Special Issue
レノボとパートナーの協業でランサムウェアの脅威に対抗、Lenovo ThinkSystem DMでよりスマートなデータ管理ソリューションを提供
2023/05/26 09:00
バックアップに強いパートナーを探していた
――まず、デジタルテクノロジーの現況について教えてください。酒井 当社は1988年に創業し、今年で満35年を迎えます。当初は、UNIXサーバー、ストレージ、バックアップ製品などの輸入販売をしていました。国内第一号パートナーになっている製品も多く、当時は最先端の製品をいち早くお届けすることが当社の強みでした。2009年に株式会社DTSのグループ入りをしてからは、ソリューションビジネスに徐々にシフトしていき、現在のビジネスの中心は、IAサーバーを使った仮想基盤の構築、旧基盤からのデータ移行、新基盤のデータ保護の3領域となっています。お客様の口座は累計で約2300社ありますが、ビジネスの柱となっているのは、大学や独立行政法人などの研究開発組織(R&D)と従業員500人以下の中堅・中小企業です。
――どのようなきっかけから、デジタルテクノロジーはレノボ・エンタープライズ・ソリューションのパートナー企業になったのですか。
酒井 そもそもの始まりは、当社がUNIXサーバーからIAサーバーへと軸足を移した03年9月に日本IBM様と代理店契約を交わしたことでした。このときはUNIXサーバーから「System x」への移行がビジネスの中心で、日本IBM様のSEからLinuxやVMwareを載せるときのさまざまな知見を伝授していただきました。
――その後、日本IBMのサーバーやストレージのビジネスがレノボ・エンタープライズ・ソリューションズに移されます。
酒井 実のところ、移管後しばらくは足が遠のいていました。しかし、22年夏にストレージとバックアップの領域で協業の可能性があるとのお話がレノボ・エンタープライズ・ソリューションズ様からあり、担当領域の整理などをした上で、22年からパートナー企業として再度やらせていただくことになりました。
白川 私はストレージビジネスの責任者として、当社の今のストレージビジネスにご賛同いただき、ご協業いただけるパートナー様を探しています。その過程で浮上したのが、バックアップやリストアに強みがあり、仮想化の移行ソリューションやVMware関連の案件を得意とされているデジタルテクノロジー様だったというのが今回の経緯です。具体的には、22年春にお声をかけさせていただき、夏から本格的に話を進めていきました。
ランサムウェアの脅威を背景にバックアップ案件が増加
――ストレージやバックアップに関して、日本のIT市場はどのような課題をかかえているのでしょうか。酒井 最もはっきりしているのは、データ容量の増加です。この5年で倍になっているのではないでしょうか。その多くはただ保管されているだけで、データの管理や保護に対する意識が低い企業も多く、バックアップをとっていない例も散見されます。
白川 当社が接しているお客様では、保管しておく義務が法的にあるなどの理由から、捨てるに捨てられずに、ただアーカイブされているケースも多いようです。最近では、電子帳簿保存法の改正施行によって、データを保管すべき場面も増えました。ただ、大手企業ではそれらのデータを安全に保管するためのソリューションがすでに導入されているのに対し、ミッドレンジ以下の企業では「バックアップはマイナスのコスト」というイメージがまだ色濃く残っています。
――データ容量が増える要因として、DXの進展も考えられますか。
酒井 一概にDXが要因とはいえません。むしろ、個々のファイルの容量が画像などによって大きくなり、ファイルの数も増えていることが、データ容量の増大を招いているのではないでしょうか。
白川 医療系では電子カルテや医用画像情報システム(PACS)の導入が進み、製造系では3D CADでの設計やIoTを活用したファクトリーオートメーション(FA)の導入が今後急速に広がっていくものと思われます。そうしたデジタル化をDXと呼ぶのであれば、DXによってデータ容量が大きくなっているという見方もできるでしょう。
――日本の企業はランサムウェアに対してどの程度の危機意識を持っているのでしょうか。一般的には、ランサムウェアによるデータ消失や暗号化への対策としてバックアップ/リストアのソリューションが有効だといわれていますが。
酒井 現実に、ランサムウェア対策としての引き合いは非常に多くいただいております。当社は「データ保護の本当の目的はバックアップしたデータを正しくリストアできることである」と考えており、その意味で、データ保護のソリューションは「リストアソリューション」と呼ぶことにしています。
白川 調査会社のIDCが日本含むアジア太平洋企業554社を対象に最近実施した調査(※1)では、45%の日本のCIOが「ランサムウェアをきっかけに、データ保護とビジネス継続性の対策を取らなければならないと考えるようになった」と回答しています。当社としては、このような調査データをもとに、どんなアプローチでお客様に提案していけばいいかをデジタルテクノロジー様と検討していくつもりです。
(※1)
Smarter Data Management Playbook 2023
ダウンロードなどは
https://www.lenovo.com/jp/ja/servers-storage/solutions/data-management/data-management-cio/
データ容量増とデータ保護の課題解決へ
