Special Issue
ソフトバンクが掲げる成長戦略「Beyond Carrier」の世界 DXを推進するために「Zoom Phone」を提供する意義とは
2024/05/24 09:00
通信事業の枠を超えたBeyond Carrierへの挑戦
ソフトバンクは「情報革命で人々を幸せに」という経営理念の下、情報・テクノロジー領域においてさまざまな事業に取り組んでいる。その中心はモバイルやブロードバンド、固定電話といった各種通信サービスの提供であり、国内有数の通信事業者として地位を確立しているのは言うまでもない。またエンタープライズ向けにも事業も展開しており、企業・自治体向けに通信サービスを提供している。そこにクラウドやセキュリティ、デジタルマーケティング、IoTなど多様なデジタルソリューションを組み合わせて顧客の課題解決に努めているのがソフトバンクの特徴だ。
同社は2017年度から成長戦略「Beyond Carrier」を掲げ、通信事業の枠を超えた新領域への事業拡大を積極的に行ってきた。例えばファイナンス分野では「PayPay」が日本最大級のキャッシュレス決済サービスに成長している。また、モビリティ・ヘルスケア・ビッグデータ/AIなど従来の通信事業の枠を超えた取り組みを加速させている。
Zoomが提供する最新ソリューションでBeyond Carrier戦略を実践
このような事業展開の中で、2019年からZVC JAPANの商材を取り扱うようになった。奇しくも新型コロナウイルスの感染拡大直前のことであり、コロナ禍でリモートワーク環境下での新たなコミュニケーション手段を各企業が渇望した際には、Zoom Meetingsを提供することでその声に応えられたという。顧客の要望や事業環境変化に応じて多種多様なソリューションを提供してBeyond Carrierの達成を目指している西新修統括部長は「Zoom Meetingsはユーザーインターフェースが非常にわかりやすくて使いやすく、そして品質も高い。類似のコミュニケーションツールも存在するが、『Zoomが一番使いやすくてわかりやすい』と多くの顧客に高く評価してもらった。コロナ禍でZoom Meetingsが急速に知名度を高めていったこともあって、スタンダードな存在として受け入れられている」と語る。
一方で「電話環境もリモートワークにあわせた形に変えたい」という顧客からの声も多く寄せられていたという。ニーズが高まっているクラウドPBXを商材に加えるのは自然な流れだが、数ある選択肢の中でなぜZoom Phoneを選んだのだろうか。
その理由を西新統括部長は「Zoom Meetingsをコミュニケーション手段のスタンダードとして位置づけるユーザーにとって、優れたユーザーインターフェースの延長線上でシームレスに連携できるZoom Phoneはとても魅力的だった」と説明する。
固定電話サービスを提供するソフトバンクから見れば、Zoom Phoneは既存事業と逆の存在のようにも思えるが、エンタープライズ事業全体で見ればむしろプラスに働くと判断したという。
「Zoom MeetingsやZoom Phoneといった選択肢を用意し、ソフトバンクが保有する多種多様な通信インフラとあわせてZoomの最新ソリューションをパッケージ化すれば、通信サービスを利用するお客様に対して付加価値を提供できるようになり、Beyond Carrierによる企業のデジタル化を促進できる。もちろんそれはデジタル化による働き方自体の変革、DXにもつながってくる。
ソフトバンクからZoomを導入することにより従来からの保守や導入支援を受けることができ、それは顧客にとって大きな価値の1つだ。また当社にとっても、『モノ売り』から『コト売り』へと変わることで価格競争から離れられ、利益拡大につなげられる」(西新統括部長)
ソフトバンクの事業を支える強力な営業力
このBeyond Carrierを下支えするのが、ソフトバンクの強みである営業力だ。密なコミュニケーションによって顧客が何を求めているのかを把握し、顧客がまだ認知していない課題も踏まえた上でコンサルティングを行う。例えば顧客とコミュニケーションを取る際も、上層部だけでなく現場とも会話するように努めている。上層部の認識が現場と一致しているとは限らないからだ。その企業のことを上から下までしっかりと把握した上で、ソフトバンクの営業は付加価値を提案していく。また事前に現場とどれだけコミュニケーションを取っていたかで、上層部の決定が現場にまで浸透する時間が大きく変わるという。
こうしたソフトバンクの取り組みは、Zoom Phoneによって日本企業の課題解決を前進させたいZVC JAPANにとっても心強い。
ZVC JAPANの下垣典弘代表取締役会長兼社長は「IPフォンの領域における潤沢な経験や、MDMやセキュリティなどZVC JAPANではカバーできない周辺ソリューションのケイパビリティを有している。ユーザー企業の立場でも、再販ビジネスに留まらないソフトバンクの存在は大きいのではないか」と、同社がパートナーであることの意義を語る。
「既存の通信事業と共食いになる可能性もあるZoom Phoneに対して、積極的に手を挙げてパートナーシップを組んでいただいていることは、市場に向けた強いメッセージにもなっている。ソフトバンクは、日本で新しいことにいち早く挑んできたファーストペンギンだ。
ブロードバンドを普及させ、日本にiPhoneを広めるなど、通信業界のみならずICT業界全体において非常に稀有な存在であるソフトバンクと組んで、日本の未来の通信のあり方を提案できることが本当に嬉しい」(下垣代表取締役)
しかし、そもそも電話に代わる選択肢があることを知らず、パソコンでも電話を受けられるという概念すら持っていない日本の経営者はまだ多く存在する。
