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日本のサーバー市場拡大に「レディ」なレノボ、パートナーとともに独自技術、高い性能、幅広い製品ラインアップでサステナブルに取り組む

2023/03/29 09:00

 2022年に「ThinkSystem x86サーバー」の30周年を迎えたレノボ・エンタープライズ・ソリューションズ。それに合わせてレノボグループの販売チャネルを一本化するなど、日本市場での売上拡大に向けた取り組みにも力が入る。同社のサーバーにはどのような強みがあり、どのような情勢判断に基づいてビジネス戦略を立てているのか――。同社のジョン・ロボトム社長に週刊BCN編集長の齋藤秀平が話を聞いた。

エネルギーと人材の課題はあるが国内サーバー市場は今後も伸びる

――昨年、ThinkSystem x86サーバーの30周年を迎えました。現在のIT市場をどのように見ていますか。

ロボトム 日本の多くのお客様が最も気にされているのは、どのようにすればDXをさらに加速できるのか、そのDXを収益化できるのか、ということです。実現するためには、パブリッククラウドとプライベートクラウド/データセンターをそれぞれどういう風に活用していくか、非構造のビッグデータからビジネスに役立つ知を引き出す分析、ハイパフォーマンスコンピューティング、エッジコンピューティングをどう使うか、セキュリティといった具体的な課題も達成しなければなりません。

 その一方で、エネルギーコストの上昇が企業のDX推進を阻む要因の一つとなっています。DXを加速しようとすれば電力を多く使うことになるのは避けられず、限られたIT予算の中でやり繰りするのはけっして簡単ではないからです。また、日本では技術者などの人材不足も深刻な問題になっています。

 このような状況にあるIT市場に向けて、当社はThinkSystem x86サーバー30周年を機に、今までになかった種類と数のプロダクト、ソリューション、プラットフォームを昨年発表しました。これらはITのさまざまな領域で使っていただくことができますから、DXに向けてのお客様の課題やDX推進阻害要因を解決するのに役立つと考えています。
 
ジョン・ロボトム
レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ
代表取締役社長

――では、サーバー市場の動向はどうでしょうか。日本ではやや縮小傾向にあるといわれていますが。

ロボトム 調査会社のデータには、日本の今後2~3年のサーバー市場はフラットに推移するという予測があります。つまり、市場はあまり拡大せず、出荷台数の伸びも見込めないということです。

 ただ、レノボとしては日本のサーバー市場はこれから拡大していくと見ています。理由はいくつかあります。

 まず、グローバルのサーバー市場は25年までに1350億米ドル(約18兆2250億円)へと拡大するものと見られます。当社は市場のそれだけの成長に見合った投資をすることにしており、例えば、レノボグループのCEOは研究開発予算を倍にして1万2000人の研究者を新たに雇用すると昨年発表しました。なお、この数字はサーバーだけでなく全ての事業領域に対するものです。

 また、サーバーとストレージを扱うInfrastructure Solutions Group(ISG)の22年第3四半期(10~12月期)のグローバルの売り上げは、前年同期比で48%増加しています。しかも、特定の地域でだけ増加しているのではなく、北米、中国、欧州で同じように伸びていますから、サーバー市場は世界的に成長していると見ていいでしょう。

――つまり、サーバー市場は世界的に拡大しているのだから日本でも伸びるはずだ、ということですね。

ロボトム そうです。日本は大きな国ですし、もともとの市場も大きいのですから、これからは拡大するしかありません。

 日本のサーバー市場が拡大すると見ているもう一つの理由は、かつての規模に必ず戻るだろうという読みです。新型コロナウイルスによるパンデミックによって減ったサーバーの売り上げも、その影響がなくなれば元のところまでは戻るはずですし、日本の企業がDXを推進しようとしているのですから、少なくとも数年前のレベルには戻ると考えるのが妥当でしょう。

――日本のサーバー市場が縮小した要因として、世界的な半導体不足による納期遅延の影響も指摘されています。

ロボトム 確かに、当社も多くのお客様やパートナー様にご迷惑をおかけした時期がありました。当社は世界でいくつかの工場を運営していますので、工場間で部品を融通して対処しようとしたのですが、思うようにいかなったところがありました。

 ただ、現在では供給能力とリードタイムは元に戻っています。社内では部品のありかを可視化する仕組みや優先度を決める仕組みを改善しましたし、工場新設と増床によって生産能力も高めました。ですから、日本のサーバー市場がいつ拡大しても、当社はレディな状態になっています。ぜひ通常納期でご発注ください。また、ディストリビューターの在庫も活用し一部の製品では即納もできますので、納期が厳しい案件もぜひご相談下さい。
 
齋藤秀平
週刊BCN編集長

豊富なラインアップと優れた機能、グリーンIT、HPCやエッジにも力を入れる

――ThinkSystem x86サーバー30周年だった昨年には、約50機種の新製品が登場しました。サーバーには、どのような優位性がありますか。

ロボトム 当社サーバーの強みの一つは、さまざまな用途やワークロードに対応できるラインアップが用意されていることです。具体的には、一般企業向けの汎用サーバーだけでなく、ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)向け、ハイパースケーラー(大手パブリッククラウド)やクラウドサービスプロバイダー(CSP)向け、ミッションクリティカル業務向けの高信頼性モデル、エンタープライズSMB用のモデル、IoT用のエッジサーバーなども用意しています。

