Special Issue
デジタルシフトウェーブ 人の意識と行動の変革がDXの成功をもたらす DX人材育成にリスキリングが欠かせない
2024/02/15 09:00
週刊BCN 2024年02月12日vol.2002掲載
3日目の基調講演は、デジタルシフトウェーブ・代表取締役社長の鈴木康弘氏による「DXの成功は、人の意識と行動の変革がもたらす。」で、DXコーチング&コンサルタントをしている同氏は、リスキリング(学び直し)を含む人材育成がDX実現に寄与するか語った。
狩猟社会(Society 1.0)に始まり、現在では創造社会(Society 5.0)にさしかかっている人類の変革の歴史。「デジタルを活用した変革」であるDXを実現するための中核テクノロジーとして、「ChatGPT」に代表されるAIが注目されている。新しいテクノロジーを駆使できるDX人材を育成するために、従業員にリスキリングをさせる企業が増えてきた。「振り返ってみれば日本は工業社会(Society 3.0)で優位に立ち、情報社会(Society 5.0)では敗者になった」と鈴木氏。「創造社会で再び活躍するには、DXを武器として変革の波に立ち向かうことが求められている」とした。
かぎとなるのが教育だ。2020年に改訂された学習指導要領では「自分で考え、表現し、判断し、実際の社会で役立てる」人を育てるために、生徒自身が主体的・能動的に参加する「探求学習」を提唱。大学などの高等教育では文理融合と即戦力人材が進む。社会人についても、DXリテラシー(特にパーソナルスキル)を身につけてもらうためのリスキリングが欠かせない。
ただ、DX人材育成の現場では教科書に載っていない工夫が必要になるという。経営者から持ち込まれる典型的な訴えは、「DXに挑戦しない保守的な従業員が多い」。バブルが崩壊して就職氷河期が始まった1990年代以降の日本の若者は「自由よりもルールを守るほうが楽」と考えており、人間関係の希薄化によって保守化が進んでいる。この状況を変えるのに必要なのは、先人たちに仕事の基本(型)を学ぶこと。そのためのWebコンテンツとしてデジタルシフトウェーブは「DXマガジン」を公開しており、鈴木氏自らも『仕事の心得帖』を著している。
DX推進の立場にある人からは「どうやってイノベーション(変革)を起こすのか」との質問が多く寄せられる。鈴木氏の回答は、「イノベーションは、異質な人たちと衝突したり融合したりする非日常の場で生まれてくる」。そのための場として、同社は「DXセミナー」を月に2回程度開催しており、DX実践者の話が参考になるだけでなく懇親会でアイデアが得られることもしばしば。鈴木氏が主宰する「日本オムニチャネル協会」も業界の壁を越えた共創の場となる。鈴木氏は「本気でDXに取り組む企業や個人となるか、否か。私たちは、今、その分岐路に立っている」と締めくくった。
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