Special Issue
シュナイダーエレクトリック株式会社 高容量帯と低容量帯の2領域で高まるUPS需要 シュナイダーエレクトリックのUPSビジネス戦略
2024/02/22 09:00
週刊BCN 2024年02月19日vol.2003掲載
リチウムイオン電池へ移行して
UPSをより高性能にサステナビリティにも配慮
24時間365日動き続ける必要があるサーバーにとって停電は大敵だ。しかしUPSを組み込んでおけば、停電時でも安全なシャットダウンを行うまで電力を供給し、データやシステムを保護できる。UPSのリーディングカンパニーとして知られる同社は、他社に先んじて鉛蓄電池からリチウムイオン電池への移行を進めてきたため、現在ではリチウムを使用した製品ラインアップが豊富だ。リチウムイオン電池のUPSは鉛蓄電池に比べ軽量かつコンパクト、さらに耐用年数が長く、環境保護に貢献できる。つまり同社のUPSを選択するだけで環境負荷を低減できると言えよう。リチウムイオン電池への移行に限らず、同社はサステナビリティ戦略に力を入れている。例えばCO2排出をはじめとする環境負荷低減を目指して素材や梱包資材を選定し、輸送方法などにも配慮している。そのような取り組みが高く評価され、2024年1月のダボス会議では「世界で最も持続可能な企業100社」の7位となり13年連続のランクインを果たした。
同社が発表した新製品「Smart UPS Modular Ultra」は、単相UPS初のリチウムイオン採用モジュラー型UPSだ。従来機種と比べ寿命は約4倍、それでいて大きさは約半分、重量も41%カットしている。モジュラー型なので容量の追加も容易だ。同製品は24年上半期に日本向けにも発売を予定している。
サーバー集約化を受けても好調なシュナイダー
理由はビジネスの二極化にあり
UPSは基本的にサーバーに取り付けて使用するので、ビジネスがサーバー出荷台数に左右されてしまう。近年はサーバーの集約化で出荷台数が減少傾向だが、同社のビジネスは着実に成長を続けている。その理由について尾崎本部長は「コロナ期に投資を控えていたエンドユーザーがようやく戻ってきて、23年はコロナ前を超えるまでビジネスが回復した」と分析する。UPSビジネスの二極化が進んでいることも大きい。ハイエンドのサーバーが増えて高容量帯のUPS製品の売り上げが伸びるのと同時に、ネットワーク機器やセキュリティカメラなどサーバー以外の電源保護として低容量帯UPS製品の需要も高まっている。サーバーで使う高容量帯UPSが同社のメインソリューションであることは変わらない。しかし同時に、低容量帯UPSは未開拓領域であり、それ故に幅広い可能性を持っているのだ。尾崎本部長も「われわれが“ノン・サーバー”と呼ぶ、サーバー以外の領域における電源保護の需要をどれだけ掘り起こせるかに現在フォーカスしている」と期待を膨らませている。
ノン・サーバー領域では意外な活用事例も
パートナーとの需要開拓を目指す
ノン・サーバー領域の範囲は非常に広い。例えばオフィスの各フロアに設置しているスイッチやWi-Fi機器、コンビニのATMやネットワークカメラ、さらには工場内の制御装置まで、あらゆる機器に需要が見込める。特にネットワークカメラは防犯だけではなく人流測定でも使われるため、マーケティングの側面からも不可欠な存在だ。今やUPSはデータセンターやサーバールームのためだけのものではない。珍しい導入事例では、映画館の映写機や、回転寿司のオーダーや決済の管理システムなどもある。デジタル化が進んだ現在、「止めてはいけない」機器は多く、言い換えれば電源保護の需要は数多く眠っているのだ。従来なら想像がつかないような意外な場所にUPSの活用チャンスが秘められており、それらはアイデアや提案次第で掘り起こすことが可能だ。
こうした新しい領域の開拓にはパートナー企業が欠かせない。尾崎本部長は「パートナー各社にそれぞれ得意分野があり、その得意領域でのUPS需要にまだ気づいていないことは多い。われわれからの働きかけでパートナーと一緒に需要を開拓したい」と今後の展望を語る。
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