Special Issue

パブリックX 自治体DXの推進は脱プロダクトアウト型で社会課題から入り官民共創の取り組みへ

2024/10/03 09:00

週刊BCN 2024年09月30日vol.2031掲載

 セミナー初日の基調講演にはパブリック X 代表取締役の藤井哲也氏が登壇し、「脱プロダクトアウトの自治体DX」と題して自治体DXビジネスへの向き合い方を説いた。

パブリックX 代表取締役社長 藤井哲也氏

 冒頭で藤井氏は、自治体DXには住民サービスや内部の業務効率化などを目的とした「行政のDX」と、地域の課題解決を図るための「地域社会のDX」の2種類があると説明した。特に後者では、自治体の職員や予算が削減される中で、第一次産業や防災、医療・福祉などの「準公共分野」で民間と役割分担し、デジタルによって課題解決を図ろうとする動きが加速しており、自治体DX自体が大きな市場になっている。

 民間企業が自治体DXビジネスに参入する際に考慮すべきポイントは「自治体DXはパブリックのトランスフォーメーションなのか」「行政や地域が抱えている課題から議論をスタートする」「行政との受発注関係にこだわらない」の3点だ。

 「自治体側は支援を受ける民間企業の見極めに苦慮しているため、企業側が自治体と組みやすいように変わっていく必要がある」と藤井氏は語った。例えば入り口のアプローチは、自社や製品をアピールする「プロダクトアウト型」ではなく、行政や地域が抱える社会課題を解決する「提案型」としなくてはならない。「多くの自治体が課題をオープンにしているので、それを基に議論を始めればよい」と藤井氏は助言した。

 従来型の受発注ではスピード感を持った変革につなげられないため、自治体DXの推進にあたっては「実証実験」というかたちを藤井氏は提案した。多くの場合はコスト持ち出しのリスクを伴うが、自治体と共同開発したサービスは横展開しやすい。「政策目的随意契約」制度を運用している自治体もあるため、成果を出せばそのまま導入につながる場合もあるという。

 社会課題から議論をスタートさせる際には、課題を構造として捉える「システムシンキング」手法が有効だ。官民の俯瞰的な視点でデジタルを活用した課題解決策を考え、住民の利便性向上につなげていく。収益化までの道筋は、まず住民の困り事を把握し、次に自治体職員と一緒に課題を構造化して考える、もしくは自社のアイデアを提案してその課題の中でどの部分を自社が解決できるかを提案する、という流れになる。

 現在、日本のDX政策はマイナンバー関連と準公共分野に集中しているため、その領域が自治体DX領域の参入ポイントになるだろう。「まずは地元の自治体がどうなっているかを見ることから始めてみては」と藤井氏はアドバイスを送った。
  • 1

外部リンク

パブリックX=https://public-x.jp/