Special Issue
週刊BCN 特別連載企画<第8回> DISのエキスパートに聞く 日本のIT利活用の実態は
2024/05/30 09:00
週刊BCN 2024年05月27日vol.2015掲載
秋田エリア
社会課題の解決で利用広がる 大手クラウドインテグレーターなどの拠点進出も
拠点エリア 東北エリア拠点データ 秋田支店
住所:秋田県秋田市東通仲町4-1(秋田拠点センター アルヴェ4-7)
電話番号:018-831-8021
秋田県は東北地方の北西部に位置し、東は奥羽山脈、西は日本海に囲まれた地域で、青森県にまたがる白神山地は約13万ヘクタールに及ぶ広大な山地帯に世界最大級と言われる原生に近いブナ林が広がり、世界遺産に登録されています。経済では豊かな自然資源に支えられた農業や漁業、林業、木材・木製品の生産のほか、電子部品やデバイス、輸送機械の製造も盛んです。近年は秋田市を中心にIT企業の誘致に積極的に取り組んでおり、大手クラウドインテグレーターや大企業のグループ会社、ベンチャー企業など幅広いタイプの事業者が拠点を設けています。
IT活用に関しては、民間では、例えば鉄道やバスの電子マネー対応も始まったばかりであったり、スマートフォンでの決済が可能な飲食店がようやく増えてきたりと、都市部と比べれば遅れは否めません。一方で、2023年7月の豪雨災害を受け、オンプレミスのバックアップにクラウドを検討する企業も一部には見られ、少しずつですが広がっている面もあります。
社会課題の解決にIT技術を用いている事例もあります。県内中央部に位置する上小阿仁村では、高齢者の移動手段確保などを目的とし、19年に日本で初めて自動車の自動運転サービスの本格運行を開始。運転手が不要となる「レベル4」の実現に向けた実証実験も進めており、本年度はローカル5Gの活用も予定しているようです。また、県内では23年、クマによる人的被害が過去最多に上ったことから、秋田県は本年度、出没情報や被害情報をメールで配信する新たなシステムを整備し、被害防止に役立てる考えです。
秋田県は事業者のDX支援にも力を入れており、ポータルサイト「AKITA DeX」では地元企業のDX事例やIT事業者とのマッチング機能、補助金・助成金情報などを提供しています。人材不足の深刻化や生産性の低さといった課題に対して、デジタル技術が生かされることを願っています。
浜松エリア
自治体による「浜松版MaaS構想」が特徴 大手製造業を中心に旺盛な意欲
拠点エリア 中部エリア拠点データ 浜松支店
住所:静岡県浜松市中央区伝馬町312-32(MIテラス浜松4F)
電話番号:053-456-0661
浜松市は静岡県の沿岸部に位置しており、人口約80万人を有する政令指定都市です。山や海、川、湖などの自然が豊かなだけでなく、都市部や沿岸部、中山間地域があることから「国土縮図型都市」とも呼ばれています。浜名湖や浜松まつりなど、観光も活発です。2023年には浜松市を舞台とした大河ドラマが放送されたこともあり、浜松城などのゆかりの地がにぎわっています。
浜松市といえば、やはり製造業の印象が強いと思います。特にバイクや自動車産業が盛んで、大手自動車メーカーの本社があります。ほかにも、複数の大手楽器メーカーの本社も集まっており、音楽の街としても有名です。
IT化が進んでいる業種も大手製造業が中心となっており、今までオンプレミスで運用していたサーバーをクラウドへ移行する事例が出てきており、IT化への意欲が見えます。
浜松市も精力的にIT化に取り組んでいます。例えば、「浜松版MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)構想」は特徴的な取り組みです。具体的には、中山間地域の通院困難な高齢者に対して医療を届ける「医療MaaS」などが動き出しています。20年度から24年度までを構想の第1期として、エコシステムづくりや、データ利活用に関する研究など、MaaS構想の基盤づくりを進めているそうです。
社会的に問題となっている人手不足は、浜松市も例外ではありません。かなりの人口を抱えてはいますが、数自体は減少傾向にあります。中でも足りないのは企業のIT人材で、特に中小企業はその傾向が強いです。そのため、IT化への関心は強くある一方で、足踏みしている企業は多いと感じています。
浜松市は、産業が活発で市場規模も大きいので、IT活用に関しては伸びしろはあるといえます。浜松版MaaS構想に限らず、浜松市らしい独自の事例が増えてほしいです。
鳥取エリア
今後に向けた動きに広がり 展示会や人材マッチングで後押し
拠点エリア 中国エリア拠点データ 鳥取支店
住所:鳥取県鳥取市扇町7(鳥取フコク生命駅前ビル6F)
電話番号:0857-37-1230
鳥取県は、鳥取砂丘や大山など、魅力的な観光地を多く抱えています。豊かな自然を生かした特産品もあり、中でも松葉ガニ(ズワイガニの雄)や二十世紀梨、スイカなどは全国的に有名です。企業のIT活用に関しては、まだこれからといったところですが、DXをテーマにした展示会が開催されたり、デジタル人材の育成や確保を目的としたマッチング事業が展開されたりと、各企業を後押しする動きは広がっています。
県内総生産を産業別に見ると、第3次産業の割合が最も大きく、第2次産業、第1次産業と続いています。第2次産業では、電子部品・デバイスや電気機械、食料品などの製造業の押し上げが目立っています。また最近では、産学連携やスタートアップ育成、県内企業の新事業領域への進出、新産業の育成などに鳥取県が積極的になっており、大規模災害が少ない地域特性を生かした企業誘致にも注力しています。
県を挙げてIT活動の推進を行う中、鳥取県は、24年度までを期間とする「鳥取県情報技術活用推進計画」を策定。知事をCIO(最高情報統括責任者)とするなど県庁内の体制も構築し、AIやIoTなどの先端技術の活用を進めています。県内では、ドローンを使った農薬散布などのスマート農業などで一定の成果が出ています。
地元のIT企業の中では、キノコの生産管理にAI活用を目指す取り組みが注目されています。クラウドを使ってキノコの温湿度などを監視するシステムで得たデータを活用する内容で、リソース不足解消のために海外人材を採用して開発を進めている点も特徴です。
IT活用を進め、DXを実現する上で、リソース面は厳しい状況になっています。とはいえ、未来に向けた取り組みは着実に進んでいるので、今後の発展に向けた可能性は大いにあると期待しています。
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