「まずは、そのような壁を1つずつ打ち破っていくことが大切であり、そのために有効なお客様事例をソフトバンクと一緒に作る大事なステージに立っている。経営者に対して電話代の話をしてもあまり響かないが、お客様の成功事例を交えながら、新しいワークスタイルへの対応やデジタルマーケティングの飛躍、バランスシートに表れる設備投資のコスト削減といった観点で可能性を語れば、たちまち目の色が変わる」と下垣代表取締役は話す。
このことはソフトバンクとも共有しており、意識して経営トップに語りかけている。通常の営業活動に加え、ソフトバンクの本社内にある施設Executive Briefing Centerでソリューションを体感することで新たな気づきを得て、それをきっかけに商談へと発展することも少なくないそうだ。
「もちろん、経営トップが変えたいと思っても、それをすぐに実装するのは容易でない。現場の人とどれだけ密に話しながら下へ降ろしていけるかが成否を分け、ここでも我々の営業が非常に重要な役割を担っている」(西新統括部長)
Zoom PhoneとZoom Meetingsを融合したコミュニケーション改善事例
ソフトバンクが手がけたZoomソリューションの導入・活用事例として、西新統括部長は小売業の2社を紹介する。1つは国内に多くの店舗を展開している小売業者だ。そこではPBXなどの電話設備の維持が困難になっていた。一部スマホを導入して置き換えも検討したものの、PBXなどの機能がなく直通電話になってしまい、リモートワーク導入の妨げになっていたという。コロナ禍でリモートワークの必要が高まったこともあり、Zoom Phoneへと刷新した。
従来は電話対応をするため店舗内の電話機のある場所まで移動しなくてはならなかったが、Zoom Phoneの導入でその手間が不要になり効率化へつながった。また、状況や伝えたい内容によってZoom PhoneとZoom Chatを使い分けることで、コミュニケーション手段も最適化されたという。
このように各店舗の電話環境が統一され、さらに設定変更などもPBXベンダーに頼る必要がなくなり、管理工数の削減も達成できた。
各店舗に電話設備を置いていたが、リモートワークの壁を認識したことが契機となり、顧客および従業員とのコミュニケーション手段としてZoom Phoneを取り入れてオペレーションを見直した。
もう1つはコンタクトセンターを持つ小売業者だ。Zoom Phoneはそれ単体でコンタクトセンター用途に利用できるほどに多様な機能が備わっているため、コンタクトセンターをZoom Phoneのみの体制に刷新した。APIも豊富なため、サードパーティー製のCRMと連携させて使っているという。
なおリアルタイムのコール分析にはPower Packを利用している。この小売業者では元々Zoom Meetingを使っていたため、ユーザーからすればUIが統一されることになる。それにより導入工数を削減できた。
紹介した2つの事例は、ソフトバンクの積み重ねてきた知見や提案力の賜物だが、それだけでは成果に結びつかなかっただろう。新たなソリューションを取り入れたオペレーションを浸透させるための、営業担当者らによる地道な活動があったからこそ実現したものだ。
「業務の環境を変える際には少なからずハレーションが起こるもの。小売業の場合、本社側よりも店舗側において発生しやすい。長年の慣習であった固定電話がなくなり、スマートフォン1つで完結できるようになるが、その環境変化をすぐには受け入れられない方もいる。
これを乗り越えるには、現場の方々と会話し、新しい環境の良さを体感してもらいながら納得感を醸成し、その上で導入する必要がある。それには少し時間がかかるが、PoCの実施などを通して環境変化に対して好意的な評価を得ていくのが重要だ」(西新統括部長)
パートナーシップで日本市場を盛り上げて課題解決に貢献する
両社では今後、中小企業(SMB)と大手企業の双方に対して、Zoomの最新ソリューションによる課題解決を提案していく意向だ。SMBに対する戦略について西新統括部長は「非常に大きい市場だが、ソフトバンクはこれまで苦戦してきた。Zoomは世の中のスタンダードとして認知されているため、SMB攻略の足がかりとして期待している」と語る。
下垣代表取締役も「ZVC JAPANに問い合わせがあり直販することも多く、導入の壁は既に低いと感じている。ところがモノを買うようにはいかないのがICTソリューションで、価値を出すにはソフトバンクのような存在が欠かせない。やり方さえ合致すればSMBは急速に盛り上がるだろうから、我々も支援したい。
ソフトバンクの強みであるお客様との強固なエンゲージメントを通じて、Zoomの最新ソリューションに対するフィードバックを丁寧に聞きたいとも考えている。ZVC JAPAN ではお客様の声をいち早く商品に反映するようにしているが、ソフトバンクの力も借りてこれまで以上に日本市場向けの改善へ力を注ぎたい」と応じる。
「エンタープライズで期待の大きな領域の1つがコンタクトセンターだ。Zoom のコミュニケーション・プラットフォームではZoom Contact Centerという製品も持っており、他社サービスとの連携も可能なプラットフォームである。ソフトバンクでも研究開発を進めている生成AIと組み合わせることで人手不足をはじめとする課題解決に貢献できるだろう」(西新統括部長)
※ZoomおよびZoom名称を含むサービスはZoom Video Communications, Inc.が提供するサービスです。
※記載されている会社名および製品名は、各社の商標または登録商標です。
ソフトバンクが提供するZoom Phoneサービス
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