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週刊BCN 特別連載企画<第10回> DISのエキスパートに聞く 日本のIT利活用の実態は

2024/08/01 09:00

週刊BCN 2024年07月29日vol.2024掲載

 ダイワボウ情報システム(DIS)は、国内最大級のディストリビューターとして国内96カ所に拠点を置くことで地域に密着した支援体制を整え、約1万9000社の販売パートナーとともに全国のITビジネスを支えている。少子高齢化への対応などが国全体の課題となり、デジタル社会の実現が急務になる中、ITが果たす役割はこれまで以上に重要になっている。コロナ禍をきっかけにDXの機運が高まる中、各地域の企業などは、どのように動いているのだろうか。DISのエキスパートの声から、国内のIT利活用の実態を探る。

山形エリア
AI活用を通じた人材育成 若者に魅力ある街づくりを

拠点エリア 東北エリア
拠点データ 山形支店
住所:山形県山形市香澄町2-2-31(カーニープレイス山形4F)
電話番号:023-627-7222

 東北南部、日本海に面する山形県は、海側の庄内エリア、宮城県側の内陸エリアとそれぞれ特徴的な文化を持っています。温泉がすべての市町村にあり、中でも尾花沢市の銀山温泉は海外からも多くの人が訪れます。山形、宮城両県にまたがる蔵王は、夏は火口湖「御釜」の散策、冬はスキーと、1年を通して人気の観光地です。
 
東日本・広域営業本部 北海道・東北営業部
山形支店 林 知聡 支店長

 山形県の特産品といえば、なんといってもサクランボ。6月が最盛期で、粒の大きい新品種も登場していますが、日持ちしないので首都圏などに多く出荷できるよう品種改良が進められています。産業は、農業をはじめとしてた1次産業が中心で、サクランボ以外にもリンゴや洋梨などの果樹、米づくりも盛んです。米は「つや姫」がブランド米として全国的に有名です。

 農業が盛んなことから、ITの動きとしては、ロボットやAI、IoTなどを導入した農業のスマート化の事例が多くあります。舟形町では、特産のマッシュルームの栽培で、朝夕2回見回りをして二酸化炭素濃度などの管理をしており、作業者の大きな負担になっていましたが、IoTを活用して68の栽培棟に監視観察システムを導入するなど、各社のITソリューションを活用して、省力化を実現している事例も県内にはあります。

 山形県では2020年から、高校生がAIを学ぶ取り組みが実施されています。企業、教育機関、自治体が連携したデジタル人材育成プロジェクトで、23年は県内23校が参加。実務経験豊富なデータサイエンティストやAIエンジニアによる講座の開催などを通じて、若年層AI人口割合全国1位のトップランナー県を目指しています。

 地方はどこも人口減少という同じ課題を抱えていますが、地元で働きたいと思える環境をつくり、IT人材を育てることは欠かせないと考えます。IT業界に関わる人だけでは県全体のDX推進は難しいので、各企業にデジタル技術に精通した人材を育てることが重要になります。地域産業と連携して、ITを活用した新たなビジネスモデルやサービスの創出につなげていってほしいと感じています。
 
蔵王は、四季を通して多くの観光客が訪れる人気スポット。
冬には、蔵王温泉スキー場で樹氷を見ながらスキーが楽しめる。
14のゲレンデ、12のコースがあり、ファミリーから上級者まで集うスノーリゾートになっている。

東京エリア
企業規模により「大きな差」 ITを軸に国際競争力の向上を

拠点エリア 関東エリア
拠点データ 東京支社
住所:東京都品川区大井1-20-10(住友大井町ビル南館)
電話番号:03-5746-6410

 東京都は、国内の政治や経済などの中心地として世界的に大きな存在感を示している。経済に関しては、多くの大企業が本社を置き、さまざまな産業が集積。巨大な市場はIT業界からも注目されている。東京でも積極的にビジネスを展開するDISは、魅力やIT活用の状況、課題などをどのようにみているのだろうか。首都圏営業本部の中澤伸人・南東京営業部部長と、野上博史・中央東京営業部部長に話を聞いた。(文中敬称略)