 また、当社のサーバーはそれぞれの領域で卓越した機能と能力を発揮し、それによって高いポジションを得ています。

 例えば、ハイパフォーマンス(HPC)サーバーの領域では世界シェアの1位を取っており、大学や研究機関、製造業、クラウドなどで使われています。実際、TOP500(コンピューターの性能ランキング)に登場するスーパーコンピューターの3分の1ほどはThinkSystemベースですし、The Green 500(消費電力当たり性能)でもThinkSystemは1位を獲得しています。

 エッジサーバーも、力を入れている領域です。先日発表した「ThinkEdge SE450」にはGPUを搭載できますから、監視カメラが設置されている場所で画像を解析し、その結果だけをクラウドに送るといった使い方が可能です。建造物の外壁をドローンで撮影してメンテナンスの要否を現地で判断するのにも最適でしょう。当社のエッジサーバーは、有線ネットワークを使うのが難しい農業などの分野でも活躍しています。

 個別の技術では、サーバーを水で冷やす「Lenovo Neptune液体冷却技術」にも強みがあります。これはIBMが10年以上前に開発したもので、当社がそれを引き継いで発展させてきました。液体は空気よりも熱を取り出す力が強いので、従来のサーバーに組み込まれていた冷却ファンを省くことができます。冷却ファンはサーバー全体の消費電力の10%以上を消費していますから、CPUやGPU、電源装置、メモリーを全て液冷にすることによって、その部分を削減することができるのです。さらにデータセンタールームに空気として排熱されませんので、空調コストを削減できます。

 また、サーバー購入時に「CO2オフセットサービス」もご提供しています。お客様ご自身でグリーンITを実現するのに加え、レノボを介して国連承認の植林プロジェクトなどを支援することで、地球全体のCO2バランス適正化にご貢献いただけます。日本でも既にオフセットを導入いただいたお客様が出てきています。

――可用性や信頼性についてはいかがでしょうか。

ロボトム ボストンにあるInformation Technology Intelligence Consulting(ITIC)の調査結果では、PCサーバーのエリアにおいて当社のサーバーが9年連続で信頼性で1位となっています。この調査が対象としているのはメンテナンスなどの計画停止を除くunplanned downtime(不時停止)で、レノボのサーバーでは1%以下。この値は他のサーバーメーカーよりも圧倒的に小さく、これより信頼性が高いプラットフォームとしてはメインフレームくらいしかないでしょう。ご存知のように、レノボのサーバーはIBMをそのルーツとしており、そのアーキテクチャーやデザインにはメインフレーム時代から受け継がれてきたエンタープライズファーストのマインドが色濃く反映されています。

 可用性や信頼性を高く維持するには、適切な運用管理をすることも欠かせません。当社には「Lenovo XClarity」と呼ばれるサーバー管理ツールがありますので、毎日の稼働状況モニタリングのほか、インストールやパッチ適用などの作業を一元的に効率よく実施するのに役立つと思います。

ソリューションに力を入れながらパートナーとの連携を重視したい

――今後、日本市場ではどのようなビジネス戦略でサーバービジネスを進めていかれますか。

ロボトム 一番は、パートナーの皆さまと一緒にやっていくことです。今後は、もっとソリューションベースでビジネスを展開していくつもりです。パートナーの皆様がお持ちのソリューションについても、当社がご支援を提供する「アウトカムベーストソリューション」(OBS)としてエンドユーザーにお届けできるようにしたいと思います。

 そこで、レノボグループは新しいパートナー制度「Lenovo 360」を22年4月に始めました。かつての販売体制ではPCとサーバー/ストレージが別々になっていたのですが、Lenovo 360ではそれを一本化。 PCやエッジからサーバー・クラウド、サービスを含めたトータルなソリューション提案を行うほか、相談をお受けする体制を整え、パートナー様と共にレノボグループの総合力を生かしていきます。

 また、これまで取り引きがなかったベンダーの皆様にもさまざまな情報を提供していきます。お付き合いの幅が広がれば、当社のサーバービジネスは拡大することでしょうし、結果として、日本をご支援していくことにもなると思います。

――今は、エンドユーザーのニーズも多様化しています。OEMやカスタム品にはどのように取り組まれますか。

ロボトム 設計・開発部門にはフレキシビリティーがあり、これまでも地域別モデルを作ってきました。医療などの業種別モデルについても、十分に実現の可能性があると思います。

――日本市場での具体的な成長目標はありますか。

ロボトム グローバルではNo.3のポジションに戻すことができましたので、厳しいと予測される23年度についても、具体的な数字は申し上げられませんが、確実に成長するものと信じています。先ほども申し上げたように、日本市場はさらに拡大すると見ていますので、その増える部分を確実に押さえていきたいと考えています。

 日本市場で、これからやっていきたいことはたくさんあります。ハイブリッドクラウドはさらに増えることでしょうし、Neptuneの液冷技術を活用したグリーンIT化、GPUに最適化されたサーバーによるデジタルツインやAIといったDXの推進、エッジサーバーでのIoTデータのリアルタイム処理や5Gインフラストラクチャーへの実装なども有望な領域だと思います。

 このような成長を実現するためにも、日本各地のパートナー様との関係をさらに強化していくつもりです。地方で広めたものを、都市部に戻していくことも考えなければならないのかもしれません。
 
Intel® Xeon® Platinum Processor


 
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外部リンク

レノボ・エンタープライズ・ソリューションズ=https://www.lenovo.com/jp/ja/