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サードウェーブをひも解く サードウェーブの歴史 ハイエンドPCを基軸とした独自路線から 法人向けビジネス強化への系譜
2024/08/29 09:00
週刊BCN 2024年08月26日vol.2027 第2部掲載
1)小売店からはじまりPCメーカーへと成長した軌跡
サードウェーブが創業したのは、今からちょうど40年前の1984年のことである。サードウェーブはコンピューター関連機器販売から事業をスタートした。そのノウハウを発展させるかたちで、店舗「DOS/Vパラダイス」(現「ドスパラ」)でのオーダーメイドによるPC組立サービスを開始したのが92年のことである。PCと言えばまだ業務用が主で、ゲームでの使用はまだ一般に広がっていない時代に、ユーザーの要望に応えたPCをショップで組み立てて提供するサービスを始めたのだ。
こうして東京・秋葉原から始まった店舗は現在、全国で47店舗の規模にまで拡大している。
リアル店舗を通じてユーザーと直接関わっていたサードウェーブには「ゲームのニーズに加えてビジネスにおける高性能なPCが欲しい」という声が数多く寄せられていた。実店舗でユーザーの生の声を聞くという、ドスパラの運営元であるサードウェーブならではの強みは同社も強く意識しており、「ショールームはこちら側からの情報発信ばかりになってしまう。しかし販売店舗なら双方向のコミュニケーションが可能だ。決して安くないPCを買う前にユーザーはほぼ必ず店員に相談する。われわれとしてもそのコミュニケーションから多くのことを学んできた」と宮本氏も述べる。
ユーザーに向けてサードウェーブは、高性能なCPUとグラフィックボードを最初からセットで搭載したPCを用意して「このマシンを買えばすぐにゲームを快適に楽しめる」と売り出し、大きな反響を得たのだ。以降、同社はゲーミングPCという新たなジャンルに活路を見出していく。
こうして2004年に誕生して一世を風靡し、現在まで脈々と進化を続けてきたゲーミングPCブランドこそがGALLERIAである。
2)40年の歴史で培った資産をあらゆる側面で活用
13年に設立された綾瀬本社工場には、まさに40年の歴史で培った資産が表現されている 。もともとサードウェーブは全国に点在する店舗の一角でPCの組み立てや商品発送を行っていた。そこから現在では綾瀬本社工場にグループ全体の生産・物流機能を集約するかたちで、生産物流統括本部を再編した。「われわれは国内に生産拠点を構える国産PCメーカーだ。しかし、この事実はまだまだ一般には浸透していない。国産メーカーとして高い品質を実現し維持しているという強みを今後しっかりと広めていきたい」と宮本氏は語る。品質マネジメントシステム(ISO9001)の認定取得や過酷な環境下での出荷前テスト、5S(整理、整頓、清掃、清潔、躾)に代表される基本的な業務の実践などを徹底することで、高度なQCD(品質、コスト、納期)を綾瀬本社工場で実現した。また部門間で密に情報共有しながら連携することで、コスト管理や納期短縮への取り組みをさらに強化している。
さらに、これまで培ってきた生産・サービスノウハウを発展させ、製造委託や商品登録、通信販売商品のピッキングや梱包、運送、アフターサポートなど、トータルなソリューションを提供し、新しいビジネスを生み出している。加えて、工場設立と同じ13年には、システムインテグレーション・ソフトウェアの開発事業も開始し、法人向けビジネスをさらに加速していく体制を整えた。
3)ゲーミングだけでなく法人PCの分野にも展開
日本を代表するPCメーカーへと発展をしようとしているサードウェーブは、現在では法人向けPCのラインアップも拡大している。例えば24年7月3日に開催された「法人向け新製品発表会 2024夏」でリリースされたワークステーションのフラッグシップモデル「raytrek workstation N8630」は、その取り組みの最前線に位置する。多くの企業の間で高まっている生成AI活用のニーズに対しても、柔軟なカスタマイズが可能なBTO体制で応え、さらにこれまで手薄だった研究開発部門や学術機関などへも果敢に展開していく予定だ。「企業のデータの中には機密情報のようにクラウドでなくローカルでしか管理できないものもある。そういったデータも生成AIで活用できるように、われわれは国産で高性能なワークステーションを提供していく」(宮本氏)。
また、法人向け販路の拡大戦略として、従来からの直販ビジネスだけでなく、パートナーを通じたビジネスにも注力していく構えだという。すでに有力ベンダー数社とパートナーシップを結び、ネットワークを広げている。「各省庁や地方自治体、公共機関などの調達案件にわれわれが加わっていくためにも、これらのパートナーとの協力が欠かせない」と宮本氏は語る。
さらに最近の動きとして特筆したいのが、法人向けの「PCサブスクリプション」というサービスの展開だ。従来のリースと異なり、導入から1年経てば新製品にも変更できる。これにより、長期利用での機能低下時だけでなく、より高いスペックが必要になった際もPCをタイムリーに調達できる。
4)「未来を解放する」ためにB to B戦略を一層強化
「われわれはグラフィックボードを搭載した高性能ゲーミングPCで長年業界をリードし続けてきた。その中で培ったノウハウは法人PCでも強みとして生かすことができる」と宮本氏は熱く語る。サードウェーブはゲーミングPCを通じてBtoC市場で独自のポジションを確立してきた。しかし、昨今のエッジAI需要などを鑑みて、今後は新たな市場開拓を進めていく構えだ。そうした中で打ち出したのが「Future Unleashed」という新たなビジョンである。「未来を解放する」を意味するこの言葉には「100年先も世の中に求められる企業であるために、人々の創造活動の可能性を最大限にする」という思いが込められており、今後に向けてBtoB戦略をより一層強化していく。「冷却性や静音性に優れたハイエンドPCを、サードウェーブは40年以上にわたって製造してきた。この強みをBtoB市場でも存分に生かしていく」と宮本氏は語る。
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