Special Issue
NETONE PARTNERS 本格化する「NEXT GIGA」に向け、文教向けビジネスを推進 パートナー企業と共に市場開拓を目指す
2024/09/19 09:00
週刊BCN 2024年09月16日vol.2030掲載
「NEXT GIGA」に向け現場の課題の洗い出しが必要
2019年12月に文部科学省が打ち出したGIGAスクール構想。これにより20年度から21年度にかけて小学校から高等学校で、児童生徒向けの1人1台端末と高速大容量の通信ネットワーク環境の整備が進んだ。その一方、地域によってICT活用状況に格差が生じたほか、ネットワーク環境が不安定、初期に導入された端末の不具合や故障の増加といった課題も浮上している。「各教育委員会の差は大きく、端末がうまくつながらない、動きが遅いとの声は多く聞いている」と第3営業部第1チームシニアスタッフの内山龍氏は指摘する。
セールスエンジニアリング部第3チームシニアスタッフの毛利堯氏も次のように続ける。「デジタル教科書、動画系コンテンツなど、多くのリソースを使うアプリケーションが、ネットワーク帯域を圧迫するケースも頻発している。優れたコンテンツも、インフラの問題で利用が十分にできなければ大きな損失だ。今後は、こうした環境に対応できるインフラ整備が求められる」
そこで今、注目されているのがGIGAスクール構想の第2フェーズともいえるNEXT GIGAだ。現状の課題に対応するため、文科省において端末更新の補正予算が決定した。早期に1人1台を整備した自治体では、24年度から更新時期に入るが、令和5年度(23年度)補正予算では、補助基準額が端末1台当たり上限5万5000円(価格の3分の2)と設定された。
「ただし、補正予算を利用する場合は、端末整備、利活用の計画のほかに、ネットワークの整備、校務DXに関する計画の提出が条件となる。特に、ネットワーク整備計画の策定では、通信ネットワーク環境のアセスメント、ネットワークの可視化が不可欠になる」と内山氏。
アセスメントによる現状把握が次のビジネス機会に
文科省でも、学校規模ごとに1校当たりの帯域の目安(当面の推奨帯域)を出している。「文科省が全学校で実施した簡易測定結果からの推計では、全校のうち約6割(59.0%)が、ネットワークアセスメントが未実施、当面の推奨帯域を満たす学校は2割程度というのが現実だ。アセスメントの実施には国の補助もある。そこで、まずはしっかりアセスメントを実施して現状を把握することが、パートナー企業にとって今後のビジネスチャンスにつなげるステップになると考えている」と第3営業部第1チームエキスパートの中江修平氏は語る。もう一つ、教育現場で大きな課題となっているのが、教壇に立つ教員のリテラシー差だ。ネットワークがつながらない時の対応や、授業に集中したいのに、準備や対応に追われて十分な時間がとれないといったケースも出ている。
「実際、システム管理が大変なので、できるだけ管理工数を削減したいとの声はよく聞いている。そこで、できるだけ手間がかからず管理工数が削減できるものや、自宅からでもリモートで管理できる製品やソリューションの提案をパートナー企業にお勧めしている」と内山氏。
学校の実環境を想定しマルチベンダー製品を検証
ネットワンパートナーズでは、今後本格化するNEXT GIGAを見据え、各教育委員会に提案するパートナー企業に向けたさまざまな支援を行っている。ディストリビューターとして、マルチベンダーの製品を取り扱う同社にとって、ユーザー環境やニーズに対応した最適なソリューションを提供することはもちろんだが、各社の製品を自社で購入し、実際に自ら使用して詳細な検証を実施している。「そのナレッジを含めた高度な技術サポートができることが、大きな強みと自負している」と毛利氏は強調する。
同社では、主要7社の8製品を対象にマルチベンダーワイヤレス検証を実施。実際の学習環境を再現すべく、1クラスに相当する40台のタブレットを同時接続して性能を測定した。
「メーカーのカタログの数値だけでは分からないが、実環境ではパフォーマンスに差が出た。特に無線は、設置環境でパフォーマンスが大きく左右されるため、実測値はとても有効なデータとなる」と毛利氏。
