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日本IBM、ビジネス開発コンテスト「DXチャレンジ 2022」全国大会を開催

2023/03/14 09:00

 最新のデジタル・テクノロジーを活用したビジネスアイデアとその事業化プランを競うビジネス開発コンテスト「DXチャレンジ 2022」。その全国大会イベントが2月9日にオンライン形式で開催された。全国大会では13チームが発表し、最優秀賞にGROWTH JAPAN TECHNOLOGIESの「SaaS時代の情報管理ならTaskly DXチャレンジ2022 Tasklyのコンテナ化」が選出された。

 IBMはAIやサステナビリティーなどテクノロジーを活用した新たな価値共創を通じて社会課題の解決やより良い世界の創造に貢献する方針を掲げており、また今年は新たなパートナー・プログラムである「IBM Partner Plus」を発表するなど、さらなるパートナーとの共創活動を推進している。

最新のデジタル・テクノロジーを活用した新しいアイデア創出を目指す

 「DXチャレンジ」は、IBMビジネスパートナーコミュニティ「愛徳会」と日本IBMが共同主催するイベントで、「Watson Build Challenge」を引き継ぎ、今回で6回目の開催となる。参加企業に最新のデジタル・テクノロジーを活用した新しいアイデアを創出してもらい、ビジネス化を目指すコンテストだ。

 参加企業は、日本IBMからDX対応に求められる共創スキルや、アジャイル手法の提供、今後に必然となるコンテナ化アプリ開発のスキル習得といった人財育成の支援が受けられる。

 オープニング・メッセージでは、まず、日本IBMの猿渡光司氏(パートナー・アライアンス事業本部事業戦略事業部長)が「毎年、驚くような斬新な事業アイデアや発表がある。今回も各社の発表タイトルを見ると、社会や業界の課題解決を意識したものが多く、審査員の一人として大変楽しみ」と語った。

 続いて、オーイーシーのDXビジネスプロデュース部部長で、全国愛徳会DXチャレンジ推進委員会委員長の犬山浩司氏(九州地区愛徳会会長)が、「今回も発表の中からビジネスに結び付くものが一つでも多く生まれることを期待している」と語った。

 今回は「新規アイデア」「既存ソリューションのモダナイゼーション」「既存ソリューションのコンテナ化」の3トラックで募集を実施、13チームが事前収録の動画と合わせてプレゼンテーションした。最優秀賞にGROWTH JAPAN TECHNOLOGIESの「SaaS時代の情報管理ならTaskly DXチャレンジ2022 Tasklyのコンテナ化」を選出。部門賞として、ベストビジネスデザイン賞にオーイーシー、ベストテクノロジー賞にSMSデータテック(事業開発室)、ベストプレゼンテーション賞に日本電通をそれぞれ選出。また、リコージャパン賞が田中電機工業に、レノボ・ジャパン賞がセイノー情報サービスに贈られた。

最優秀賞はGROWTH JAPAN TECHNOLOGIESによる「Taskly」のコンテナ化

 各受賞ソリューションの概要は以下の通り。
 
最優秀賞
GROWTH JAPAN TECHNOLOGIES
「SaaS時代の情報管理ならTaskly DXチャレンジ2022 Tasklyのコンテナ化」

 テーマに掲げたのは、多様なツールを「使いこなせない」社会。数多くの便利なコミュニケーションツールがさまざまなベンダーより提供されているが、その一方で、情報量が多く、情報を見落とす、見つけられないという課題が発生している。

 Tasklyは、メッセージの「通知」、分散した情報の「一元管理」、複数のチャットツール上の履歴「検索」の機能を実装、課題解決に貢献する。具体的には、1画面上で複数のツールの情報を参照できるため、ツール間を行き来せずに必要な情報をすぐに取り出すことができる。また、大切なメッセージへの返信遅れも防止できる。

 AI(Embeddable AI with IBM Watson)も搭載し、タスク管理の課題である「タスク管理の優先度付け」をアシスト。また、自然言語での検索が可能なため、文脈、言語、行動、関係性を理解して、質問へのパーソナライズされた回答を瞬時に見つけ出してくれる。
 「すでに2月2日よりサービスを開始しており、1社が導入済みで運用開始している。連携サービスも増やしており、事例をもとにプロモーションを実施し、市場開拓を進める」とした。
 
ベストビジネスデザイン賞
オーイーシー
「CO2排出量算定システムcarbonote × コンテナ化による開発・運用の効率化」

 企業が抱える脱炭素経営に向けた課題の一つは、排出するCO2の算定方法だ。環境省が提供する「サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン」を基に算定する必要があるが、非常に細かな計算が必要となる。

 CO2排出量管理クラウドサービス「carbonote」は、企業が排出しているCO2を可視化することで削減すべき対象を特定し、CO2排出量削減に向けた改善活動に貢献するソリューション。CO2排出量の算出にかかるガイドラインの読み込みや計算時間を大幅に削減。

 SCOPE1,2,3という切り口での排出量算定の他にも、製品ごとの排出量算出機能を実装した。必要な数値の入力だけでCO2排出量算定でき、CO2排出量の見える化と低減活動の定着を支援する。開発では動作環境の構築に多くの工数が必要で、動作環境の差異による不具合が課題となったが、IBM Cloud Kubernetes Serviceを利用したコンテナ技術の活用で解決した。

 「今後は、機能拡張や多言語対応を進めてグローバルな拡販を目指す」という。
 
ベストテクノロジー賞
SMSデータテック(事業開発室)
「企業の情報漏洩を検知し、あらゆる脅威情報を収集・可視化するサービス『Threat Detection』の開発」

