなどの情報を閲覧できる。

 2点目はアドバイザリーボードだ。シュナイダーエレクトリックでは定期的に世界各地を巡回し、顧客からのフィードバックを収集している。直近では8月下旬に日本で実施した。「日本は他国に比べてAPC製品のビジネスが大きく、また新技術の受容が早い市場でもあるため、戦略的に重要な地域だ」とプラグネ氏は言う。

 3点目は、顧客やパートナーならWebから自由に参加できるトレーニング「シュナイダーエレクトリック サステナビリティスクール」だ。持続可能性とは何かから始まり、持続可能性を実現するためのツールやソリューション、どのように実現していくかの専門的なノウハウなどを学ぶことができる。

 最後の4点目は「サステナビリティインパクトアワード」。持続可能性に貢献している顧客やパートナーを表彰するもので、今年で3回目となる。このように多種多様なサポートを通して、シュナイダーエレクトリックはパートナーとともに持続可能性の実現に努めている。

電力に関する課題解決の解決へ挑み、さらなるイノベーションを目指す

 AIをはじめとしたITシステムの多くは大量の電力を消費するため、電力の制御や管理をより効率的に行う必要がある。シュナイダーエレクトリックとしても日進月歩でイノベーションを続けて、より良い製品の提供を目指していく構えだ。

 また近年では、どの手段で発電した電力なのかという、電力源への関心も高まっている。「電力を配電する場面で、複数の電力源から供給された電力をどう管理していくか。この大きな課題に対しても果敢に挑み、開発を進めていきたい」とスリニヴァサ氏は語る。

 プロダクトポートフォリオを常に維持し、イノベーションを加速し続けることで、市場やユーザーに大きなインパクトを与えていくには、パートナーエコシステムを通じて持続可能性を働きかけていくことが必要だ。しかし、単に持続可能性を訴求するのでは響いてこない。「だからこそ、まずは効率的な製品や新技術を導入することの意義や、レジリエンスの重要性から訴え、そこから結果として持続可能性へとつなげていく。そうした取り組みを地道に進めることが未来への一歩につながるのだ」とプラグネ氏は語った。
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