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AI搭載のIPカメラとストレージをワンストップで提供し、管理コストを大幅カット

2023/07/13 09:00

 防犯や監視に使われるネットワークカメラ(IPカメラ)の需要が高まっている。しかし、IPカメラは映像記録媒体とソフトウェアを別個に管理しなくてはならず、そのコストが長年の課題だった。これを受け、ネットワークアタッチトストレージ(NAS)を使ったデータ管理、監視ソリューションを展開するSynologyは、AI搭載のIPカメラ「BC500」「TC500」の提供を開始した。このカメラを使い、さらに同社の他製品と組み合わせれば、コストを抑えながらあらゆる場所のセキュリティを確保できるようになる。

IPカメラのニーズが高まっているがメンテナンスに課題

 IPカメラ市場が急成長している。調査会社の米Grand View Researchによると、世界のIPカメラ市場規模は2021年に約98億米ドルに達し、さらに2022年から2030年にかけては約14.1%と非常に高い年間平均成長率になると予想されている。

 監視カメラに対する関心が高まっている背景には、在宅勤務の普及がある。オフィスや組織管理下の施設に人が集中することが減り、その代わりに監視すべき地点が増えているのだ。

 IPカメラはそれ単体では成立せず、NASなどの映像を記録する媒体、そしてソフトウェアが必要だ。しかし、それらの管理に課題があった。「小型の監視カメラが民間で広まり始めてからおよそ10年が経ったが、ユーザビリティにまだ課題がある。ファームウェアをアップデートするには、カメラのIPアドレスへ個別にアクセスして設定し、その後にNAS側の設定を別途行わなくてはならず、多くの労力がかかっていた」と、Synology Japan のMike Chen社長は語る。
 
Mike Chen社長

 Synologyはこれまで、同社のNAS製品などを活用したビデオ管理システム「Surveillance Station」を提供してきたが、このほど新たにIPカメラ「BC500」「TC500」をリリースした。これにより、監視カメラやその管理システムをSynology製品で統一できるようになった。製品同士の互換性が確保されるため、初期設定やファームウェアアップデート、そしてメンテナンスの負担を軽減できる。

 BC500は屋外向け、TC500は屋内向けのIPカメラで、いずれも110度の広角、5メガピクセルの高精細センサー、対候性IP67(塵埃が内部に侵入せず、一時的に水中に沈んだとしても壊れない)と高い性能を有している。また、HDR・ナイトビジョンのモードを持ち、照明の条件に関わらず常にクリアな映像をとらえることが可能だ。同社のテクニカルマーケティングコンサルタントである内山裕子氏は「IPカメラの多くは視野角が80度から90度しかない。対してBC500とTC500ならより広い範囲をとらえられるため、死角を大幅に減らせる。また、防塵・防水性能も高く、屋外での長期間使用も可能だ」と説明する。
 
テクニカルマーケティングコンサルタント
内山裕子氏

カメラ映像内の人や車両をAIが検知して警告

 IPカメラが普及した背景の一つに、AIによる画像解析といったテクノロジーの向上もある。設置しなくてはならない場所が増える一方で監視する人員が不足する中、AIによる解析と自動通知が監視の効率向上に役立っているのだ。BC500とTC500も「人と車両の検知」「侵入検知」「インスタントサーチ」とAIによる三つの機能を有している。

 人と車両の検知は、施設周辺での人や車両の徘徊を防ぐ機能だ。検出ゾーンと時間帯を定義し、その中へ侵入する人や車両を検知したらすぐさま通知する。侵入検知は、仮想の境界線を設定し、そこを人や車が通過すると警告を発する機能である。そしてインスタントサーチは、検出ゾーンで過去に撮影された映像から人物、車両、動体などを検索できる機能だ。調査したいエリアを選ぶだけで、過去に検出された人物や動体をすぐに示せるので、調査の迅速化を期待できる。

 さらに、GPUを搭載し、高度な分析機能に対応したSynologyの製品「DVA1622」「DVA3221」と組み合わせれば、人数の計測、車両の計測、顔認証、ナンバープレート認識なども可能だ。