──東京の印象を教えてください。

中澤 国内の政治や経済、文化、芸術の中心であることは言うまでもなく、国内外から企業や人が集まり、それによって生み出されている多種多様な面は、東京の魅力だと思っています。ビジネスに関しては、ほかの都市に比べて規模が非常に大きく、情報量が圧倒的に多く、スピードも速く、活気やエネルギーに満ちた環境は特徴の一つと言えると思います。
 
首都圏営業本部 南東京営業部
中澤伸人 部長

野上 まずは国内で人口が最も多い都市であることが挙げられます。面積は全国で3番目の狭さですが、そこに約1400万人が住んでいるため、人口密度は最も高くなっています。江戸幕府が置かれて以降、発展を続けており、都内では高層ビルなどの近代的な建物が今でも次々に生まれています。一方で「東洋のガラパゴス」と呼ばれ、世界自然遺産に登録されている小笠原諸島などの自然豊かな面もあり、非常に多様性に富んでいるのは面白いところです。
 
首都圏営業本部 中央東京営業部
野上博史 部長

──産業構造の認識はいかがでしょうか。

野上 一言で表現するのが難しいくらい多くの産業が集積していると感じています。例えば、丸の内や大手町は金融業、渋谷はITやクリエイティブコンテンツのベンチャー企業、東京湾岸では製造業など、地域によって特色があります。ほかにも情報通信業や観光業、製造業、不動産業、小売業、建設業など、さまざまな産業が各地で発達しています。

中澤 大企業を中心にたくさんの企業が立地しているのに加え、企業や大学の研究機関も多いので、先進技術に積極的に取り組める環境があります。そういったこともあってか、東京ではスタートアップが多く誕生しており、特にIT業界の盛り上がりは著しいと捉えています。

──IT活用に関する分析をお願いします。

中澤 人材と技術が豊富な大企業では、IT活用は非常に進んでいます。また、身近な例ですと、スマートフォンを活用した居酒屋の注文システムや、小売店の無人決済システムなどの導入は、ほかの都市よりも先行していると感じています。ただ、中小企業については、IT活用に向けた意識は高いものの、そのために必要な人材の確保に苦労しているとの声をよく聞いており、企業の規模によって考え方、活用スキルには大きな差があると感じています。

野上 大企業や自治体が積極的にITを活用する中、最近、キーワードとしてよく聞くのはAIです。既にさまざまなAIツールが登場しており、多くの企業が高い関心を寄せています。ビジネスへの実装が本格化するのはこれからと想定していますが、AIの活用を見据えて高性能なサーバーの導入も始まっており、大企業を中心に各企業が積極的に動いています。

──東京のIT業界における直近の話題や課題を紹介してください。

野上 国内全体の動きと同様に東京も企業の人手不足が顕在化しています。ただ、ほかの地域は東京以上に人手不足が深刻で、地域内でIT系の仕事に対応できない状況が出始めています。その結果、ここ最近は、ほかの地域の案件も東京に集まっている傾向にあり、リソースの共有化など業界全体でも対策が必要になっていると感じています。

中澤 人手不足に加え、ITインフラをはじめとする設備の老朽化が進んでいるのは課題と言えます。ITの活用は今後、さらに進むと予想されるので、AIやデータをより活用していくためには、ITインフラの整備や設備の更新が重要になると予想しています。

──今後の発展に向けて何が必要でしょうか。

野上 国際的な競争力をより高めていくことが必要だと感じます。AIを中心にITが担う役割はさらに大きくなるとみられているので、東京からGAFAのような企業を生み出したり、世界的なITベンダーがさらに集まるような環境を産官学連携で整備したりする取り組みが重要になるとみています。

中澤 東京は国内で非常に重要な立ち位置にいます。東京でIT活用の先進的な事例をさらに創出し、DXの実現を目指す各地域を引っ張っていけるようになれば、東京を含めて国全体の発展につながっていくと期待しています。
 
多いときは1回の青信号で約3000人が横断するとされる東京・渋谷のスクランブル交差点。
10本の車線と5本の歩道で構成され、人や情報、文化などが交わる象徴的な場所になっている。
世界で最も混雑する交差点と言われており、外国人観光客からの人気も高い。
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