Special Issue
週刊BCN 特別連載企画<第11回> DISのエキスパートに聞く 日本のIT利活用の実態は
2024/08/29 09:00
週刊BCN 2024年08月26日vol.2027掲載
埼玉エリア
幅広いニーズが顕在化 教育分野で投資が進む
拠点エリア 関東エリア拠点データ 大宮支店
住所:埼玉県さいたま市大宮区桜木町1-11-20(大宮JPビルディング2F)
電話番号:048-640-1985
南関東に位置する埼玉県は、東京都へのアクセスが良いことから、さいたま市や川口市を中心に多くの人が住んでおり、全国5位の人口数となっています。川越市や秩父市、長瀞町といった観光地もあり、都会と田舎が程よく混在しているエリアと言えます。近年では、新しい1万円札の肖像に選ばれた渋沢栄一氏が深谷市出身ということで話題になりました。
県内の産業構造は、製造業や卸売、小売り、医療といった分野の割合が少し多い程度で、国内の産業構造比率とほぼ同じです。そのため、PCの入れ替えやネットワークの増強など幅広いITニーズが顕在化しています。その中で、金融や病院関連の企業は比較的IT投資が進んでいる印象を受けます。最近は、お客様からDXの推進に関する相談を受ける機会が増えていたり、経営層を中心にAIによる業務効率化や生産性の向上に関心が高まっていたりしています。
学生が多い県ということもあり、教育分野では積極的なIT投資が行われているのが特徴です。例えば、戸田市の一部の小・中学校では、いち早く「STEAM Lab」が設置され、子どもたちに最新の技術に触れてもらうことで主体性を伸ばしています。
埼玉県は本年度から、「第2期埼玉県デジタルトランスフォーメーション推進計画」をスタートさせました。第1期はコロナ禍でWeb会議やテレワークの拡大行政手続のオンライン化が進みましたが、第2期は、「業務プロセス改革」と「県民サービスの向上」が挙げられており、データの収集・分析・活用や、規制改革とデジタル改革の一体推進などを図るとしています。国、県、市、経済団体、金融機関などが連携し、「埼玉県DX推進支援ネットワーク」を設立。補助金・助成金の情報発信や事例を紹介しているほか、相談対応といった支援をしています。補助金を活用できていない企業は少なくないため、こうした行政の取り組みなどを通じて活用の動きが出てくると、県内のDXがより進むと感じています。
長野エリア
製造業でネットワーク再構築の動き 行政領域でも事例広がる
拠点エリア 中部エリア拠点データ 長野支店
住所:長野県長野市南千歳1-12-7(新正和ビル5F)
電話番号:026-291-8544
長野県の北信エリアは、キノコや果樹といった園芸農業が盛んなほか、ウインタースポーツや温泉を中心とした観光が主要な産業です。また、北陸・長野新幹線が通るほか、上信越自動車道、長野自動車道も走り、交通の便がよく、加えて、水資源が豊富なことから、製造業も盛んです。長野市を中心に、半導体や液晶関連の製造装置・部品などを開発製造するメーカーが集積しています。千曲・坂城周辺は、中小企業によるハイテクタウンが存在し、佐久市や御代田町の一帯はベアリング、モーター、計測機器、精密機器と言った電子機器部品などを手掛ける企業が数多くあります。このほか、酪農関連機器や給水装置の製造といった独自の技術力を持つ企業を有する点も特色で、地域経済を盛り上げています。
IT活用については、やはり製造業がけん引役となっている印象です。最近の生産機器はインターネットにつなげるケースも多く、拠点における無線LAN環境の見直しを図る動きなどが挙げられます。セキュリティーの観点からもネットワーク環境の再構築はさらに進んでいくのではないでしょうか。
また、行政においても、DXの観点から新しい取り組みを進めている自治体も広がっています。インフラ周りを刷新し、仮想化基盤を導入するといったケースなどがあるようです。行政分野でも幅広くデジタル活用が進み、住民サービスの向上や業務効率化につながることが期待されます。
長野県全体の課題としては、2024年2月に人口が200万人を割り込むなど、他地域と同様に人口減・過疎化が拡大しており、医療従事者の不足やバス路線の廃止など、住民生活に関わる問題が山積しています。これらの問題に対して、ITが解決できる部分は少なくないでしょう。オンライン診療や交通弱者らを対象とした大手スーパーやコンビニエンスストアによるネットスーパーサービスなど、地域の実情に応じた対策が今後ますます求められそうです。
熊本エリア
「くまモン」を軸に観光で積極的 半導体産業が成長をけん引
拠点エリア 九州エリア拠点データ 熊本支店
住所:熊本県熊本市中央区新市街11-18(熊本第一生命ビルディング2F)
電話番号:096-211-8501
熊本県といえば、ご当地キャラクター「くまモン」が圧倒的な認知度と好感度を誇ります。国内外から大勢の観光客が訪れるため、観光関連のIT活用は非常に積極的だと言えます。政令指定都市である熊本市の都会的な面に加え、世界有数のカルデラを誇る阿蘇や、豊富な水資源が地域の特徴になっており、別名で「火の国」や「水の国」と呼ばれています。
熊本県は、い草の生産量が日本一となるなど、多様な地形的条件を生かした農業が盛んです。2021年3月末時点の認定新規就農者数は全国1位で、農業産出額は全国5位となっています。一方、きれいで大量な水があるため、九州における半導体産業の中心となっていました。直近では、半導体受託製造の世界的な企業が進出し、注目度はより高まっています。
地域のIT活用では、くまモンが軸になっています。大手旅行会社などによる「くまモンランドDX事業コンソーシアム」が、データやAI活用に向けた実証実験を実施。ほかにも、人気のゲームに登場したり、店舗でデジタルクーポンがもらえる「旅するくまモンパスポート」に活用されたりしています。
高齢化による労働力不足が懸念される農業では、自治体がスマート農業の推進に力を入れており、ドローンによる農薬散布や、営農管理支援システム、センシング機器の活用などを後押ししています。また、電子黒板やタブレット端末などをいち早く導入し、教育のICT化の先進地として注目されている高森町・山江村をはじめ、教育の情報化は全国的に見ても進んでいると言えます。
熊本県は、半導体産業の盛り上がりによって今後の大きな成長が期待されており、地元のIT活用の推進にもつながっていくと予想しています。ただ、地価の急激な上昇や賃金格差、人手不足といった課題が既に顕在化しており、県内の産業構造が変わる可能性も指摘されています。プラスの影響を局地的に終わらせず、地域全体に波及させていくためには、官民が一体となり、変化にしっかり対応していくことが重要になるでしょう。
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