 カメラに接続しているデバイスを管理し、未確認のデバイスが接続されていたら切断/ブロックする機能や、プライバシーマスクによる保護といったセキュリティ機能もある。HTTPSとSRTP(Secure Real time Transport Protocol)のサポートもあり、カメラとSynology NAS間で転送されるビデオストリームはセキュリティが保証されている。

 SynologyのNASには専用のOSが付属しており、さまざまなアプリケーションを無料で利用可能だ。内山氏は「ハードウェアを1回購入すれば、その後ライセンス費用や利用料が別途かかることはない。個人向けには写真管理、法人向けにはデータ保護やバックアップ、ディレクトリサービスなどのアプリケーションがある。ネットワークビデオ録画・管理システムのSurveillance Stationもその一つだ」と語る。

 さらにSynologyでは、iPhoneやAndroidスマートフォンでSurveillance Stationの機能を利用できるモバイルアプリ「DS cam」も提供中だ。外出先でも通知を受け取ったり、カメラの映像をすぐに確認したりできる。なお別途利用料が必要だが、NASだけでなくクラウドにも監視映像を同時録画して、データをバックアップ・保護できるサービスも用意している。

映像や音声の品質とAI機能が好評 サポートコンテンツも充実

 SynologyのBC500、TC500とNASを使った監視サービスの顧客は、商業ビルや小売店、学校、工場、道路、公園など多岐にわたる。導入した顧客からの評価について内山氏は「映像や音声の質が高く、メンテナンスも楽、AIも便利との声をいただいている」と述べた。

 Surveillance Stationには、複数のカメラで撮影したデータを集中管理する機能もある。チェーン店を展開する企業なら、各店舗や倉庫に設置した映像を離れた本社で確認するといった使い方ができるだろう。ほかにも、電力関連の企業や自動車ディーラーなど、動体検知のAIを利用している顧客も多い。Chen社長は「Surveillance Stationを利用しているお客様は、以前はサードパーティ製のカメラを使うしかなかった。現在はBC500、TC500の実証試験を進めており、AIの導入に興味を持ってくださる方が増えつつある」とした。

 AI搭載カメラBC500、TC500の登場で、NASと組み合わせたビデオによる監視・管理システムをSynologyで一貫して提供できるようになった。また同社では、Synology NAS向けのハードディスクの販売も行っている。内山氏は「Synology製品でシステムを構築するとメンテナンスが非常に楽になる。設定やメンテナンスにかかる労力やサポート窓口へ問い合わせる手間も減らせるだろう」と加えた。

 これは販売パートナーにとっても大きな意味を持つ。トラブル発生時にさまざまなベンダーに問い合わせる必要がなく、Synologyのみに連絡すれば済むからだ。Chen社長によると、Synology製品の故障率は1%未満と低く、さらにトラブルシューティングについても多くのサポート資料を公開しているという。それで解決しなければSynology Japanのテクニカルサポートチームが対応にあたる。もちろん日本語での対応も可能だ。

 「販売パートナーに対して、多くのマーケティング資料や資金を提供し、販売をサポートしている。パートナー向けのオンライントレーニングを定期的に実施し、さらに支援のヒアリングも行っている。ビデオによる監視は今後伸びていくビジネスなので、5年10年と長く付き合えるパートナーと一緒に、Synologyも成長していきたい」とChen社長は今後の展望を語る。

 SynologyはNASや監視システムの提供において、政府や自治体、学校、企業など、分野を問わず顧客のデータを保護することを事業の核としてきた。この度自社製カメラの提供を開始したことを受け、さらにその価値を高めていく構えだ。2024年にかけて、より高精細なモデルや、360度のパノラマビジョン、Wi-Fi接続など、カメラのラインアップや機能を拡充し、家庭向けにもビジネス領域を広げていく予定である。
 
ストレージ、ビデオ管理システム、
そしてIPカメラまで全てSynology製品でそろえられる
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外部リンク

Synology=https://www.synology.com/ja-jp

IPカメラ製品ページ=https://www.synology.com/ja-jp/products/camera-500

Surveillance Stationページ=https://www.synology.com/ja-jp/surveillance