Special Issue

お客様のサステナビリティ貢献に向けたサービスを提供するレノボ CO2排出量の相殺へ

2023/04/28 09:00

 サステナビリティ(持続可能性)への対応が重要な経営課題となった今、サーバーなどのIT資源についても環境性能が重視されている。そこで、レノボは「CO2オフセット・サービス」を2022年に開始。CO2排出量をクレジット(排出権)の購入で相殺できるようにした。このサービスを22年12月に自社のSaaS「ビジネス・コンシェルデバイスマネジメント」用基盤に導入したのが、大手IT企業として知られるソフトバンク。ソフトバンクの森本茂幸・ソリューションエンジニアリング本部エンタープライズクラウド開発第1統括部統括部長、レノボ・エンタープライズ・ソリューションズの伊藤真次・サービスビジネス統括本部統括本部長と早川哲郎・ソリューション・アライアンス本部本部長に、週刊BCN編集長の齋藤秀平が導入の経緯と効果を聞いた。

MDMサービス用基盤の更改の際にCO2のオフセット・サービスも導入

――まず、ITに関するソフトバンクの事業戦略について教えてください。

森本 今、ソフトバンクは「Beyond Carrier」(キャリアを超えて)という成長戦略のもと、ITによる情報革命で世の中を幸せにしていくことを目指しています。その中で私の部門はSaaS事業を担当し、自社で開発したサービスをお客様に提供しています。

――そのSaaSは具体的にどのようなものですか。

森本 11年5月11日にリリースした「ビジネス・コンシェルデバイスマネジメント」というMDM(モバイルデバイス管理)のサービスです。これは企業からの情報漏洩をコントロールするだけでなく、セキュリティに関わるデバイスのポリシー制御もできるサービスで、現在ではiPhoneとAndroidのスマートフォン、およびPCに対応しています。お陰様でビジネスは好調で、契約数は大きく伸びています。

――好調の要因は何だとお考えですか。

森本 世の中がスマートフォンに向う流れをいち早くキャッチし、セキュリティやデバイス証明書を企業のお客様に提案したことだと思います。スマートフォンではメールもグループウェアも使えますので、かつてはPCで行われていた業務をスマートフォンで行うオフロード化がこの10年で目覚しく進みました。また、自社開発と運用を行っているため、ユーザーインターフェースなどの改善も柔軟に迅速に対応できます。

――そのビジネス・コンシェルデバイスマネジメントに、何か課題はありましたか。

森本 事業としては、高度な機能をすばやくリリースし続けるとともに、キャリア品質を保ちながら利用料を抑えることが求められています。そのためにはパブリッククラウドを全ての基盤とすればよい考えもありますが、お客様のセンシティブなデータを安全に格納するには当社の回線が入っているデータセンター、つまりオンプレミスの方が適しています。そこでハイブリッドの形態も利用する部分もありながら、重要なデータはセキュリティを担保できる当社環境で構築しています。また、「政府情報システムのためのセキュリティ評価制度」(ISMAP)のクラウドサービスリストに登録されることを目指しました(22年6月30日登録済み)。

――昨今はサステナビリティへの対応も重要になっています。

森本 はい。ただ、SaaSの場合はクラウド事業者がサステナビリティに対応しますので、利用されるお客様が環境問題に対する自分たちの貢献を意識されることはあまりありません。一方、ソフトバンクグループ全体で環境への各種コミットを打ち出しており、社会全体への貢献を何らかの形にしたいという思いがあります。そこで、ビジネス・コンシェルデバイスマネジメントの基盤を22年12月に更改する際に、いろいろ検討した結果、CO2をオフセット(相殺)するサービスを導入しましたので、そのことをさりげない形でお知らせしようと考えています。
 
