Special Issue
週刊BCN 特別連載企画<第2回> DISのエキスパートに聞く 日本のIT利活用の実態は
2023/11/23 09:00
週刊BCN 2023年11月20日vol.1993掲載
中越・上越エリア
生産性向上目的での導入が先行 ITを起爆剤にさらなる発展へ
拠点エリア 信越エリア拠点データ 長岡営業所
住所:新潟県長岡市東坂之上町3-2-6(日本生命長岡ビル5F)
電話番号:0258-31-2351
中越・上越エリアは明治期以降、石油・天然ガスの採掘・精製が本格化し、それに関連する掘削部品、バルブの製造に端を発して、切削加工や製缶、めっき、鋳造、鍛造、プレス、金型など、ものづくりの基盤とも呼べる技術を有する企業が集積しています。また、雪解け水と標高差を生かした水力発電によって電炉工業・電解工業が発展し、多くの重化学工業が立地するほか、近年ではエレクトロニクス産業の成長も著しいものがあります。
そのため、IT導入については、生産性向上を目的としたIoTや自動化、ロボティクス領域が先行している印象です。新潟全体では他都市と比べてデジタル化が遅れている面はありますが、効率化や高付加価値化を目指したIT導入の機運はますます高まっていくとみられます。
最先端のIT技術を活用する動きも進んでいます。2021年には北陸新幹線上越妙高駅の近くに、ローカル5Gネットワークの実証実験が可能なオフィス・コワーキング施設「JM-DAWN(ジェーエム・ドーン)」が開設されました。産官学の連携プロジェクトによる取り組みで、ローカル5G環境を活用したサービスやプロダクトの開発を目指す企業を誘致・集積し、地域活性化や産業振興を図る狙いです。ちなみに「JM」は「上越妙高」の略で、「DAWN」には英語で「夜明け」という意味があります。
ローカル5Gは屋外利用にも対応しており、建機の自動運転やドローンの高度操縦など、さまざまな規模での実証実験を行うことができます。製造業、建設業、農業、市民生活といった多様な分野での技術開発が期待されます。
上越・中越エリアに限らず、県内では人口流出が大きな課題です。先端技術を有する企業を招くことで、流出を食い止めるだけでなく、都市部から人が集まる流れが生まれることを願っています。思えば、昔も上越・中越エリアは石油産業をはじめとする最先端の産業を基軸に成長してきました。現代でも最新のITを起爆剤に、さらなる発展を遂げられればと感じています。
青森エリア
人手不足や高齢化を支援 自治体がDXの後押しに積極姿勢
拠点エリア 東北エリア拠点データ 青森支店
住所:青森県青森市中央1-25-9(AQUA青森中央ビル6F)
電話番号:017-732-5503
人口約120万人の青森県は、漁業や林業、農業といった1次産業が盛んです。特に三方を海に囲まれていることから、工場の製造品は、水産加工品などの食料品が高い比率を占めていますが、水産加工場などのIT化はまだ本格化していない印象です。細やかな手作業が求められる作業の特性と、地元の雇用を守るという意味で、IT化と表裏一体の面があるのが理由の一つかもしれません。ただ、人口の35%を65歳以上が占める全国でも高い高齢化率、若者の県外への流出という両面から、働き手不足は深刻です。ITによる生産性向上は待ったなしだと、地元企業の認識は変わっていると感じています。
全国有数の水揚げ量がある八戸市の八戸港では、定置網などで水揚げされた魚をAIで選別するシステムの実証試験が行われました。人手不足が進む現場作業員の負担を減らすことが狙いです。また、日本一の生産量を誇るりんごについて、生産現場から消費者までワンストップで連携を目指す「りんごDX」という取り組みも始まっています。IoT農業の見える化、ドローンによる受粉やロボット草刈り機の導入などによって、高齢化が進む担い手を支援しています。自治体による中小企業向けDX支援の機運も高まっています。2023年5月には、ビジネスの成長と業務効率化をサポートする「青森県DX総合窓口」が開設されました。
自治体主導でIT導入が期待される分野の一つが、観光です。外国人観光客は県内でも増えていますが、案内表示など、インバウンド対応が遅れている面があります。県内の事例として、青森市の三内丸山遺跡では、タブレットによる縄文時代のVR体験と、発掘調査時の詳細な解説をするITガイドの提供があります。英語、中国語など5カ国語に対応しており、好評だそうです。こうした観光コンテンツの充実にITが寄与する部分は大きいと思われます。自治体が中心となり、人手不足を補うソリューションの導入が今後広がっていき、県内の生産性の向上につながることを願っています。
神戸エリア
多様な企業が活用に前向き 国内初の開発支援拠点開設も
拠点エリア 関西エリア拠点データ 神戸支店
住所:兵庫県神戸市中央区京町69(三宮第一生命ビルディング12F)
電話番号:078-392-2650
神戸市に対して、どのようなイメージがありますか。昔から港町として栄え、かつて外国人が住んでいた旧居留地などを抱える大都市で、多くの人は「おしゃれな街」と考えるのではないでしょうか。しかし、神戸の魅力はそれだけではありません。自然豊かな山や海に加え、地元の経済をけん引する産業があり、それぞれが融合していることが大きな特徴になっています。
産業は、多種多様といえるでしょう。例えば、輸送用機器や鉄鋼、食料品などの製造業が本社を構え、臨海部には多くの工場が立地しています。医療では、関係企業や団体の集積が進み、国内最大級の産業クラスターといわれています。IT関係でも先進的な動きがあり、米Microsoft(マイクロソフト)は23年10月、国内初で、世界で6拠点目となるAIやIoTの開発支援拠点「Microsoft AI CO-Innovation Lab」を神戸商工貿易センターに開設しました。規模や業種を問わず、DXにつながる技術やソフトウェアの開発を支援することが決まっています。
企業のIT活用では、大手企業がIoTやロボティクスなどを活用して生産性の向上に取り組んでいるほか、食料品の企業も前向きな姿勢です。自治体が進めるスマートシティ関係では、インフラ・施設の保守点検にドローンやドライブレコーダー、AIを組み合わせた技術などを活用し、少ない人手でより高度な調査・点検を行い効率的に補修しています。ほかにも、農業に衛星データを活用したり、外来生物の把握・駆除にデータを使ったりと、いくつかの成功事例が出ています。今後、このような動きがエリア全体に広がっていくことを期待しています。
ただ、課題がないわけではありません。神戸市の人口推計は、23年10月時点で22年ぶりに150万人を下回り、将来的に増加に転じる可能性は低いとみられています。企業の中でIT人材の不足は既に顕在化しています。エリア内のIT活用をさらに進めるためには、人材の育成や企業の誘致が必要で、そのためには産学官を含めた地域全体の連携が一層大切になると思っています。
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