Special Issue

霹靂社 DXを真に支援できるSIerとは IT市場の現実を踏まえた価値提供へ

2023/08/24 09:00

週刊BCN 2023年08月21日vol.1981掲載


 特別講演では、霹靂社代表の本多和幸氏が登壇。「本当に『DX』の支援ができるSIerであるために~IT市場の現実を踏まえた価値創出を~」をテーマに講演を行った。

霹靂社
代表
本多和幸氏

 一般論として、経済状況が良好だと企業のIT投資意欲が高まり、SIやITサービスの市場規模も拡大していく。日本の企業は以前からDXへの意欲が高く、新型コロナウイルス感染症が2023年5月に5類へと引き下げられたこともあって、22年度のIT投資動向はきわめて積極的だった。

 「ある調査会社の調べでは、22年度のIT予算額が前年度対比で増加したとする企業が41%もあった」と本多氏。売上規模500~1000億円の中堅企業では過半数がIT予算額を増額していると紹介した。

 では、日本企業のそうした旺盛なIT投資動向を背景に、SIやITサービスの市場も今後さらに拡大していくのではないか。

 そうした楽観的な見通しに対して、本多氏は「当社が事例取材をしていると、それとは異なる風景が見えてくる」と疑問を投げかける。「SIerの存在感が希薄になっている」というのだ。

 例えば、モバイル決済とポイントサービスの基盤を刷新した某通信サービス企業は、移行先クラウドベンダーのプロフェッショナルサービス(コンサル)をコアパートナーとしてプロジェクトに招へい。「その通信企業は発注者側の立場でSIerに対峙してもらうためにコンサルを引き入れたようだ」と本多氏は捉える。

 また、あるメーカーはデジタル基盤整備プロジェクトを経営企画部門、セールス/マーケティング部門、SaaSベンダーのプロフェッショナルサービス(コンサル)の3者だけで編成。SIerの存在感がないどころか、社内の情報システム部門の役割すら限定的だったという。このほか、SIerへの依存から脱却してビジネスの速度を高めるために、情報システム部門とクラウドベンダーのプロフェッショナルサービス(コンサル)だけでDX基盤整備をした企業の例もある。

 そこで本多氏がSIerに勧めるのが、顧客企業のDXにトータルで伴走できる存在となることだ。コンサルだけ雇って業務アプリは内製するという動きが企業側にあるのは確かだが、そのためのDX推進人材は、量においても質においても不足している。顧客のビジネスと経営をよく知る人材をSIerが提供できるのなら、社外リソースであっても受け入れてもらえるはず。「新たな市場を生き残って、ぜひ日本社会のDXをけん引してほしい」と本多氏はSIerにエールを送った。
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