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週刊BCN 特別連載企画<第5回> DISのエキスパートに聞く 日本のIT利活用の実態は
2024/02/22 09:00
週刊BCN 2024年02月19日vol.2003掲載
茨城エリア
研究機関を支えるIT スマート農業の取り組みも進む
拠点エリア 関東エリア拠点データ 茨城支店
住所:茨城県土浦市川口1-1-26(アーバンスクエア土浦ビル5F)
電話番号:029-835-0811
茨城県は、豊かな自然に恵まれていることから農業産出額は全国でも上位であり、さらに製造業も盛んです。観光名所が多く、都心からのアクセスの良さが魅力ですが、なぜか「都道府県魅力度ランキング」で最下位になっています。これからは、多くの人に茨城県の魅力が伝わると嬉しいです。
県内でIT化が進んでいるのは、つくば市や東海エリアになります。宇宙航空研究開発機構(JAXA)など国の研究機関が多数立地し、宇宙ビジネスをはじめとした新産業の創出に向けた取り組みがされているため、ITの導入においても、最新のソリューションへの需要が高いです。つくば市はスーパーシティ特区に正式に決定されており、「移動・物流」など六つの分野で先端的サービスが実装される予定です。
県南・県央エリアは、圏央道など交通網の充実に加え、空港や港湾の利用しやすさを背景に、県外からの企業立地件数や工場立地面積、工場立地件数が全国トップクラスです。しかし、こうした県外の企業の場合、本社がIT製品を一括で調達するケースが多く、地元のIT企業が販売できない点には難しさを感じています。
農業分野は、農業機械による無人化やドローンによる除草剤の散布、日射量や土壌水分量などの測定値から最適な量の潅水を行うAI潅水施肥装置の導入といったスマート農業が推進されています。
一般企業では、人手不足の解消や生産性向上を目的にDXへの関心が高まっています。この流れを加速していくには、例えばクラウドの普及で考えた場合、クラウド導入の「事例が増える」こと、リスキリングやスキルの向上などによるメリット・デメリットを「正しく理解する」こと、セキュリティやプライバシーの保護など「安全性の担保」を実感できることが必要だと感じています。
茨城県は、積極的にスタートアップを支援しています。今後は、スタートアップと地元企業がつながることで、県内のITが盛り上がっていくと思います。
和歌山エリア
自治体主導でIT企業を積極誘致 世界遺産などで観光DXを推進
拠点エリア 関西エリア拠点データ 和歌山支店
住所:和歌山県和歌山市北ノ新地1-25(AIG和歌山ビル6F)
電話番号:073-425-2371
和歌山県は、大阪府の南に位置します。広大な紀伊半島には、豊かな自然や世界遺産などの観光資源があります。地域的な課題は、若い世代を中心とした人口流出です。同県の人口は約90万人ですが、年間1万人のペースで減少が続いています。労働人口減を補い企業活動を継続するために、デジタル化が欠かせなくなってきています。中小企業が多く、大規模なIT投資はまだ少ないですが、業務効率化のニーズ、IT投資への関心は高まっていると感じます。
特徴的な動きとして、和歌山県や和歌山市などの自治体が、IT企業の誘致に積極的に取り組んでいることが挙げられます。魅力として打ち出しているのが、海も山もある和歌山の豊かな自然です。スローライフを楽しみながら仕事をすることを提案し、海岸沿いや観光スポットにワーケーション用の環境を整備。東京でオンラインゲームを開発している会社が拠点を置くことが決まりました。企業誘致で移住を促し、雇用の機会を増やすという狙いもあるようです。
もう一つ自治体の動きとしては、紀の川市が先進的な取り組みを行っています。同市は「自治体窓口DX SaaS」を活用し、全国で初めて、住民が窓口で申請のための書類を書かずに手続きができる「書かない窓口」のサービスを1月に導入しました。同市に限らず、各自治体で住民サービスのIT化が検討されています。
県内には、世界遺産の熊野古道といった観光名所や、おいしいフルーツなど魅力的な要素がたくさんありますが、それが和歌山のものだとうまくアピールしきれていない側面がありました。そういった現状を打開しようと、観光DXも進んでいます。メタバースを活用し、和歌山城などをモデルにしたゲームマップを人気オンラインゲーム上に登場させて訪れてもらうきっかけにしたり、県内のアミューズメント施設で外国人観光客向けに多言語ガイドを導入したりと、デジタル技術が観光を盛り上げる一翼を担っています。地域活性化のために、ITが果たす役割は今後さらに大きくなっていくでしょう。
香川エリア
産地活性化に一役 データの有効活用が重要に
拠点エリア 四国エリア拠点データ 高松支店
住所:香川県高松市寿町2-3-11(高松丸田ビル4F)
電話番号:087-811-0232
香川県は四国の東北部に位置し、約1876平方メートルの面積は全国47都道府県で最小です。香川といえばやはり「うどん」です。2022年に行われた総務省の家計調査によると、県庁所在地である高松市における「生うどん・そば」の1世帯あたりの年間支出金額(購入)は5764円で全国1位。外食の「日本そば・うどん」の年間支出金額でも、全国平均の5911円に対し、約2.4倍の1万3963円で全国1位となっています。産業は建設機械、造船、自動車部品、電機機械などを中心に広がり、溶接や切削加工、金属プレス加工といった基盤技術に優れた企業が集積しています。
IT活用の例としてはスマート農業が挙げられます。農業者の高齢化や労働力不足等に対応するため、県が中心となって、直進アシスト機能付きトラクター、ドローン、自動水管理システムなど地域の実情に即した技術の現場実証や導入支援を進め、生産管理の効率化・省力化などを図っています。
先進的な事例として、県やJA、香川高専、地元企業らが開発した環境制御システム「さぬきファーマーズステーション」があります。主にイチゴ栽培で活用され、遠隔操作で温度や二酸化炭素濃度などのモニタリングと制御を行えます。イチゴ栽培では温度と二酸化炭素濃度が、収穫量増加や糖度向上に関係するそうです。システムではデータをクラウド上で管理できるほか、集めたデータを分析し、知見を共有することで、経験の少ない生産者でも適した環境をつくり出すことが可能となります。生産者が減少する中で、ITを使って産地を活性化する試みと言えるでしょう。
一般企業でもデジタル化を進め、データを有効活用する取り組みは重要になるでしょう。農業だけでなく、多くの領域でデータ活用への関心が高まってほしいと感じています。
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