 企業におけるセキュリティ対策の課題として、経営者は自社の情報漏洩を、製品責任者は自社製品へのクレームが不安、IT責任者は最新の犯罪や脅威の動向が分からないといった悩みを抱えている。Threat Detectionは、情報漏洩に対しては漏洩検知機能を、クレームへの不安にはブランドへの脅威を検知できる毀損機能を、犯罪や脅威の動向が分からないという不安に対しては、情報収集機能を提供する。

 OSINT(Open Source Intelligence)という一般公開されている情報を収集・分析し、独自の情報を得る手法を活用。Threat Detectionは、誰もが閲覧できるSurface Webのほか、ログインの必要なDeep Web、特殊なブラウザのみ接続できるDark Webの情報すべてを網羅。漏洩情報の96%が存在するDeep WebとDark Webもトラッキングして、あらゆる脅威情報を収集・可視化する。開発にはIBM Cloud Kubernetes Service上でのマイクロサービス化などの技術を用いた。

 「今年10月に正式サービスとしてのリリースを目指している」とした。
 
ベストプレゼンテーション賞
日本電通
「あなたとわたしをつなぐコミュニケーションDX You-Me」

 オンライン会議に関する調査によると、違和感や不快に感じる人が6割近くを占める。原因の一つが、相手の顔が常に見えることによる心理的な圧力へのストレスだ。一方で、顔が見える会議の方がスムーズに進むという回答も約7割を占める。この相反する事象をDXで解決するのが、ぬいぐるみ型オンライン会議用通話システム「You-Me」だ。

 オンライン会議では、自らの顔や声を出すか出さないかという選択はできるが、相手の顔や声を出さない選択ができない。そこで、親しみのあるぬいぐるみを画面の横に置き、それに話しかけることで相手を直接、見ずにコミュニケーションすることが可能になる。これによりオンライン会議の相手から自分に向けられる視線や声から受けるストレスを緩和する。ぬいぐるみには、カメラ、スピーカー、マイクなどのほか、人の動きや相手の感情を表現する機能も搭載。これらの装置がソフトやクラウドと連携し、新しい会議の体験をユーザーに提供する。「ストレスから人の健康を守ることが最大の目的」と強調した。

「リコージャパン賞&愛徳会賞」「レノボ・ジャパン賞&愛徳会賞」「愛徳会賞」も選出

 そのほか、リコージャパン賞&愛徳会賞には田中電機工業の「AIとCloudで社会問題の解決 フードロスの削減と地域食品流通の活性化を目指して」を選出。国内では、生産・加工、仕入れ/販売、食材の調理/管理などのサプライチェーン間で廃棄されるフードロスが年間で約522万トン発生している。食品提供者のロスは約275万トン、家庭のロスは約247万トンに及び、その削減には双方の努力が欠かせない。

 ソリューションでは、広島市を中心とするスーパーとその来客をターゲットに、需要予測と食材管理をIBM Cloud上で行い、食品の提供者と消費者をつなぐ役割を担う。具体的には、店舗に過去の購買データを基に解析したデータから需要予測を提示し、過剰発注を抑える。一方、来客側には買いすぎ防止のため、食品一覧と賞味期限など食品管理情報を提供。販促に向けた顧客別のクーポン、広告表示で購買促進につなげる。

 今後はIBM SPSSを使用して予測精度を高め、「来年以降機能の拡充と製品化、販売を目指す」とした。

 また、レノボ・ジャパン賞&愛徳会賞にはセイノー情報サービスの「業務とロボットをつなぐ物流DXの推進」を選出した。物流業界は慢性的な人手不足で、労働時間の長さ、賃金、有効求人倍率の低さ、年齢構成の高さが深刻な課題となっている。セイノー情報サービスは、この課題解決に向けて「BRAIS(BigData、Robot、AI、IoT、Sharing)」を基盤に、物流の自動化・デジタル化を通じた業務改善や働き方改革を実現し、ムリ、ムダ、ムラのない持続可能なスマート物流サービスを提供している。

 物流センターにおける自動化・機械化を推進する中で、多種多様な物流ロボットと倉庫管理システム(WMS)をつなぎ、ロボットの監視・状態管理や作業指示を連携できる独自のRMS(Robots Management System)を提供する。RMSはIBMサーバー技術を活用してクラウド化し、各種ソリューションとのスピーディーな連携を可能にした。

 「これらのソリューションを通じて、モノと情報を運ぶ持続可能な社会インフラである『サスティナブル・ロジスティクス』の実現を目指す」とした。

 さらに愛徳会賞には、アイテップの「Raspberry Piを使用した温度管理システムの開発」、SMSデータテック(システム開発本部)の「自動化ソリューションアプリ(Pleasanter)コンテナ稼働検証」、SBS情報システムの「生まれた子を名付ける」、神戸デジタル・ラボの「運に任せて旅しよう!ガチャベル」、システムリサーチの「デジペーパーのWindowsコンテナ対応」、スタンシステムの「アルコールチェックシステム」、ユニオンシンクの「デザイナーシリーズのWindowsコンテナ化チャレンジ」などが選出された。

 最後に講評として、全国愛徳会会長の藤田洋一郎氏が「大変多くの優れたソリューションの発表があった。来年もDXチャレンジを盛り上げていきたい」と語った。
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外部リンク

「DXチャレンジ 2022」=https://aitokukai.smartcore.jp/dxchallenge

IBM、新たなパートナー・プログラム「IBM Partner Plus」を開始=https://jp.newsroom.ibm.com/2023-01-10-IBM-Launches-New-Way-to-Partner-through-IBM-Partner-Plus

日本IBM=https://www.ibm.com/jp-ja