「その検証データは、現状の教育委員会の課題解決に有益なものになる」と中江氏は話す。
加えて、実際に現場で利用されている複数種類の端末を用意し、より実環境に近いかたちで、2次検証を実施することも計画している。
「当社が得たナレッジをパートナー企業と共に活用し、提案活動を進めていきたい」と毛利氏。
現在、文科省で補正予算が決定しているのは端末の更新費用だが、現状の見直しに伴い、ネットワークの整備や校務DXのさらなる推進が予想される。「端末単体ではなく、ネットワーク整備計画も含む案件となれば、調達はプロポーザル方式の実施が多くを占めるだろう。その際、実環境を想定した検証データの有無は他社提案との大きな差別化にもなる」と内山氏はアピールする。
提案パッケージでパートナー企業を支援
ネットワンパートナーズは、具体的にどのようなソリューションを揃えているのだろうか。 現場からは、機器のほとんどをオンプレミス環境で運用しているため、地震などの災害が発生した時にデータがすべて失われてしまうのではないかといった懸念や、リモートワークが難しいといった悩みを聞くことも多いという。こうした課題解決に向けて、クラウド管理型ソリューションの提案をするケースが増加している。「例えば、『Cisco Meraki』は、第1次GIGAスクール構想でも多数の導入実績を持つシリーズ製品としてスイッチ、無線LAN、セキュリティー製品のUTMなどをラインアップする。そして、クラウド経由で各製品や端末などをWebベースのダッシュボードで一元的に設定、管理できるため、運用管理の負担を大きく削減できる優れものだ」と毛利氏は強調する。
文教分野でも、在宅勤務や端末を持ち帰るケースが増え、IT運用管理の複雑化によって管理を担う現場の教員の負担も増している。
Merakiは、SASEソリューションの「Cisco Secure Connect」とも連携でき、一画面でネットワークとセキュリティーの一元管理も可能になるため、トラブル時の原因特定も容易になる。個々の製品の管理画面を立ち上げ、切り分け、原因究明といった面倒な作業から解放される。
「パートナー企業が安心して提案できるようCisco Secure Connectの検証データやトレーニングメニューも提供している。また、ネットワーク構築、運用については、パートナー企業と共に大企業、官公庁、自治体における数万台レベルのシステム導入をした実績もあり、そこで得たナレッジを逐次フィードバック。ご要望に合わせてハンズオントレーニングをリモートやオンデマンドで随時提供し、顧客環境で検証を行うための貸出機も用意している」と中江氏。
また、NEXT GIGAに向けた各種の提案パッケージも作成し、パートナー企業の提案を支援している。「規模、ニーズ、補助金対象有無、ネットワーク、セキュリティーなどに応じて複数パターンのオファーモデルを検討している。また、パートナー企業からの声も聞いて、ニーズを探り、今後もモデルの拡充を図っていく」という。
同社では、教育関連分野の展示会にも積極的に出展している。同社単独だけではなく、パートナー企業やメーカーと共同でブースを構えている。ブースにはSIerなどの業界関係者だけでなく、教育委員会の関係者からの多数の訪問があるなど、関心は高いようだ。さらにマーケティング、営業、SEの各メンバーで構成する約10人の文教分野に特化したワーキンググループを設置して、パートナー企業からの提案をサポートするとともに、吸い上げた提案や要望などを製品担当にフィードバックしている。
「ネットワーク機器も補助金を待たずして、更改検討・対策に乗り出している教育委員会も出てきており、市場としては待ったなしの状況。当社としてはパートナー企業に対して案件の提案段階からのサポートを重点的に行っている。製品の検証資料をはじめ、このような提案が刺さるなど、市場を細分化した資料も用意しているので、どのようなことでも、ご相談いただきたい」と中江氏は呼び掛ける。
- 1
関連記事
ネットワンパートナーズ、パートナーのビジネスを支援する「PoC&CXサービス」