Special Issue
週刊BCN 特別連載企画<第9回> DISのエキスパートに聞く 日本のIT利活用の実態は
2024/06/27 09:00
週刊BCN 2024年06月24日vol.2019掲載
群馬エリア
「シリコンバレーを超える街」目指す 製造業中心にセキュリティー意識高まる
拠点エリア 関東エリア拠点データ 高崎支店
住所:群馬県高崎市あら町167(高崎第一生命ビル8F)
電話番号:027-328-6450
群馬県は東京から100キロ圏内に位置し、関越、上信越、北関東、東北の各高速道路、上越、北陸の両新幹線が県内を十字に走り、アクセスに優れた地域です。流域面積日本一である利根川の水源県であるとともに、多くのダムを有し、豊富な水資源に恵まれていることから、「首都圏の水がめ」とも言われ、この水は生活のほか、工業用水や発電にも生かされています。
経済は製造業が県内総生産の約4割を占め、大きな柱となっています。自動車メーカーが主力の生産拠点を設けていることもあり、自動車関連が盛んです。加えて食品産業に関しても、国内大手が立地するほか、海外有名ブランドの製造を担っている企業も複数存在します。
ITに関しては、製造業が多いこともあり、近年、セキュリティーへの意識が高まっているようです。1社に対する攻撃がサプライチェーン全体に影響を及ぼす可能性もあり、重視する企業が増えつつあります。
また、東京との近さや、地震や災害などの自然災害が比較的少ないこと、水力による再生可能エネルギーの利用が可能といったメリットを生かし、行政が国内外からのデータセンターの誘致を積極的に推進している点もトピックとして挙げられます。
さらに、群馬県と高崎市は旧日本軍の飛行場跡地で、国内外の先進的なIT関連企業や研究機関を集積させたまちづくりを進める構想を掲げています。「シリコンバレーを超える街」を標榜し、デジタルを活用した社会システム・住民サービスの構築にも取り組んでいくそうです。
一方で他地域と同様にデジタル人材の不足は大きな課題となっています。群馬県は2024年度からの
「新・ぐんまDX加速化プログラム」において「デジタル・クリエイティブ人材の育成・活躍」を方針の一つに据え、子どもたちを対象としたデジタル技術の習得拠点整備や、海外発祥の教育プログラムの導入をはじめとする事業を展開しています。取り組みを通じて、若い人材の才能が花開く日が待ち遠しいです。
松本エリア
県主導でIT売上高向上の取り組み 地域特性を生かした事例も
拠点エリア 中部エリア拠点データ 松本支店
住所:長野県松本市中央2-1-27(松本本町第一生命ビル4F)
電話番号:0263-31-8722
全国の都道府県で4番目の面積を誇る長野県。南北に長い県域の中で松本市を中心とした中・南信エリアは、夏は湿度が低く爽やかで冬は積雪が少なく、名古屋市を中心とした中京圏からのアクセスが良好で暮らしやすく感じます。松本市には国宝の松本城、中部山岳国立公園の一部でもある景勝地の上高地があり、外国人観光客でにぎわっています。県境には標高2000~3000メートル級の高山が連なり、広大な山岳エリアを有しています。
IT関連の自治体の動きとして、長野県は2023年度、「信州ITバレー構想」を掲げました。県内産業のDXとIT人材・IT産業の集積地を目指し、産学官連携でIT振興を推進しています。▽1人あたりのIT売上高を上げる▽AIやIoTの導入率を高める▽IT事業所数の増加-の三つをKPIとして設定しており、取り組みは順調に推移しているようです。
山岳エリアが多い地域特性を生かした事例としては、駒ヶ根市で5Gとドローンを活用した登山者見守りシステムの実証実験が行われました。山岳登山ブームの中、遭難者の増加が問題になっていることを背景に開発され、登山者の位置ログを作成、遭難の発生を自動判定し安全で迅速な救助を目的としています。
伊那市のスマートシティーへの取り組みも特徴的です。少子高齢化のさらなる進行が予測される中、今後も増加し続ける交通弱者、買物弱者、医療弱者などの支援に向け、ケーブルテレビをプラットフォームとする多用途なリクエストシステムの構築により、将来にわたり暮らし続けられる地域環境の整備を図っています。24年2月には、高校生を中心とした市内の人流解析の実証研究を実施しました。人流データをまちづくりに生かす意向で、地方のスマートシティーの先進的事例として期待されています。
長野県も少子高齢化は大きな課題で、暮らし・産業・行政などあらゆる分野でのIT活用が求められています。IT人材確保には、エリアの暮らしやすさをPRし、エンジニアらの移住を促すのも一手ではないかと感じています。
松江エリア
「Ruby」を中心とした取り組みが活発 若者への支援などで次世代人材を育成
拠点エリア 中国エリア拠点データ 松江支店
住所:島根県松江市朝日町498-6 (日進松江ビル3F)
電話番号:0852-27-1621
島根県は、離島の隠岐諸島や竹島を含めて東西に長く、県域はかつての出雲国と石見国、隠岐国の三つの国に相当します。オープンソースのプログラミング言語「Ruby」の開発者である「まつもとゆきひろ氏」が在住していることから、Rubyを中心とした取り組みが活発です。
島根県の「製造品出荷額等」は、電子部品・デバイス、情報通信機器、鉄鋼の割合が大きく、ものづくりは地域の主要産業になっています。日本最大とされるノートPCなどの製造拠点もあり、IT業界にとってなじみ深い場所といえるでしょう。日本海と中国山地に囲まれているため、海や山の幸は豊富で、中でも汽水湖である宍道湖は日本一のヤマトシジミの産地として広く知られています。郷土料理では、日本三大そばの一つといわれれている「出雲そば」が有名です。
IT活用に関しては、大手の製造拠点では生産性の向上に向けて取り組みを進めています。ほかには、島根県に拠点を置く工業用ミシンメーカーのグループ企業が、Rubyを基にした組み込み向け開発言語「mruby/c」を使ってミシンの補助装置を開発したことが注目されています。ミシンの縫製機能を制御し、縫い目の強度を変えられる仕組みで、導入企業の業務効率化に貢献しています。
Ruby関連では、自治体の手厚い支援も特徴です。例えば、松江市は2016年から全市立中学校でRubyの授業を実施しているほか、同市内に研究・開発・交流のための拠点として「松江オープンソースラボ(松江市開発交流プラザ)」を設置しています。島根県は全国の若者を招いた合宿を開催しており、Rubyを軸にIT産業の発展を目指す動きが出ています。
島根県は、ほかの地域と同じように人口減少を大きな課題として抱えています。企業の人手不足は既に深刻になっており、今後の発展に向けてIT活用やDXは欠かせません。自治体が注力している取り組みを着実に進めることは、次世代を担う人材育成の観点で非常に重要だと考えています。
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