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週刊BCN 特別連載企画<第6回> DISのエキスパートに聞く 日本のIT利活用の実態は
2024/03/28 09:00
週刊BCN 2024年03月25日vol.2007掲載
宇都宮エリア
農業や観光で課題解決を目指す 首都圏に負けない魅力的な環境を
拠点エリア 関東エリア拠点データ 宇都宮支店
住所:栃木県宇都宮市馬場通り2-1-1(メットライフ宇都宮スクエア10F)
電話番号:028-610-8858
栃木県は北関東に位置します。多くの方が宇都宮餃子や、イチゴの「とちおとめ」を名物として思い浮かべるのではないでしょうか。日光東照宮がある日光市、避暑地として人気な那須塩原市などは多くの観光客でにぎわっています。産業では、農業や観光に加えて、製造業が盛んなのが特徴です。
これらの産業では、ITの活用も進んでいます。農業では、イチゴの生産において、AIを用いてデータを分析し、生育状況の診断や将来予測を行うといった取り組みが始まっています。既に高齢化と働き手不足が課題となっており、スマート農業を推進することで、課題解決を目指しています。
観光面では、外国人観光客への対応を目的にサイネージや翻訳などでITの力が利用されています。Wi-Fiを必要とする観光客も多いため、最近では主要な観光地で機器の整備が行われています。
県内の製造業は、自動車関連を中心に、医療機器、医薬品、食料品関連と多岐にわたります。特にIT活用が積極的なのは自動車分野で、AI関連ソリューションの利用に向けた投資を開始するといった動きが出てきています。
一方で、自治体や文教でのDXはまだこれからという印象です。その中で、宇都宮市は「宇都宮スマートシティモデル推進計画」を発表しています。2023年8月に開業した路面電車「宇都宮芳賀ライトレール線」を軸に、誰もが自由に移動でき、便利で楽しく過ごせるクリーンな「地域共生型スマートシティ」を目指しています。
県民性は保守的で、隣県の状況を気にするほか、新しい物事に慎重な傾向があるため、DX推進の取り組みについては、県庁所在地である宇都宮市からの広がりを期待しています。ほかの地域と同様に、栃木県も人口の減少が大きな課題です。ITをうまく活用し、首都圏に負けない魅力的な環境をつくり、県内で働きたいと思う人を増やしていくことが重要だと感じています。
佐賀エリア
教育向けの活用が先進的 半導体産業の波及効果に期待
拠点エリア 九州エリア拠点データ 佐賀支店
住所:佐賀県佐賀市駅前中央1-5-10(朝日生命佐賀駅前ビル5F)
電話番号:0952-22-2171
佐賀県は九州の北西部にあり、大陸からの文化の窓口としての役割を果たしていました。その影響は、弥生時代後期の環壕集落跡として国内で最大規模を誇る吉野ケ里遺跡や、有田焼といった陶磁器からも感じられます。IT活用に関しては教育向けが先進的で、最近は熊本県を中心とした半導体産業の波及効果が見込まれています。
産業は、ハウスミカンや板のりをはじめとする農業・水産業や、シリコンウエハーなどの製造業が盛んです。地理的に鳥栖市が九州各地を結ぶ高速道路の結束点となっていることから、半導体関連企業の工場や物流拠点の進出も目立っています。それに加え、近年は佐賀市などにIT企業が多く進出しているほか、地元の大学からIT企業が誕生する動きも出ており、県内のIT産業は全国的に注目されています。
教育向けのIT活用では、2013年度に全ての県立学校の普通教室に電子黒板の整備が完了し、翌14年度からは1人1台端末を使用した教育が各学校で進められています。また、佐賀市が市民サービス、防災、子育て・教育、産業の四つの方向でDXを目指すスマートシティー宣言を出し、公式スーパーアプリをリリースするなど、ITに対する自治体の姿勢はかなり積極的といえます。
一般企業は、DXへの関心はあるものの、どうしたらいいか分からないと考えているケースが多い状況です。ただ、老舗呉服店によるアプリの自社開発などの取り組みが大きく注目されています。ほかにも県内ではDXに関係する事例が少しずつ増えており、これからの盛り上がりには期待できるでしょう。
22年の西九州新幹線の開業や、23年の大型施設「SAGAアリーナ」(佐賀市)のオープンなど、佐賀県にとってプラスになるような要素は増えています。人口減少といった避けて通れない課題はありますが、ITで利便性や生産性が向上し、県全体に新たな活力が生まれることを望んでいます。
鹿児島エリア
医療面などで離島の生活を支援 データ活用で畜産業の生産性向上
拠点エリア 九州エリア拠点データ 鹿児島支店
住所:鹿児島県鹿児島市加治屋町12-7(甲南アセット鹿児島加治屋町ビル3F)
電話番号:099-227-2071
九州の最南部にある鹿児島県。薩摩半島と大隅半島に囲まれた場所に位置する桜島は、地元の象徴として人々の暮らしを見守っています。県内には600を超える島があり、人が住んでいる有人島も28を数えるのが地理的に大きな特徴です。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙センターがある種子島や、世界自然遺産の屋久島など、特色ある島が多くあります。
離島が多いことは、IT活用推進のポイントにもなります。システムをメンテナンスするにも、離島は簡単に移動できません。リモートで管理・監視できれば、時間と距離の壁をなくすことができます。ITが離島の生活をサポートできる余地は大きいと思います。離島は高齢化率が高く、医療面でITのニーズがあります。具体的には、鹿児島市内の大きな病院の医師が遠隔で診療するといった取り組みが行われています。離島でのIT活用では、教育分野も挙げられます。生徒や学生の人数が少ないため、コミュニケーションの幅を広げるために、リモートによる海外との交流が盛んに行われています。同じ海を越えるなら県内でも海外でも一緒。人口の少なさをIT活用で前向きに捉えている一例です。
人々の暮らしにも、鹿児島ならではのITシステムが浸透しています。ご当地決済システム「Payどん」は、三つの地元金融機関が参加しており、利用店舗数が拡大しています。コロナ禍にタクシー会社が軒並み廃業し、タクシーがつかまえにくくなった現状を解消するため、地元のタクシー会社約10社による独自の配車アプリの運用も始まっています。
鹿児島県は、畜産が主要産業の一つです。牛にカプセルを飲ませて、体温などのデータを繁殖に活用するなど、これまで人の経験値で行っていた部分にITを取り入れる動きが出てきています。若い世代に畜産に参入してもらうには、昔ながらのやり方を脱却し、ITによる活性化と業界の成長が欠かせないでしょう。牛舎をワイヤレス化して家畜の様子を確認したり、クラウドのストレージにデータをためて活用したりと、ITによる効率化や生産性向上に広がりが出てくるのではないかと期待しています。
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