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経済産業省 産業データを戦略的に共有するための社会基盤:ウラノス・エコシステム 日本の産業DXを推進して国際競争力の向上へ

2024/08/08 09:00

週刊BCN 2024年08月05日vol.2025掲載


 2日目の基調講演には、経済産業省商務情報政策局情報経済課アーキテクチャ戦略企画室長の和泉憲明氏が登壇。「DX政策の新展開:ウラノス・エコシステムによるデータ連携と産業DXのグローバル展開」と題して公益データプラットフォーム「ウラノス・エコシステム」の背景と現状を説明した。

経済産業省
商務情報政策局・情報経済課
アーキテクチャ戦略企画室長
和泉憲明氏

 和泉氏はDXを産業革命や明治維新に匹敵する大きな変革とした上で、「これを推進するには、未来像を明確にして、そこに向かって政策を立案することが重要だ」と主張。デジタル時代の企業競争力を左右するのがデータのプラットフォームであり、既に北米の製造業では、データをフル活用(シミュレーション)して生産ライン設計を提供するラインビルダーが強くなっているとの見解を示した。

 また、高速鉄道の国際競争(企画・コンペ)では、欧州企業が強い競争力を持っている。鉄道単体ではなく、全体パッケージとしてのスマートシティを構成する提案をしているからだ。個別機能では日本企業の提案のほうが優れていることも多いが、結果、国際競争では負けてしまうのである。

 そこで、日本が第4次産業革命をリードする存在となるには、政策推進のスキーム・スピード感を大胆に変える必要がある。「課題を同定して法制度や政策を設計し、適用後の効果を確認する、というのが伝統的な政策推進。これを、官民が一丸となってスピーディーに意思決定するミドルアウト型の政策推進スキームへと転換していく」と和泉氏。「公益デジタルプラットフォーム」(公益DPF)という場の創成を政府が後押しし、産業界が市場を戦略的に組成するような、エコシステムとしての真の官民連携の姿を示した。

 その公益DPFを組成する仕組みとして、経済産業省が2023年5月に立ち上げた官民連携スキームが、「ウラノス・エコシステム」(Ouranos Ecosystem)だ。ウラノス・エコシステムは世界のさまざまなデータ仕様を統一的な仕組みで交換可能とするためのデータ連携プラットフォームをコアとしており、これを利用する企業は国境や業界の壁を越えてもデータの利活用における保秘が容易にできる。その最初の成果を創出する際にキーとなったのが、欧州電池規則に対応するために情報処理推進機構(IPA)内のデジタルアーキテクチャ・デザインセンター(DADC)が策定した「サプライチェーン上のデータ連携の仕組みに関するガイドライン(蓄電池CFP・DD関係)」(23年10月12日公開)。「自動車および蓄電池サプライチェーン企業間でのデータ連携サービス」の会員募集に続き、一般社団法人自動車・蓄電池トレーサビリティ推進センターとしての運営が24年5月に始まっている。

 最後に和泉氏は、公益DPFがデジタル田園都市国家構想のデジタルライフラインの基礎としても役割を果たしていくとアピールした。
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