森本茂幸
ソフトバンク
ソリューションエンジニアリング本部
エンタープライズクラウド開発第1統括部統括部長

LenovoサービスでCO2を相殺、Nutanix HCIの遠隔複製でDR対応

――ビジネス・コンシェルデバイスマネジメント用の基盤更改にあたって、レノボ・エンタープライズ・ソリューションズさんはどのような提案をしたのですか。

早川 当社は、ビジネス・コンシェルデバイスマネジメント用の基盤として、Nutanixベースのハイパーコンバージド基盤(HCI)を19年にソフトバンク様に納入しました。ビジネス・コンシェルデバイスマネジメントのユーザー数は順調に増え続けているとソフトバンク様からうかがいましたので、追加の基盤として、スケーラブルに拡張していけるNutanixベースの基盤をご提案することにしました。

――ISMAPのクラウドサービスリストに登録できる仕様であることも要件だったのですか。

早川 はい。大規模地震などを想定したディザスタリカバリー(DR)も要件の一つに挙がっておりましたので、東京以外の地域にあるソフトバンク様のデータセンターにもNutanixベースの基盤を導入するシステム構成を今年構築し、拡大する予定です。Nutanixの標準機能に含まれている非同期複製を常時実施していれば、大きな災害に見舞われたときもビジネス・コンシェルデバイスマネジメントのユーザーのデータが失われてしまうことはありません。

――サステナビリティについては、CO2をオフセットするためのサービスを提案されたわけですね。

伊藤 今回は、Nutanixベースのハードウェア基盤とあわせて当社の「CO2オフセット・サービス」をご提案しました。このサービスでは、まず、業界の世界標準である「PAIA」(Product Attributes to Impact Algorithm)方式を採用し、製造段階から5年間の運用期間の製品のライフサイクルで排出する総CO2の量を算出します。その排出量に見合ったクレジットを購入していただくと、当社のグローバルパートナー企業であるClimeCo(米ペンシルベニア州)を通じてCO2オフセットの証明書を入手できる仕組みです。今回は40台のHCIに対してCO2約1230t分のクレジットを購入していただきました。

――そのクレジットで、どのような相殺が行われるのでしょうか。

伊藤 クレジットでいただいたお金は植林、バイオマス発電、太陽光発電、風力発電などの国連承認の環境プロジェクトに投資されます。それによって削減された温室効果ガス排出量を認証してCO2のボランタリークレジットの証明書を発行するのが、第三者機関のグローバルパートナー企業であるClimeCoの役割です。
 
伊藤真次
レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ
サービスビジネス統括本部統括本部長

CO2オフセット提案はレノボだけ “故障知らず”と短納期にも満足

――採用の決め手は何でしたか。

森本 ビジネス・コンシェルデバイスマネジメント用の基盤の更改にあたっては、もちろん、ITベンダー数社に提案をお願いしています。ご提案の内容は各社さまざまでしたが、もっともはっきりした違いが見られたのはサステナビリティへの対応でした。22年の時点でオフセット・サービスを提供しているのはレノボ・エンタープライズ・ソリューションズ様だけで、他のITベンダーは対応できないか、対応できるとしても実施時期は先になるというご説明でした。

――CO2オフセット・サービスの先進性を高く評価されたわけですね。

森本 これまでも、私の部門はITベンダーの皆さんに「シリアルナンバー1番のように最新の技術を持ってきていただききたい」と申し上げています。最初のうちは多少の不具合が出るかもしれませんが、良いことは早く始めた方が良い、いうのが私たちの基本的な考え方です。

――更改にあたってもNutanixベースのレノボHCIソリューションを選ばれました。このHCIを3年近く使われての評価はいかがですか。

森本 実績として、このレノボHCI基盤は1回も故障していません。ディスクドライブのスワップが発生することはもちろんありますが、Nutanixが自動的に代替処理をしてくれますので、ダウンタイムは発生しません。NutanixベースのレノボHCIソリューションは頭一つ抜きんでている、というのが私たちの評価です。