――そのような課題に対して、両社はどのようなソリューションを日本のIT市場に提案されるのでしょうか。白川 一つは、サーバーレジリエンシーを確保するためのバックアップやデータ保護のソリューションです。従来、バックアップソリューションにはあまりフォーカスが当たることがなく、二の次、三の次の存在になっていました。しかし、ランサムウェアの脅威によって投資の優先度が上がってきているのは確かで、お客さまの反応も非常に強くなっています。
酒井 ソリューションの中核となるのは、ファイルサーバーとバックアップツールです。ランサムウェアに強いファイルサーバーとしてわれわれはLenovo ThinkSystem DMシリーズを推しており、バックアップ/リストアツールの「Veeam」と組み合わせたソリューションをお客様に提案しています。当社はVeeam日本法人発足時からのパートナーで、21年には国内唯一のコンサルティングパートナーである「Veeam Accredited Service Partner」として認定され、エンドユーザー様はもちろん同業のSIer様よりVeeamのライセンスと役務のお引き合いをいただいています。
白川 当社の「ThinkSystem DM」シリーズはハイブリッドフラッシュを搭載したNASストレージで、最新の機械学習(ML)技術に基づくプリエンプティブ検出を内蔵しているのが特徴です。ランサムウェアは感染後しばらくたってから発症するといわれておりますので、いかに早く発見して、感染前のバックアップからリストアするかが重要になります。バックアップで回復できる期間を過ぎてから発見されることがないようにするために、MLベースのプリエンプティブ検出機能はきっとお客様のお役に立てると思います。また、当社はVeeam Softwareとワールドワイドのアライアンスを締結しており、お客様のサーバーレジリエンシー確保とデータ保護をハードウェアメーカーとしての立場でご支援しています。
――両社の協業に対して顧客はどのように反応していますか。
酒井 レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ様に対して、お客様の多くはポジティブ、ネガティブのどちらのイメージも持たれていないというのが実情です。このたびの協業を通じて、当社は「レノボ・エンタープライズ・ソリューションズはこのような企業で、このような製品・サービスを持っており、エンドユーザー対応もしっかりしている」とお客様に説明していますので、やがては正しいメッセージが広まっていくと確信しています。
白川 「レノボ」はPCのブランドブランドがとても強いですが、サーバーやストレージなどのインフラ系ビジネスについてもバートナー企業の方々が発信していただくことによって、当社に対するエンドユーザーの当社に対する認知度も高まるはず。そのためにも、バートナー企業の方々にはさまざまなマーケティング支援をしていきたいと考えています。
従量課金型バックアップに向けてサービス内容を検討中
――レノボ・エンタープライズ・ソリューションズのパートナー支援策に対する評価を聞かせてください。酒井 顔が見える対応をしていただいていることに感謝しています。営業面であれ、技術面であれ、何かあったときにも素早く的確な対応をしていただいています。エンジニアの方々のスキルも非常に高いですね。
白川 コロナ禍の時期はフェーストゥーフェースの対応を維持するのが難しく、パートナー企業の皆様から当社の存在感や製品認知度などに関してさまざまなご意見を頂戴しております。IBM時代から多くのビジネスの多くをパートナー様経由頂戴しており、当社の基本方針はパートナーファーストであることに変わりはありません。長かったコロナ禍も明け、徐々にフェーストゥーフェースでの対応も急速に増えてきております。引き続き泥臭くやらせていただき、パートナーの皆様に頼っていただける存在になりたいと思います。
――両社の協業を通じて、今後、どのような価値あるソリューションが生まれそうでしょうか。
酒井 現在、両社で検討を進めているものとして、VeeamベースのバックアップソリューションをAs-a-serviceモデルで提供するビジネスモデルがあります。当社は、これまでもさまざまな製品を従量課金制で提供してきましたし、パブリッククラウドを利用する企業が増えた今、従量課金制に対する世の中の理解も深まってきました。データ容量が毎年増えていくことを考えると、何年も先の予測データ容量をもとに大規模なソリューションを購入するよりも、実際に使った分だけの料金を払う方が合理的ではないでしょうか。
白川 その背景には、当社のインフラストラクチャーサービス「Lenovo TruScale」を拡充したいという戦略があります。Lenovo TruScaleには、ベアメタルサーバー、ストレージなどのIaasサービスをラインアップしていますが、その一つとして、グローバルレベルでBaaS(Backup as a Service)が今年初めにリリースされました。デジタルテクノロジー様はバックアップ/リストアに強く、国内唯一のVeeam Accredited Service Partnerでもあるわけですから、ぜひご一緒にソリューションを作り上げていきたいと考えております。まだこれから準備しなければならないこともたくさんありますが、日本のユーザー様にもしっかりお届けできるよう勧めたいと思います。
酒井 営業面でも技術面でも手厚いご支援を頂戴しておりますので、従量課金制のバックアップ/リストアに限らず、両社の協業はこれからもさまざまに広がっていくことでしょう。両社でブランドを互いに高めていくことによって、結果も自ずと付いてくるものと確信しています。
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