Special Issue
100th anniversary SANWASUPPLY BRAND STORY TOP対談 新社長のもとで次の時代を目指す これからも市場に供給する商品は変わり続けていく
2024/01/18 09:00
週刊BCN 2024年01月15日vol.1998掲載
サンワサプライは2023年に創業100周年を迎えた。ここに至るまで幾度となく業態変更を重ね、先代の社長である山田哲也会長はコンピューターサプライビジネスに軸足を移して事業を拡大、現在は4代目社長の山田和範氏がかじ取りを担っている。100周年という記念すべき地点にいるサンワサプライの山田社長に、これまでの歴史とビジネスの現状、そして未来への展望について、BCN社長の奥田芳恵が聞いた。
地下足袋、段ボール、そしてコンピューターサプライヤーへと事業転換
――創業100周年おめでとうございます。まずは創業からの歴史を教えてください。山田 当社は1923年に、私の曾祖父が岡山に縫製工場を立ち上げたのが始まりです。当初は地下足袋を製造していましたが、その後祖父にあたる2代目がダンボール工場に事業転換し、父で現会長である3代目がコンピューターサプライビジネスを立ち上げて、現在に至っています。いわゆる家業を継承したかたちですが、世代ごとに業種を変えているのが特徴です。
会長は、当時、段ボール製造事業が頭打ちになり、新事業を模索していた中で「これからはコンピューターの時代になる」と感じ、NECのPC販売代理店やPC周りのビジネスを始めたそうです。すると、PCを納めたお客様からラックやケーブルはないのかと次々にお話をいただくようになり、お客様が求められる商品を企画開発、製造し、提供することによって会社が現在のかたちになりました。
――世代ごとに業種が変わっているということですが、ご自身はこれから会社をどう成長させていきたいとお考えでしょうか。
山田 今よりも良い状態で次の世代につないでいきたいですね。これまでの歴史の中で今が一番会社の規模も売り上げも大きくなっている状態なので、すぐに事業を変えることはありませんが、取扱商品はこれからの時代に合わせて少しずつ変えていく計画です。現在約1万2000点の商材を取り扱っていますが、10年、20年と経ったときに、半分以上のラインアップは変わっていなければならないと認識しています。
当社の商材は創業から一貫して「決して主役ではないが、主役を支える縁の下の力持ち的存在」という共通点があります。初代の地下足袋、2代目の段ボール、そして3代目のコンピューターサプライ、どれも決してメインではないがないと困るもの、あると便利で快適な環境を提供できるものです。これからの時代でそろえていく商材も、その一連の流れの延長線上にあると捉えています。
社内の仕組みを整備しマインドを可視化
――具体的に社長に就任されてから変えたことは?山田 社長になって大きく変えたことはありませんが、専務の時代から少しずつ内部の改革は進めてきました。会長は先見性があって、今も新しい商品開発を続けているのに対し、私は社内の仕組みの整備を行ってきました。具体的には、12年にSAPのERPを導入し、その後に部門別採算制度の仕組みも取り入れ、人材育成にも力を入れています。
――会長と社長がそれぞれ強みをお持ちで、すみ分けができているのですね。
山田 もちろん、私が社長に就任するにあたって変えたこともあります。当社には「あるべき人間社会の達成に貢献する。」という経営理念があります。この経営理念の下、会長が築いた一時代を次の新たな時代へつなぐにあたり、当社の思いと精神そして言葉を私の思いと合わせ、社員と協力しながら「ミッション」「ビジョン」「フィロソフィー」という経営方針を具現化した手帳にまとめました。
――それは素晴らしい取り組みですね。手帳の中に書かれた新しい経営方針の中身について少し教えていただけますか。
山田 例えば「あるべき人間社会」という定義はこれから変わっていくでしょう。市場では生成AIやロボットが登場する一方、人間の労働力は減り、人間のみで成り立つ社会から変わりつつあります。そのような世界感における「あるべき人間社会」とは、人間だけが裕福な社会ではなく、あくまで人間が中心だが、新たなテクノロジーや価値と調和した新しい世界、SDGsや環境への配慮も含めて考えていく社会だ、ということです。
自社拠点を強化しつつ社会へ先回りして商品開発