――22年はサーバーなどの納入遅れが業界で多発しました。デリバリーは順調でしたか。

森本 他社の製品では納期通りにモノが入ってこないケースがかなりありましたが、この件については納入の遅れはまったくありませんでした。おそらく、レノボ・エンタープライズ・ソリューションズさんの内部でいろいろとご配慮いただいたのだと思います。年度内の納期も遅れることなく守られましたので、非常に助かりました。

早川 ソフトバンク様向けのこの案件では当社の営業部門ががんばって部材を集めたのですが、実際のところ、社内では2022年後半あたりからサーバーの部品供給は改善しています。また、お客様の希望納期になるべく間に合わせるために、成約間近となった段階でサプライチェーン側と話を進めるようにもしています。このほか、NutanixのHCIについてはキッティングとヒートラン(慣らし運転)を済ませた状態でお客様のサイトに搬入していますので、基本的にはすぐにお使いいただけるのが特徴です。今回のキッティングとヒートラン作業は、当社との関係が深いNECパーソナルコンピュータ様の米沢事業場で行いました。
 
早川哲郎
レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ
ソリューション・アライアンス本部本部長

ソフト開発のスピード化を狙ってマイクロコンテナ化を現在検討中

――ソフトバンクさんが今後に期待されることは何ですか。

森本 ビジネス・コンシェルデバイスマネジメントは、当社が社内で開発しているソフトウェアです。ですから、最新の技術を取り入れることによって、品質を保ちながらも開発のスピードを少しでも高めたいと考えています。現在は仮想システム上のソフトウェアとして作っていますが、これをアプリ開発も一体となり、マイクロ化していきたいと思っています。コンテナベースのアーキテクチャーによりクラウドシームレスな世界にしようというのがわれわれのねらい。そうすれば、疎結合ならではの利点を生かしたスピード開発ができるようになると思います。

早川 確かに、ソフトウェア開発のトレンドは仮想システムでの統合からコンテナでのサービス提供へと移っています。コンテナは可搬性が高いので、パブリッククラウドでもオンプレミス基盤でも同じように動作するソフトウェアを作るのが容易。ソフトウェアを自製する文化をお持ちのソフトバンク様には非常に親和性が高い技術だと思います。その際は、プロプライエタリーなテクノロジーではなく、オープンなものを採用されると良いでしょう。当社では業界標準なテクノロジーを使ったシームレスなハイブリッドクラウドとして推進しています。

森本 Beyond Carrierを目指す当社とSmarter Technology for Allを掲げておられるレノボ・エンタープライズ・ソリューションズ様との間では、ベクトルが一致していると思います。マイクロコンテナの技術をディープダイブしていくにあたっても、ぜひ協議させていただければと思います。
 
齋藤秀平
週刊BCN編集長

――両社のパートナーシップについて、レノボ・エンタープライズ・ソリューションズさんのお考えはいかがですか。

早川 クラウドはこれからもあらゆる場面で使われていきますので、サーバーに対するクラウドサービスプロバイダー(CSP)の需要が高くなっていくことは確実です。そうしたCSPのお客様はデータセンター内で数千台のサーバーを運用されていますので、電気料金の高騰によるインパクトは非常に大きく、省電力化のためのソリューションを求めておられます。幸い、当社にはサーバーの省電力化技術やLenovo Neptune直接水冷の技術がありますので、電力削減に大きく貢献できると考えており、こういった先進的なテクノロジーをソフトバンク様にも提供させていただきたいと考えています。

伊藤 お客様にCO2オフセット・サービスをご提供するのと並行して、当社自体もサステナビリティに向けた取り組みを強化していきます。当社は世界に35カ所の製造拠点を持っているのですが、その35カ所を含めた企業全体の中期目標として、30年までに製品、部材調達、およびロジスティクスから発生する温室効果ガスを25%削減、50年までにネットゼロを達成することになっています。
 
Intel® Xeon® Platinum Processor
 
 
 
 
サーバー・ストレージ製品・サービス・ソリューションの提案・導入について
https://www.seminar-reg.jp/bcn/survey_lenovo/
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外部リンク

レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ=https://www.lenovo.com/jp/ja/