Special Issue
日本デジタルトランスフォーメーション推進協会 ITで業務を効率化してDXで付加価値を創造 企業変革によって未来志向の経営を実現
2024/08/08 09:00
週刊BCN 2024年08月05日vol.2025掲載
6月5日の基調講演「業務効率化のその先に~目指すべきビジョンと現状のギャップを埋めるDX~」では、中小企業が取り組むべきDXについて、推進する上での勘所と先進事例を日本デジタルトランスフォーメーション推進協会・代表理事の森戸裕一氏が説明した。
森戸氏はまず、経済産業省製造産業局が作成した「製造業を巡る現状と課題 今後の政策の方向性」(2024年5月)をもとに、「日本的経営とワールドクラスの経営とのギャップは、依然として大きい」と指摘。「このギャップを解消するには、現場のオペレーションだけでなく、コーポレート(経営)のレベルでも変革を進める必要がある」と述べた。
そのような変革を成し遂げるには、デジタル変革(DX)による付加価値創造や新事業創造と並行して、情報システム部門がブレーキ役としてセキュリティーやコンプライアンスを確立することも重要だ。また、社会の目指すゴールが「裕福」から「幸福」へと移り変りつつある現在、一極集中型ではなく、あらゆるモノや人がインターネットに接続して相互に情報をやり取りできることも重要。そのためには、企業価値向上に資するデータを取得して分析、利活用するデータ主導型社会へと移行していくことが望まれているという。
このような考えに基づく未来志向の経営を行うため、かぎとなるのが挑戦(Challenge)・変革(Change)・共創(Collaboration)を重視する顧客体験(CX)。また、企業変革力(Dynamic Capability)を高めてイノベーションを創造するには、人材育成にも力を入れるべきだ。具体的には、リスキリングで全年齢の従業員の能力を高め、従業員の熱意を正しく評価する承認文化を築き、未来志向のマインドを企業内に醸成していけばよい、と森戸氏は説明した。
このような変革は、規模を問わず多くの企業で始まっている。森戸氏は、日本デジタルトランスフォーメーション推進協会が関わる日本DX大賞の受賞者として、グッディ(第1回日本DX大賞・大規模法人部門)と八芳園(第1回DX大賞・中小規模法人部門)の2社を紹介。「グッディはAI活用の先駆的な知見を他社のDX支援に生かし、八芳園はコロナ禍の非常に苦しい時期に進めた業務効率化のノウハウを外販しようとしているなど、どちらも新たなビジネス領域を切り開いている」と解説した。
DXや企業変革の目的は、社内業務の効率化によって考える時間を生み出し、それによって生み出された時間をCX向上への取り組みに充てて新事業を創造することにある。「そのためには、DX推進の目的と目標を明確にし、現場の意見を取り入れながら無理のない範囲で改革を進めることが肝要だ」と、森戸氏。必要に応じて外部からの支援も利用するのもよいだろうと勧めた。
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