――新たな物流拠点を増設されていますが、その背景や市場環境についてお聞かせください。山田 時代や市場の変化に合わせて、新たな分野・カテゴリーの新商品を数多く投入していくにあたり、倉庫を何カ所も借りるのではなく、規模を拡大した新拠点に集約しました。それによって業務効率を上げ、今まで以上に迅速かつ円滑にお客様の元へ商品をお届けできると考えています。
――物流の「2024年問題」を見据えての対応でしょうか。
山田 拠点の設置は2024年問題とは直接関係ないですが、商材は物流問題に対応した展開を考えています。物流のDXで機械化されてタブレットやスマートフォン、ロボット技術を使うようになり、現場にも関連するものが必要とされています。端末に関わる既存の商品に加え、台車や作業台などの物流向けの新商材も取り扱いを始めており、実際にお客様からの反応は上々です。商品開発は、世の中を多少先回りして試験的に市場へ投げて、その反応を見てから本格的に開発する、という流れになっています。その一環として、Amazon Goの登場や昨今の無人店舗、無人レジ、BOPISが出てきている流れから物流の次も見据えて「次世代店舗向けカタログ」というものも作成しました。
――23年のビジネス状況はいかがでしたか?
山田 小・中学校でのPCやタブレットの導入やコロナ禍でのテレワークなどの需要があった時期と比べると落ち着いていますが、依然として利益は増えています。われわれはさまざまな販売先やお客様に恵まれており、また商品カテゴリーも多岐にわたるので、毎年毎年、木の年輪のように少しずつですが成長を続けています。
物販の拡充とWebサービスへの進出 他分野へのさらなる進出も視野に
――物流以外で、今年注目の商品はありますか?山田 新たな取り組みとして、全国の事業者をホームITドクターやITコンシェルジュのような存在としてお客様にご紹介する「TEDASUKE」というマッチングサービスを開始しています。今はテレビや家具の設置や組み立てなどが主なサービス内容ですが、将来的にはPCセキュリティやネットワークの設定なども担ってもらう計画です。そのようなかたちで、物販だけでなくWebサービスにも進出していきたいと考えています。
新商品ということでは、コロナ禍を経て変わった働き方に合わせて、ポータブル電源やドッキングステーション、ワークブースといった商材に注力しています。特にポータブル電源は1500Wまで出力可能で、接客ブースのような近くに電源がない場所でのディスプレイ用電源としてご利用いただくケースも多いです。ほかにも、環境に配慮した充電式電動エアダスターや360度の映像を表示できるWebカメラなどもラインアップしています。そして今年は物流や倉庫が新しくなるので、今以上に「あったらいいな」と思っていただけるような商品や、まだ顕在化していないニーズを開拓する商品やサービスを拡大していきます。
――期待できそうです。それでは最後に、これまで積み上げてきた100年をベースとした今後のビジョンについてお聞かせください。
山田 現在のサンワサプライを形づくる要素の一つとして、実は弟(山田祐三氏)の存在があります。彼が中国のサンワ上海の総経理となってから、工場の品質やモノの原価管理をするようになり、一歩踏み込んだ商品開発ができるようになりました。会長が会社を大きくし、私がシステム化や人材育成強化など会社がさらに成長するための基盤を整備し、さらに弟が中国でサプライチェーンの強化を行ってモノづくりを支えています。会長、社長、総経理の三つの力の和によってサンワのトライアングル経営がうまく回っているのが今の状態です。この良い状態を維持していこう、というのが短中期的目標になりますね。
当社はサンワサプライという社名ですが、決してサンワ“コンピューター”サプライとは名乗っていません。それはつまり、当社が市場に供給する商品はコンピューター関連のみではなく、常に変わり続けていくということです。次の世代では航空宇宙産業のサプライ機器の開発を手掛けているかもしれませんし、空飛ぶ車の販売代理店になっているかもしれません。このようなかたちで次の世代、その次の世代がその時々にできることをできる範囲で着実にやり続けていけば、次の100年も続いていくと思っています。
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